長いことそのリップサービスぶりで憶測を呼んでいたナイジェリアのSEC(Securities and Exchange Commission証券取引委員会)は、いよいよクラウドファンディングプラットフォームを規制する具体案に着手した。週末にかけて、SECは出資者とクラウドファンディング事業者のためのガイドラインを含む公開ドラフトを公表したのだ。

難解なガイドラインについて踏み込む前に、今一度クラウドファンディングとはそもそも何なのかを検証してみたい。

クラウドファンディングとは?

SECによると、クラウドファンディングとは、オンラインプラットフォームを通じて不特定多数の人々からプロジェクトやビジネスの資金を調達するプロセスということになる。

「あらゆるアイデアのために誰もが資金を集めることを可能にする」と、米国のクラウドファンディングプラットフォームIndiegogoの共同創設者であるSlava Rubinは2010年に語っている。

クラウドファンディングには、寄付型、リワード型、株式投資型と3つのタイプに分かれる。2016年、クラウドファンディングプラットフォームは、世界中の企業のために7億3,000万ドル以上を調達した。

ナイジェリアには、そのようなプラットフォームが数多く存在する。同国にある法律事務所Banwo & Ighodalo(B&I)によると、こうしたプラットフォームは、簡単に受けられない銀行融資に代わり、ビジネスファイナンス調達方法として魅力的な選択肢のひとつとなっているということだ。

ナイジェリア国内のクラウドファンディングプラットフォームのほとんどは、農業関係企業に資金を提供することに役立てられている。Farmcrowdy, Pork Money and Thrive Agricなどのスタートアップがその例であるが、こうしたプラットフォームを通して、多くの人々が合理的な範囲で農業ビジネスに投資することでリターンを受け、それが容易にできるようにもなってきた。

しかし、常に規制リスクは存在する。ナイジェリアの企業法はクラウドファンディングに対応しておらず、過去4年間、SECはこうしたプラットフォームを規制するとの警告をしばしば発してきたのだ。

SECで登録、取引、マーケットインフラ、イノベーションを担当する責任者Emomotimi Agama氏は、Banwo & Ighodaloが主催するフィンテック円卓会議で、事業やプロジェクトの資金調達のために一般の人々に資金を募るという資本市場活動が企業によって行われていることを報告した。そして、これがクラウドファンディングプラットフォームの仕組みであるが、出資者保護のための規制が必要である、と付け加えた。

2016年、SECはこうしたプラットフォームの株式投資型クラウドファンディングを禁止した。既存のナイジェリアの企業法もまた、民間企業が規制当局の承認なしに一般人から株主資本を調達することを禁止しているからだ。

その結果、Banwo & Ighodaloによると、ナイジェリアでは利息型や貸与型クラウドファンディングが依然として普及しているという。 しかし、新しいSECの規制ドラフトは、この業界を法的にコントロールする初めての包括的なアプローチである。新しいルールは、出資者を保護するよう修正され、プラットフォームには別途ガイドラインがまとめられた。

SECの新クラウドファンディング規制

第一に、どのクラウドファンディングプラットフォームもSECによって規制されなければならない。

規制当局は、クラウドファンディング専用の登録カテゴリーを新規に設けた。「クラウドファンディングを目的としてSECに登録されたディーラーは『特定ディーラー』とみなされ、この規定下にある活動のみを行うものとする。」

しかし、クラウドファンディングプラットフォームとして登録するとなると、少なくないコストがかかることになる。事業者は資本条件の1億ナイラ (255,461ドル)を納めなければならないのだ。さらに、トランザクションデータの管理上の厳しい規則を守る必要に迫られる。

他の投資事業タイプと同じように、クラウドファンディング事業者も、年度末にプラットフォーム上のすべての金融取引の報告書をSECへ提出しなければならない。

新しいガイドラインには、中小企業がクラウドファンディングで資金調達できることも規定されている。事業規模に応じて最大5,000万ナイラ(127,730ドル)から1億ナイラ(255,461ドル)までに制限が設定されている。 ルール上、資金調達を募る期間は60日を超えてはならず、それが延長された場合、プロジェクト起案者はオファーを終了または撤回し、出資者に対して48時間以内に取引きを解除する機会を与える必要がある。

問題はないのか?

問題は依然として残る。

新しいガイドラインは、アグリカルチャーテクノロジースタートアップに混乱を招く可能性がある。そこで、新たにデジタルコモディティ投資型というカテゴリーをニッチプラットフォームとして規制に設けた。

「特定の農産物や商品プロジェクトを、リターンと引き換えに支援する出資者とつなげるデジタルプラットフォーム」

この定義にアグリカルチャークラウドファンディング事業者の多くはあてはまる。

非常にあいまいなやり方ではあるが、ガイドライン施行前に「異議なし」との証書に同意したこれらのプラットフォームは運営し続けることができる、とSECは述べている。また、事業者のプラットフォーム上で自分たちのプロジェクトをホストすることはできないので、別のプラットフォームを利用する必要がある。

これがアグリカルチャーテクノロジー事業者にとって何を意味するのかコメントを求めたが、期限内に回答は得られなかった。

それが意味するところは?

新しい規制が出資者を保護するように制定されていることは間違いない。しかし、クラウドファンディングプラットフォーム運営に必要な1億ナイラ(255,461ドル)の資本条件は、多くのスタートアップやビジネスに大きな負担をかけることになる。

ナイジェリアのクラウドファンディングスタートアップは、何年も有力な投資家の関心を得られないままである。スタートアップの資金調達額のほとんどは100万ドル以下でしかない中で、Farmcrowdyの240万ドルの総資金は、このビジネスのどのスタートアップよりも最大のものである。例えば、Thrive Agricは2019年3月にY Combinatorから15万ドルのシード資金を調達したが、これは、SECが資本要件としてたたきつけた255,461ドルという条件よりも少ない金額なのである。

新しい規制は、こうしたスタートアップの多くが閉鎖か、迅速な資本調達か、別会社との提携といった選択を迫られることを意味する。その中では、パートナーシップが最も容易な解決策かもしれない。他の登録機関へのテクノロジープロバイダーとしてのみ運営する場合には、SEC規制は受けずにすむだろう。

ガイドラインによると、取引所、ディーラー、ブローカー、またはそれらに代わるトレーディング施設などのSEC登録機関は、クラウドファンディングプラットフォームを運営することができることになっている。スタートアップは、こうした機関と提携することで、ビジネスを継続することができる。しかし、パートナーシップがうまくいくまでには、しばらく時間を要すことにはなるのだ。

これは、難しい局面である。

新しい規制は、現時点ではドラフトに過ぎないが、ひとたび発令されればクラウドファンディング事業者に大きな混乱を引き起こしかねないというのが実情なのである。