この4月、アフリカのテック・エコシステムを巡って、特筆すべき動向が散見された。

ナイジェリアにおけるMTNのPSB (Payment System Bank)ライセンス承認、Airtelのスーパーエージェント(*1)ライセンス、ケニアにおけるSun Kingの2億6千万ドルの資金調達、中央アフリカ共和国の仮想通貨導入など、4月にハイテクに関連して大きな動きがあった。ここでは、そのトップ10を紹介する。

エネルギー業界が牽引する4月

4月、アフリカ大陸のスタートアップ企業は、完全に開示された38件の取引で413,143,000ドルを調達した。

このことは、4月の資金調達額が、2月、3月に公表された金額と比較して各々34%(〜2億1600万ドル)、41%(〜2億9600万ドル)のマイナスであったことを示す。

分野別に挙げると、エネルギー・テック、フィンテック、ロジスティクスがトップ3となる。エネルギーが2億8,980万ドル(70.1%)と抜きん出ており、フィンテックが5,350万ドル(12.9%)、ロジスティクスが3,400万ドル(8.2%)と続く。

2021年4月の資金調達額は、地域別では東アフリカがトップで、Sun Kingによる2億6,000万ドルのシリーズD調達を筆頭に4案件が発表された。2位の西アフリカは、18案件で9,050万ドルの資金を調達した。北アフリカは、エジプトとモロッコのスタートアップ企業11件で3,930万ドルの調達でそれに続く。

今月の開示案件トップ5は以下の通りとなる。

  • Sun Kingがアフリカとアジアへの進出を目指し、2億6,000万ドルのシリーズD資金調達。
  • ナイジェリアの物流スタートアップ企業Sabi が 2,000 万ドルの資金調達。
  • エジプトを拠点とするエネルギー技術企業 Pylon が 1,900 万ドルのシードラウンド。
  • Umbaがデジタルバンクの新市場拡大のために1,500万ドルの資金調達。
  • ガーナの農業技術企業Farmerlineが1,290万ドルのプレシリーズAラウンド。

(注)本データは、2022年4月に発表された資金調達案件のみを対象としている。資金調達額の発表は、実際にディールが行われた時期より後付けになることがしばしばある。

まだ数字が確定していないBboxx/PEG Africaの買収案件はこのデータには含まれていない。

また、TechstarsY-Combinatorのようなアクセラレーターからの推定助成金も除外している。

西アフリカにやってきた、モバイルマネー

今月は、英・仏語圏西アフリカのモバイルマネー部門に朗報が相次いだ。

ナイジェリアの通信事業者であるMTNAirtelは、同国におけるモバイルマネーの普及促進のために飛躍的な進歩を遂げた。

まず、MTNは同国での決済サービス銀行の運営に向けて、ナイジェリア中央銀行(CBN)から最終承認を得た。

その数週間後、AirtelCBNからスーパーエージェントのライセンスを取得し、銀行代理業を担うエージェントを募集した。それにより、金融機関に代わり第三者のエージェントネットワークを通じて消費者に必要な金融サービスを提供できるようになった。

一方、セネガルでは、フィンテックのユニコーン企業Waveが、西アフリカ諸国中央銀行(BCEAO)から電子マネーライセンスを取得し、同国でモバイルマネーサービスを展開することになった。

批判に直面するFlutterwave

アフリカで最も評価の高いスタートアップ企業Flutterwaveは、3月に一連の疑惑を巡り集中的に批判を浴びた。

ジャーナリストのDavid Hundeyin氏の記事によると、共同創業者兼CEOのOlugbenga Agboola氏が、インサイダー取引、詐欺、セクハラの疑いで告発されたという。

Agboola氏は、同記事で疑惑の対象として同様に名指しされた元CEOのIyinoluwa Aboyeji氏と疑惑に対して一部反論している。

Equiano、ナイジェリアに上陸

3月、Googleの海底インターネットケーブルがトーゴに上陸した。

その後、4月にナイジェリアのラゴスまで到達し、ナミビア、アンゴラ西方のイギリス領セントヘレナ、そして南アフリカへと、12,000kmを超えるケーブルは蛇行しながら伸びている。

この海底ケーブル敷設は、グローバルインフラを構築して、アフリカで安価なインターネットアクセスを提供するためにGoogleが10億ドルを投じた計画の一部である。接続コストを下げて、より多くの人々が高速インターネットを利用できるようにする。

CAR、ビットコインを導入

4月、中央アフリカ共和国(CAR)は、ビットコインをはじめ、すべての仮想通貨を法定通貨として採用するアフリカ初の国となった。

これは、エルサルバドルに次いで世界で2カ国目となる。

CBN、仮想通貨取引で銀行3行に罰金命令

ナイジェリア中央銀行(CBN)は、1年前にかけられた仮想通貨取引規制に違反したとして、同国の商業銀行のうち3行に罰則を科した。

Stanbic IBTCAccess BankUnited Bank for Africa (UBA)の3行は、仮想通貨取引用の口座を運営したとして、合計8億円(~190万ドル)の罰金を課された。

これは、ナイジェリアで進行中の仮想通貨取引規制に関する最新の動きである。

イーロン・マスク、Twitterを買収

Twitterはアフリカの企業ではないが、そこでは誰もがビジネス取引を展開している。

この4月、億万長者でTesla のCEOがTwitterを440億ドルで買収したことは大きく伝えられた。

イーロン・マスク氏の買収には、あまり笑えない裏話がある。

まず、イーロン・マスク氏は、Twitterの株式の過半数を個人で取得し、その後、取締役会への招待を受けて参加することになった。だが、この申し出を受けてしまうとTwitterを所有できなくなることに気づき、参加を取り止めにしたという。

また、 米証券取引委員会(SEC)に持ち株比率を開示しなかったため、他の投資家から同氏は提訴された。一方、同氏はTwitterの株価を暴落させる可能性のある敵対的な買収として、Twitterの株式を100%取得すると表明した。Twitterは、対抗措置として、ポイズンピルという防衛策をとることにした。

Google、Amazon、Visaがケニアに進出 

ケニアに追い風が吹いている。4月、同国は10ヵ年デジタル計画を発表した。

Eコマースの巨人Amazonは、国内でAmazon Web Services Local Zoneの立ち上げを発表した。

Visaはアフリカ初のInnovation Studioをナイロビに開設し、Googleも初の製品開発センターをアフリカ諸国の首都に開設する計画を発表した。

DiDi、南アフリカから撤退

中国のライドヘイリング大手の滴滴出行(DiDi)は、南アフリカでの事業立ち上げ後わずか1年で、撤退した。

このライドヘイリング企業は、BoltUberとの熾烈な競争に直面した。その上、南アフリカで発生した新型コロナウイルス感染症の第3波による再びのロックダウンも重なり、事業拡大を諦めざるを得なかった。

Ebi Atawodi氏、Googleに移籍

グローバル・プロダクトマネージャー、Ebi Atawodi氏が、またしても大きく動いた。

Atawodi氏は昨年、Uberの決済・金融商品部門の製品責任者からNetflixに移籍し、MEA決済部門の製品責任者に着任したことを公表した。

そして4月、Atwodiはまたもや大きな動きを見せた。Netflixで1年勤めた後、Googleに移籍し、現在はYouTube Studioのプロダクト・マネジメント・ディレクターのポストに収まっている。

(*1)スーパーエージェント携帯電話事業者から電子マネーを買い取り、代理店に転売し、代理店がエンドユーザーに販売する事業者(銀行の場合もある)