手軽に利用できる在宅ラボ検査を提供するナイジェリアのスタートアップ、Healthtrackaが、プレシードラウンドで150万ドルの資金調達したことが、このほどTechCabalに伝えられた。エンジェル投資家としてAlunmi Angels AllianceFlying Doctorsの参加を得て、ベンチャーキャピタルIngressive CapitalHustle Fundがこのラウンドを主導した。

2021年10月から2022年1月にかけてHealthtrackaはTechstars Torontoのアクセラレータープログラムに参加し、その後、今回の資金調達に至った。

2021年5月、Ifeoluwa Dare-Johnson氏とVictor Amusan氏によりラゴスを拠点に設立されたHealthtracka。ユーザーがウェブ上で検査を予約し、自宅でサンプルを採取して、その結果を電子メールで受け取るという一連のサービスを提供する。本サービスは提携する3医療機関のvCare DiagnosticsLancet LaboratoriesAfriglobal Medicareから派遣された採血担当医療従事者が、患者の自宅まで訪れてサンプルを収集、分析し、2日後に結果を送る。

共同創業者のDare-Johnson氏は生化学を専攻し、研究室に勤務した経験から、定期健診の重要性は認識しているほうだったが、健康そうに見えた父親がある日突然倒れ、命がけの闘病生活を送るようになるまでは診断ソリューションを手がけようとは想像もしなかったという。その出来事をきっかけにアフリカの医療制度を深く掘り下げるようになり、そのうち、原因不明の持病を抱えながら生活するアフリカ人が大勢いることをつきとめた。さらに、アフリカ大陸ではインフラの不備や医療従事者の不足などの問題で医療制度が脆弱なため、医療機関にアクセスするのも一苦労するという事情がある。

Healthtrackaを始めたもうひとつのきっかけは、同氏が多国籍医療診断会社SynLabでマーケティングリーダーを務めていたことにある。医師の診察は、病院で検査を受ける必要があると診断するまでに留まり、バーチャルならそれはなおさらのことだ。医療機関での検査は臨床面における意思決定プロセスの70%を占めるため、もちろん軽視はできない。しかし、この診断結果にこそ本質的な問題があることが判明した。患者の多くは、たとえそれが重要な検査であっても、煩わしさを理由に自宅から足を運ぶことに抵抗を覚えるのだ。

Dare-Johnson氏の共同創業者、Amusan氏は医師の家系出身なので、診断の遅れがもたらす悪影響を目の当たりしてきた。二人のこの問題意識が、診断の遅れがもたらす事態に取り組もうという今日あるHealthtrackaの姿勢を型作ってきたと言える。

Dare-Johnson氏によると、これまで遠隔医療プラットフォームは、患者が検査を受けられる病院を紹介しながら相談に応じるサービスしか提供していなかった。現在では、HealthtrackaのAPIを活用して、患者のためのラボテストを申し込みできるようにまでなっている。

ユーザーはHealthtrackaのウェブサイトにアクセスし、不妊治療や性病検査、血球計数検査、COVID検査などのラボテストを予約することができる。また同サービスは、患者が検査結果を受け取った後、専門家による相談も受け付ける。

Healthtrackaの成長にパンデミックが牽引役となったとDare-Johnson氏は明かす。Healthtrackaはパンデミック期間中にCOVID-19検査の提供を開始したという。「この時期、遠隔で不安なく医療を受けられる保証と安心感が求められたのです。」と、氏は当時を振り返った。

Healthtracka共同創業者 Ifeoluwa Dare-Johnson氏

また、性感染症(STD)などの検査で通院することへの社会的スティグマを避けられるようプライバシーが守られる点が、ユーザーに支持される理由の1つであることをDare-Johnson氏は明かす。

Healthtrackaは現在、50種類の医療検査を提供しており、ナイジェリアの7都市(ラゴス、アブジャ、ポートハーコート、ベニン、カドナ、イロリン、イバダン)で、700人の採血専門医療従事者のネットワークを利用して、ユーザー5,000人を対象に7,000回に上る在宅検査を実施した。Ingressive Capitalの創設者Maya Horgan Famodu氏は声明の中でDare-Johnson氏と同サービスについて言及している。

Dare-Johnson氏はハングリーでとても聡明な女性です。Healthtrackaのサービスは、匿名利用で、100%満足のいく体験を得られるというだけに留まりません。彼女のチームと関わっただけで、アフリカ大陸全体にこのサービスが行き渡ることでどんなに状況が改善されるか身をもって理解しました。クォリティは高く、納期は守られ、価格も手ごろなこの医療サービスが、よりヘルスコンシャスなアフリカへの扉を開いてくれることになるでしょう。

Healthtrackaの資金調達は、ケニアとガーナに在宅ラボ検査サービス拡大計画の後押しともなり、今後数ヶ月のうちに新たな製品機能を導入する予定だ。また、遠隔医療サービスや従来のヘルスケアプロバイダーが在宅ラボ検査を提供できるようにするためのAPIを打ち出し、サービス拡大を視野に入れている。「インフラ不足という同じ問題をどの国も抱えていることがわかりました。これから事業進出する国々においてそれはなおさら言えることです。ナイジェリアでの診断サービスの経験から、私たちなら他の市場でもこの問題に取り組むことができるに違いありません。服をオンライン購入するように、シームレスに検査を受けられるという文化の再構築に努めようとしているのです。それはアフリカ全域に渡り、最も求められる場所でこそ可能性が広がるものと期待しています。」とDare-Johnson氏はTechCabalに展望を語った。