消費のデジタル化が大きく進むアフリカ。しかし、企業間における支払い方法同様に、従来のうんざりするようなビジネスプロセスのデジタル化は、ほとんど進展していないというのが実状である。とはいえ、起業家や投資家が飛躍的急成長よりも収益性を優先するようになった今、B2Bのすべてに、やにわに世界的な注目が集まるようになってきた。その結果、ペイテック企業は、B2Bの決済フローという無機的な世界に積極的に関与し、フィンテックの恩恵にあやかろうとしている。

だが、請求書発行や買掛金から財務に至るまで、企業が実際どのように資金の流れを管理していくかは、まだ定かではない。

決済会社がなぜ大企業や中小企業の決済方法を「消費者化」したいのかを探るためには、まずB2Bの市場規模を理解する必要がある。

世界中の企業間で、B2B決済の多くは銀行を利用してオフラインで行われ、時には現金で支払われることもある。大企業との取引も含めた米国におけるB2B決済の価値を金額にすると、29兆ドルという途方もない額に上る、とフィンテックに特化した米国の投資銀行FTパートナーズは試算する。世界中では毎年概ね120兆ドル以上の企業間決済が行われているという。

意気軒高なフィンテック・チームがシェアを獲得しようと躍起になっているB2B市場は、この120兆ドルを超えるグローバルなビジネス決済の流れにある。ちなみに、消費者間ペイメントの市場規模は全世界で20兆ドル程度にとどまる。

2016年の世界銀行のレポートでは、アフリカの身近な例を伝えている。大企業を除いたサハラ以南のアフリカの零細・中小小売業者(MSMR)が2015年にサプライヤーに支払った金額は1兆5千億ドルに達したとされる。これらの企業や小売業者の中には、アフリカ起業家も少なからず割合を占めており、度重なる経済的後退にもかかわらず、経済成長の要として役割を果たし続けているのだ。

企業決済デジタル化の課題

B2B決済とは、実際にお金を支払うというよりも、複雑な一連の事務作業という側面が強いため、デジタル化へ向けて一向に進展を見せない。

Amazonで買い物する際、カートにある商品の代金は、クレジットカードやデビットカードで決済するだけでいい。一方、B2Bの決済取引の場合は、発注した時点から始まり、その後、ベンダーと企業間で支払条件のすり合わせが行われる。すべてのビジネスに共通した明確な決済フローが存在しないため、決済ルールやそれに関連する管理プロセスがビジネスごとに異なるのだ。

さらに、消費者金融のように債権者が資金回収の主導権を握るプル型ペイメントとは異なり、B2B決済はプッシュ型ペイメントである。つまり、支払う側が忘れずに送金しなければならないことを意味する。

B2B決済に伴う軋轢、コスト、起こりうるミスや不正は、企業のキャッシュフローに影響を及ぼす。昨年、Quickbooksが6カ国3,500社を対象に行った調査では、小規模企業の23%に支払い遅延が生じたと報告されている。サプライヤーやベンダーが、支払期限に間に合わない場合は、資金調達してでも支払い義務を果たさなければならない。調達できなければ、ビジネス自体が立ち行かなくなるかもしれないのだ。決済技術の進歩と、ほぼシームレスな決済に消費者が慣れていることもあいまって、様々な課題が混在する中、B2B決済への取り組みはより魅力的な対象とされている。ナイジェリアの企業向け決済会社Duploの共同設立者兼CEO、Yele Oyekola氏は、TechCabalにこう語った。

企業が現金に頼ることが少なくなってきていることが見てとれます。

一方、B2B決済は、支払い条件を合理化することで解決できることもあるが、問題は企業に画一的な支払い条件を受け入れさせることが不可能に近いということである。他の理由もあるだろうが、その中でも、ベンダー同様に企業もキャッシュフローを管理しなければならないということがあげられる。前述のQuickbooksのレポートでは、調査対象となった中小企業の79%が、資金繰りの悪化により債務の履行に苦労していると回答している。このような支払遅延のループがもたらす影響として、企業の資金回収方法がさらに多様化している。したがって、どのサプライヤーがいつどのような支払いを受けるかが優先されるために、異なる支払い条件を設定することになる。

そのため、ビジネスにおける決済ニーズは、消費者のそれと比較しても、かなり多様化してきている。

ナイジェリアのDuploは、売掛債権の遅延解決のため、ファクタリング同様に、手数料で債権回収を引き受け、ベンダーへの支払いを代行する。

B2B決済の固定化

消費者の決済方法の進化は企業にも波及し、決済方法や受取方法に変更が迫られている。DuploによるB2B決済レポートによると、この変化は、企業が扱う現金の額が減少傾向にあることに表れているという。

Duploがスタートした当時は、96〜97%が現金払いというFMCG企業が10社ほどありました。この5〜6ヶ月で、その数字は70%台にまでに落ちています。」とOyekola氏は言う。

特にDuploがターゲットとする大企業や中堅企業のB2B決済において、現金払いが主流の座を開け放してから久しい。これらの企業の多くは、業者への支払いに小切手や銀行振込を利用している。

ビジネス決済は多様性に富んでいるため、統一された決済プロセスを企業に導入させることは現実的とは言えない。そのため、B2Bペイテックは、買掛金、売掛金、帳簿、財務、税金といった特定のユースケースに対応したソリューションを構築する傾向がある。しかし、そこには落とし穴があるのだ。そのような断片的な構築でしかない方法では、結局は支払いプロセス全体が面倒になってしまう可能性がある。同時に、アフリカで年間10億ドルを超える収益を上げる企業400社、5億ドルを上げる700社に対しては、合理的なソリューションをカスタマイズすることができても、サブサハラ・アフリカの4,400万の中小企業1社1社に対して、本当の意味でのカスタムソリューションを構築することは不可能だ。

しかし、そのようなビジネスは大別することはできるだろう。ただ、それだけではまだ十分ではないので、そこから更に分類する必要がある。

中小企業は消費者向けの決済ソリューション、迅速な請求書決済、直感的なリコンサイルを重視するが、大企業はシンプルさや効率性を損なわずに洗練された方法を求め、そのような統合ソリューションに価値を見出すだろう。「彼らは、チャネル、システム、接続ポイント、契約を減らそうとしているのです。」と、VisaのビジネスソリューショングローバルヘッドであるDarren Parslow氏は、LinkedInに投稿している。

このニーズに応えるため、B2Bペイテックは、管理者のタッチポイントを効率的に減らし、安全性を保ちながら、複雑さを増すことなく既存のシステムに接続するソリューションを構築する必要がある。

アフリカのビジネス決済企業も、ソリューションが片手落ちであることに気づくかもしれない。最終的には、ビジネス取引のあらゆる側面を解決しなければならない。買い手が多少の妥協も踏まえつつも、望む方法で支払うことができ、サプライヤーはビジネス上最適な方法とタイミングでお金を受け取ることができるようにすることである。

つまり、B2B決済に取り組むフィンテック企業は、顧客のビジネスを深く理解し、顧客に最適なソリューションを構築することが求められるのだ。また、従来の金融機関を単に置き換えるのではなく、活用することで、顧客との有意義な関係を築くことを意味するのかもしれない。例えば、Duploは、買い手が在庫を先買いして後払いすることができるようなスキームを試験的に導入している。

B2B決済のデジタル化は、単に決済を固定化するのではなく、ビジネス取引のバックオフィスの大部分に変革をもたらすものである。「決済自体は、単に取引全体の一部に過ぎません。潜在的な盲点は、誰もが最も扱いたくないのが決済であるという実態を忘れていることなのです。」と、ベンチャーキャピタルであるDFS Labの共同設立者兼パートナーのStephen Deng氏は指摘する。

リアルタイム決済の普及が進む中、単に決済を促進するだけでは十分とは言えない。真のビジネスチャンスは、財務管理、請求書発行、照合、内部コンプライアンス管理など、一貫したコンテキストに基づいたソリューションを提供することにあるのかもしれない。「非常にインタラクティブで、ブランド力のある、強力な決済ユーザーエクスペリエンスを設計することはできます。しかし、迅速で、安く、信頼できるという最低限の条件を満たす決済方法が理想的な形として求められるのであれば、的外れなソリューションになりかねないのです。」とDeng氏は言い添えた。