この記事は、Muhammadu Buhari大統領の上級特別補佐官(デジタルトランスフォーメーション担当)Oswald Osaretin Guobadia氏よりTechCabalに寄稿された。Guobadia氏は現在、ナイジェリアのハイテクエコシステムとデジタル経済の成長に向けた戦略的プロジェクト、Nigeria Startup Bill(NSB)のリーダーを担っている。
アフリカ大陸の人口約14億人は世界総人口の16.72%を占め、世界第2位の規模を誇り、その将来が有望視されている。そして今、アフリカの若者を中心として、さまざまな側面で歴史が変えられつつある。
アフリカの若者たちは、ブームを巻き起こすエンターテインメント業界で世界的に活躍し、それは自国の人々をも笑顔にさせているのだ。それは、スポーツやファッション界にも同じことが言える。
アフリカには石油、金、ダイヤモンド、鉱石など多くの天然資源があり、Apple Inc.など多くのテクノロジー巨大企業は、コンゴから供給されるタンタル、スズ、タングステンを頼りに、スマートフォン、バッテリー、ノートパソコンなどを製造している。
これは、アフリカが世界中に供給可能である資源を十分に保有していることを意味するのだが、天然資源に代わる新基軸、すなわちデジタルテクノロジーが急速に台頭しつつある。
アフリカのデジタルテクノロジーのエコシステムが動き始めている。アフリカのエコシステムは、まるで止まることを知らない列車のようだ。大陸が直面している困難にもかかわらず、人口の70%を占める若者は、銀行・金融、健康、教育、農業、ホスピタリティなど、数種の分野を変えるためにイノベーション活用へと突き進んでいる。この新基軸は、人々の生活への取り組み方を変えつつある。世界的に見ても、デジタルテクノロジーは収益拡大に貢献し、発展途上国や先進国の経済を牽引している。「データは新しい石油である」という言葉があるが、まさにそれである。
Techspace Africa、Disrupt Africa、ルワンダのThe New Timesによると、アフリカのスタートアップ企業への投資額は、前年の701,460,565ドルから増大し、20億ドルの大台を初めて突破したとのことだ。2021年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界経済に大きく影響を及ぼしたにもかかわらず、スタートアップ企業の資金調達額は42.1%増加した。業界が大幅な成長を記録し、2050年までに712億ドルに達すると予測されている通り、この資金調達の伸びは上昇基調にあることを示している。
スタートアップ企業設立にためらいなく関心を示すアフリカの若者の数が増えているにもかかわらず、アフリカの既存、新興双方のスタートアップ企業にとって脅威となる要因がいくつかある。しかし、ナイジェリア人言うところの”WE MOVE “(進み続ける)はどんな状況であっても変わらない。
ナイジェリアの視点
StartupBlinkが発表した「Global Startup Ecosystem Index, 2021」におけるアフリカのトップテックエコシステムランキングによると、アフリカ大陸でエコシステム分野のスタートアップ企業が最も急成長している国の1つがナイジェリアであるという。
ナイジェリアの若者がデジタルテクノロジーの分野を席巻していることはもはや常識と化している。革新的な思考とテクノロジーの力を活用することで、ナイジェリアはさまざまな分野の問題に取り組む国のひとつであると位置づけられる。
Andela、Autochek、Kuda Bank、ULesson、Blocなどのサクセスストーリーが国内外のニュース誌をにぎわせているが、ナイジェリアに拠点を置くスタートアップ企業は、停電や資金調達の制限、高価なデータプラン、規制などの問題に直面している。しかし、私たちナイジェリア人は一度何かを決断し、試練に向き合うたびに、必ずその困難を乗り越える方法を見つける。それがナイジェリア人というものなのだ。
栄光への道筋
ナイジェリアがデジタルテクノロジーのエコシステムにおいて、世界をリードする可能性を秘めていることは間違いないだろう。だが、そのためには、周辺知識だけでなく、デジタル化、そのメリット、デジタルトランスフォーメーションの実現に必要なインフラ等の意味と意義といったより深い知識を持つことから始めなければならない。
デジタル化は、テクノロジーを活用して私たちの日々の活動を合理化し、複雑な業務プロセスを簡素化する。ナイジェリアの銀行システムにおける変革は、デジタル化の重要性とその利点を象徴する一例である。現在では、自宅や路上で銀行取引が可能なところにまできている。
一方、インフラとは、私たちがデジタル社会という目的を達成するために必要な技術のハードウェア、ネットワーク資源やサービスを指す。ルーターなどのネットワーク機器、サーバーやソフトウェアなどのコンピューティングハードウェア、データセンターなどの施設、コンピューティングやアプリケーションのプラットフォームなどが含まれる。
上記のように、デジタルエコノミーは極めて重要だが、これらを支えるインフラ設備を持つことはその重要性を更に上回る。人工知能(AI)の応用、ワイヤレス接続の加速、比較的安価なコンピューティングシステムの普及により、技術エコシステムがビジネスや社会活動により迅速で効率的な世界がもたらされる。デジタルテクノロジーを導入した多くの企業のように、ナイジェリアのビジネス環境を向上させることを意味するのだ。
現段階で、スタートアップ企業が自らのイノベーションを破壊とみなす一方で、システムの政策立案者からは、彼らによる置き換えとして捉えられるかもしれない。スタートアップ企業のイノベーションは、生産性を高め、他のソリューションを提供する。そして、一般的に生活を容易にするためにこそ、その存在理由があり、それは足し算ではあっても、決して引き算ではないはずだ。しかし政策立案者は、こうしたスタートアップ企業の躍進により、すでに存在する構造や機能が置き換えられてしまうのではと危惧するかもしれない。こうしたパラダイムシフトが経済に悪影響を及ぼしたり、エコシステムの機能不全に陥らせたりしないようにするには、エコシステム内の実務担当者や政策立案者が関与・協力していくことが鍵を握る。潜在的な起こりうる置換を管理しながらイノベーションを促進するダイナミックな政策や規制を開発することが重要なのだ。
以上のことから、創業者をはじめ、他のマニアックなテクノロジー派が積極的にガバナンスに参加することが望ましいと言える。ナイジェリアのデジタルテクノロジーの領域は、継続的な発展へ向けて法整備する余地を与え、権力が及ぶ最高レベルで厳密な言葉で語られなければならないからだ。その一例が、最近国会で可決された「ナイジェリア・スタートアップ法案(NSB)」である。この法案は、ナイジェリアの法律と規制が明確かつ計画的で、技術産業にとって有益なものになることを保証するものである。また、成長へ向けた環境を整え、技術分野への投資を誘致・保護することにもつながるだろう。その成功の鍵となるのは、施行内容の質の高さと各地方政府による完全受入れ体制にある。
デジタル経済は、性別、大人、子供も問わず誰もがテクノロジーに通じ、テクノロジーに晒された社会によって推進される。小、中、高校でのシラバス(授業課題)の見直しを図らなければいけないし、さらに1年間の青年奉仕団(NYSC)の義務教育もそれは必須だろう。すべての学習の基礎となる初等教育の段階で、コンピュータサイエンスが統合されていることを確認する必要がある。なぜなら、もし基礎レベルでコンピュータの天才が出現すれば、テクノロジーで私たちという全存在を変革し、人生の意義とは何かを再定義してくれる世代を産み出すであろうからだ。
前述したことは、デジタル村の人々を含む、すべてのナイジェリア人がテクノロジーとテクノロジー主導の思考を取り入れ、ナイジェリアを近い将来先進国にすることを保証しているのだ。
エコシステムの欠陥を修正するための一歩一歩が、私たちを可能性の世界へと導く。次なる大きなグローバルテクノロジーソリューションは、Edo、Ekiti、Imo、Benue、Katsina州など、ナイジェリアの各地域から生まれるだろう。単にスマートシティをつくるのではなく、スマートビレッジを形成し、統合されたテクノロジーによって、質の高い教育と学習を促進する革新的な学校を設立することができるようになる。
ローカル市場は国際市場に開かれたものになるだろう。なぜなら、テクノロジーは私たちの村に統合され、世界は今や地球村となったからだ。これにより、国民の経済が向上し、社会の長年の課題であった貧困が解消される。新たな世界の貧困ラインは社会のデジタル化のレベルによって計られることになるだろう。アフリカのデジタルテクノロジーのエコシステムは、大陸の変革に火をつけ、基幹産業や地元の村が技術によって強化され、アフリカ各国間で巨人と呼ばれる存在が生まれることになる。ナイジェリアのKaru村からガーナのAkrofu村、セネガルのDoumga,、ルワンダのKayonza、ケニアのMassai、Megdazのメグダズ、南アフリカのShakaland村などがそれに相当する。アフリカが世界の技術エコシステムに放とうとするものに対し、世界はまだそこまで準備ができてはいない。
世界が待ち望む未来の姿がアフリカにはある。人には誰しも果たすべき役割というものがあるということなのだ。
