アフリカの喫緊の課題の一つである食料インフレ。果たしてテクノロジーは、アフリカの人々の食費削減に寄与することができるのだろうか?

アフリカの食費にかける負担の大きさは、他の大陸のそれとは比べものにならない。IMFによると、アフリカの人々は平均して収入のほぼ半分を食費に費やしているという。ちなみに、より先進的経済圏諸国における負担比率は17%と推定されている。しかし、以前からこうした状態だったわけではなく、近年の輸入食料への依存、現地通貨の切り下げ、肥料のコストアップ、自然災害など、さまざまな要因によって着々と食料価格上昇が引き起こされている。

2020年から2022年にかけて、食料バスケットの価格は8.5%上昇し、主食の価格は23.9%急騰した。アフリカで最も人口の多いナイジェリアでは、わずか3年の間に食料品の平均価格が65%以上も上がり、文字通り、レストランもこの食品インフレの煽りを受けている。

ナイジェリア人は収入の20%を外食に費やしているという事実からもわかるように、外食はナイジェリアの文化の一部と化している。米国農務省によると、ナイジェリアの外食産業(レストラン、ホテル、バー、カフェ)の市場規模は70億ドル以上と推定され、中でもファーストフード部門は年率25%の勢いで成長している。

しかし、インフレが加速し、ナイジェリア人の購買力が低下しているため、レストランは厳しい経営を強いられることになった。この業界のポテンシャルは高いにもかかわらず、多くの企業が、不安定な供給と値段の高さ、調達の判断に役立つデータへのアクセスの制限、盗難やフードロス、資金調達の困難さといった問題に直面している。

レストランでは、上昇を続ける価格対応に苦心するだけでなく、データや供給に伴う壁にも悩まされているのだ。ナイジェリアとガーナにおける外食産業が抱える、このような問題解決の一助となっているのがナイジェリアのVendeaseである。このスタートアップは、レストランが食材の発注とその進捗、在庫管理、経費の追跡、適正な価格設定の確保、信用供与枠の利用を可能にする「フード・オペレーティング・システム」を構築した。

Vendeaseが最初に取り組んだ課題の1つは、納期の問題だった。飲食店にとって当日配送がいかに重要かを理解していたので、初期段階から匿名化されたデータを活用するインフラ整備には着手していた、と同社のCEOであるTunde Kara氏はTechCabalに語った。 

「プラットフォーム上での日々の行動や注文パターンに照らして、注文前から何が必要なのか、何が必要になりそうなのかを予測しました。その数ヵ月後には、物流と倉庫も扱うことになりました。これにより、購入パターンに関するデータを利用して、都市部における最大の注文スポットへの配送ルートを計画することができるようになったのです。また、このデータは、プラットフォーム上にある最も混雑する地域のフルフィルメントセンターのプランにも活かされます。これにより、大幅な納期短縮を実現しました。」とKara氏は明かした。

フルフィルメントセンターには、多くの頭痛の種がつきものだ。昨年、AmazonやWalmartのような大規模小売業者は、誤った管理による商品在庫の抱えすぎに苦戦させられた。データを利用して在庫プランを立てたにも関わらず、需要のない商品が多すぎたのだ。Vendeaseが同じ問題に直面したことがあるかという質問をしたところKara氏は次のように答えた。「確かにそのような問題はありましたが、ある程度は解決済みです。」また、Vendeaseのプラットフォームには3,000社以上の外食産業が登録しているため、それはやむを得ないことであったと言い足した。

双方向型ソリューション

また、Vendeaseは、食料の買取先となる農家やメーカーに代わって調達を担うことで、実質的に双方向型のマーケットプレイスを運営していることになる。Kara氏によれば、同社は、食品業界の1次(農家)、2次(メーカー)、3次(レストラン)産業にサービスを提供することで、食品供給の自動化を図り、それに投資しているという。

Vendeaseが、第一次産業のコスト削減と効率化を支援するサービスを担っている点についても、Kara氏は触れた。同社は、農家に対して肥料や飼料の調達と輸入を支援し、オフテイク契約や生産に不可欠となるあらゆるサービスを提供していると説明した。

初期段階からのコミットメントとスケールメリットにより、より良い価格設定が可能になるのです。これにより、生産チェーン全体の価格をコントロールできるようになります。生産コストが安ければ安いほど、エンドユーザーへの販売価格も安くなりますからね。

昨年、Vendeaseは、2,000万ドルの株式ラウンドと1,000万ドルの債券ラウンドで構成されるシリーズAで3,000万ドルを調達した。この債務ラウンドで得た資金はVendease社の貿易金融商品に費やされ、ユーザーに融資することになると、その当時、Kara氏はTechCabalに語っていた。同社がユーザーと金融機関との橋渡し役になることについて同氏はこうコメントした。

ユーザーは当社を通して融資を申し込み、購入履歴や返済期間をもとに、在庫で購入・返済というオプションを選べます。それは、お金を返す通常のローンとは異なるものです。

さらに、同社は製品の仕組みを改善するために、金融ライセンス取得の予定もあるという。

対極の側面

アフリカの食糧問題にテクノロジーで解決に取り組んでいるのは、Vendeaseだけではない。昨年、Stable Foodsはケニアの農家の生産量増加を支援するために60万ドルの資金を調達した。同社は、こうした農家に対して、投入・引取契約、再生可能農業のベストプラクティスに関するトレーニング、IaaS(Irrigation-as-a-Service)製品など、さまざまなソリューションを提供している。東アフリカでは3,600万人以上が干ばつの影響を受けており、同社のIaaS製品はまさに絶好のタイミングで提供されたといえる。

こうした企業の取り組みがアフリカの食糧危機に対して、永続的に効果があるかを判断するには時期尚早ではある。しかし、早くも期待が持てそうな兆しはみてとれる。Vendeaseは、昨年までに40万トン以上の食品を同社のプラットフォーム上で動かした。それにより、ユーザーの調達コスト200万ドル以上とマンパワー1万人以上の削減に貢献したことになる。アフリカの食料事情はまだ法外な価格高騰の渦中にあるが、VendeaseやStable Foodsのようなテクノロジーを駆使した企業は、そうした問題が起こらない未来を作ろうと日々取り組んでいる。永続的な解決策を見出すことは容易ではないが、将来の見通しは明るいはずである。