Hello,
eラーニングを始めた子供たちの親の多くは、セットアップから授業、宿題の手伝いに至るまで教師のアシスタント役を担わされることにうんざりしている。
そんな状況で、フルタイムの仕事に追われ、日々の生活の面倒もみなければならないとくれば、親たちにとっては、正直愉快な話ではないだろう。
eラーニングが親子関係に及ぼす影響もさることながら、アフリカの状況におけるedtechについては微妙に複雑な側面が見えてくる。
このパンデミック下、教育の究極の救世主としてeラーニングが何かと世間をざわつかせ熱視線が注がれたものの、アフリカ大陸全土にわたるeラーニングモデルの導入を阻む課題は顧みられないまま、おざなりにされている。
今回、東・西アフリカの各代表例として、ケニアとナイジェリアの2カ国を取り上げ、伏線を探りながら、アフリカ目線でその実態、課題、そして可能な解決策という点からeラーニングを検証したい。

WHAT’S HAPPENING
インフラ不足と経済格差
ナイジェリアの全国的なロックダウンが4月に発令されてから、Mallam Adamu Adamu教育大臣は、大学へ向けて授業の実質再開を指示した。この方針は、実現不可能でありながら、それに負けず劣らず、賞賛にも値することであった。
これに対し、公立大学の資金不足を理由に、Academic Staff Union of Universities (ASUU)は、同協会員へ向けてeラーニングの講義ノート提出やバーチャル会議への参加をしないよう求めた。
同協会の会長であるBiodun Ogunyemi教授は、Sahara Reportersのインタビューに答えて、ASUUはeLearningに真っ向から反対している訳ではないとし、会員の置かれている不十分な設備という実態について言及した。
「我々が異議を唱えているのは、eラーニングをサポートできる環境が整っていないという状況をナイジェリア政府が、見てみないふりをしていることに対してなのです。一口にeラーニングと言っても、さまざまな側面があり、単にノートをアップロードして、Eメールで学生に送信するということが、eラーニングの定義ではありません。」
現在、ASUUは給与体系を巡りナイジェリア政府と労働争議中にあり、それと並行して署名ストライキにも着手していることから、Ogunyemi教授のこの見方には偏りがあるかもしれないことに留意を要する。
それはそれとして、少数ながらASUUストライキとは距離を置く国立の教育機関の学生も、オンライン学習に必要なインフラ整備もなく、場当たり的な対応がオンライン学習をする経験の妨げとなったと口を揃える。
ケニアの場合もそれと酷似している。
パンデミックの影響で、3月に突如ロックダウンへ突入し、約1,700万人の学生が在宅でデジタル学習することを余儀なくされた。そして、それに伴った規定が制定されたと思われる。
「学校の行事予定やカリキュラムを中断させないために、教育省は“教室外学習”と呼ばれるeラーニングやデジタルレッスンを導入した。このラジオ、テレビ、コンピュータ、スマートフォンを利用したプロジェクトは、Kenya Institute of Curriculum Development (KICD)により企画され、今も実施されている。」とDaily Nationは報じた。
しかし、NGOにより5月に実施された教育向上のための調査内容を引き合いにすると、Usawa Agenda氏は大幅なインフラ不足を強調して指摘している。人口の78%がこうしたラーニングチャンネルにアクセスできなかったというのだ。

その調査から判明した重要な事実の1つは、eラーニングの整備がなされた公立学校がほとんどないという実態であった。
「10人中9人の校長がインタビューに答え、必要な学習教材を持つ子供たちとつながる環境にある学校はせいぜいそのうちの30%未満と推測している。」
私立の教育機関では、ほぼ学習が支障なく続けられているということは、これもナイジェリアと状況は同じである。
TechCabalでは、3月にedtechの活用をテーマに取り上げたが、そのレポートにある内容はすべて私立学校の教師から届いた声であった。
このことは、経済的な事情で学生が学習環境から取り残されたり、排除されたりしてしまうという現実を示唆する。
問題
モバイルファーストであるアフリカでは、スマートフォンがPCに取って代わられた。しかしながら、スマートフォンの普及とインターネットアクセス数が天文学的に拡大しているとはいえ、まだ十分に行き渡ったとは言い難い。
以下は、モバイルインターネット導入の際突き当たる壁について2016 GSMA(Global System for Mobile Communications Association)が調査した結果からの引用である。
「アフリカは、モバイルアクセスとその適用においては世界で最も発展途上にある地域と言える。モバイルサービスの利用者は総人口12億人のうち、5億6,500万人(47%)に過ぎず、インターネットの導入にいたってはさらに遅れている。モバイル経由でインターネットにアクセスする人はわずか3億3000万人(地域の人口の25%)。導入率は、モバイルが43%、モバイルインターネットが23%、とサハラ以南のアフリカでは著しく低い。」
浸透率が低い理由としては、デジタルスキルやその意識、ローカル関連のコンテンツの欠如、および手頃な価格設定でないことが挙げられる。

出典: GSMA Intelligence
デジタルスキルについては、長年にわたる、時間をかけた取り組みが行われたが、その一方で価格設定という問題はいまだに解決されない。多くの人はスマートフォンを買う余裕がなく、よしんば購入できたとしても、インターネットアクセスにかける金額は贅沢の域ですらある。
eラーニングは主にインターネットを介して配信されるため、ほとんどの学生はとうてい追いつくことができないというのが現状だ。
ならば、エントリーにバリアの少ない他のチャネルアクセスを利用してみてはどうだろうか?
ソリューション
かなり厳しいCOVID-19への対策を講じなければ、学校という環境はウイルス繁殖の巨大な土壌となりかねない。従って、今焦って授業を再開することは賢明な選択ではない。
しかし、学習の継続は必須であり、とりわけ私立学校の生徒でない学生のためには猶更である。
長期的な視点からも、手頃な価格の携帯電話とインターネットアクセス、公立教育機関のためのインフラ改善と整備がその明快な解決策である。そして願わくは、このパンデミックを機に、触発された政府が問題解決へと乗り出してもらいたいものである。
しかし、それまでは、アクセスが容易なラジオやテレビが、この問題の最も手っ取り早い答えとなるだろう。電源がなくても使えるバッテリー駆動のトランジスタラジオは、今や農村部や都市周辺のアフリカの家庭の特徴のひとつとなっているからだ。
幸いなことに、Kenya Institute of Curriculum Development (KICD)は、この2つの学習手段を活用し、5月のテレビラジオタイムテーブルをウェブサイトにアップすることで実施にこぎつけているようだ。
学生たちが実際そのチャネルを利用していたことは、調査により明らかになった、とKICDは述べている。
「調査の結果、70%がテレビでレッスンを視聴し、同様に、回答者の60%がラジオレッスンを聞いたと答えた。その一方、ケニア教育クラウドにアクセスしたのは30%であった。この調査結果は公表することになります。」
KICDのテレビやラジオ番組が、まだなんの規定もない大学・専門学校等高等機関の学生が対象外であることを除けば、この結果は興味深いものがある。
ナイジェリアでは、その逆が当てはまるようだ。4月、Mallam Adamu Adamu教育大臣は以下のコメントをした。
「高等機関の学生のためにNigeria Television Authority (NTA)とFederal Radio Corporation of Nigeria (FRCN)を介して受講できるよう、現在尽力しています。」
NTAとFRCNはいずれも国営放送局であることから、全国的にカバーできる。しかし、プレス会見時の、パンデミックのずっと以前からこの取り組みがあったという大臣の発言にもかかわらず、その後なんの進展も聞こえてはこない。
そしてとどのつまり、eラーニングのその先には無数の問題が横たわるという光景が見渡す限り続いているのだ。
ラジオやテレビでeラーニングを実施することは、アフリカにとっては単純な話でないかもしれない。しかし、適切に行われれば、パンデミック下でも学習を継続させる最も効果的で公平な手段となり得るのだ。
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ルワンダでは、運賃の現金払いにさようなら
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NEWS FROM AROUND THE WORLD
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WHAT WE ARE READING
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「このところの一連の失敗に終わったIPOは、急成長志向の神話的なユニコーンに待ったをかけた」と、Siemensの後ろ盾を受けたベンチャー企業Next47のゼネラルパートナー、Matthew Cowan氏は論じた。「まもなく、持続的成長志向のラクダが台頭することになり、ユニコーンは再び本当の意味での神話に戻ってしまうだろう」とCowan氏は付け加えた。