Googleはアフリカの女性経営者を支援するプログラムを開始する。

国際女性デーにあたる3月8日、Googleは女性創業者のスタートアップを対象とした新アクセラレータプログラム“Google for Startups Accelerator Africa:Women Founders Cohort”を発表した。参加者はビジネスや技術に関するトレーニングを受けるだけでなく、メンタリングや投資ネットワーク構築の機会を得ることができる。Googleは長年にわたり、アフリカ女性のビジネス力を高めるための戦略を展開しており、今回のプログラムもその一連の流れにある。

これを受けて、アフリカにおけるスタートアップエコシステム責任者を務めるGoogleのFolarin Aiayegbusi氏は喜びを露わにした。「Google for Startups Accelerator Africa‐Women Founders Cohortの第1期生に選ばれたスタートアップを発表できて嬉しい限りです。アフリカで最も差し迫った課題に取り組み、未来を築く彼女たちを支援できることを光栄に思います。」 

アフリカの8カ国から選ばれた15のスタートアップは、イノベーションとテクノロジーを駆使して生活やコミュニティに影響力のあるソリューションを開発している。

アフリカでスタートアップへの投資を続けるGoogleは、長年ジェンダー・パリティ(男女平等)を達成するためのプロジェクトを展開しており、本プロジェクトもその一環となる。昨年、自身のBlack Founders Fundで男女平等を100%達成したGoogleはエコシステムへ向けた強いメッセージを発信した。そのことは、TechCabalにひとつの見過ごせない疑問を抱かせた。「Y Combinatorはテクノロジー分野のジェンダー・ダイバーシティ(性の多様性)にリップサービスしているのでは?」

男女平等の問題に関して、Google に対するエコシステムの議論は、アフリカにおける Google の取り組みはTechstars や Y Combinator のような他の利益志向のアクセラレーターとは異なるという主な前提がある。

匿名のテック系創業者は次の通り唱える。「Googleは、アフリカの未来を担う大企業の“黎明期における支援者”になることを目指し、長期的なビジョンで動いています。いつかこれらの企業が潜在能力を発揮して成長したとき、クラウドコンピューティングやAI支援ソフトのようにハイレベルなビジネスソリューションをどこに頼ることになるか?ということです。」

GoogleのBlack Founders Fundは、同社がアフリカで実践してきた数多くのスタートアップ資金調達プロジェクトと同様、エクイティ(株主資本)フリーで、最大15万ドルの現金を呼び込むことができる。ちなみに、Techstarsでは6~9%程度のエクイティで12万ドルを提供し、7%で12万5,000ドルを提供するYCと同等といえる。一部のテックマニアからは、もしGoogleがビジネス上の焦点をエクイティに置くなら、同社の男女平等スコアシート達成には時間がかかるだろうと懸念の声が上がっている。いまだに男性の創業者からの応募の方が多いが、Black Founders Fundは実力主義に基づいて分配された、とGoogleは昨年あらためて表明した。

Googleによると、このアクセラレータプログラムで最も大きな目標は、アフリカのデジタル変革の道を切り開く女性創業者を発掘し、支援することだという。

選ばれたスタートアップ企業

  • Farmer Lifeline(ケニア)
    農作物を害虫や疫病から守り、収穫量を増やすことで零細農家を救う技術的ソリューション。
  • Gobeba (ケニア)
    成長するアフリカの都市で、大きなサイズの生活必需品を都市部の世帯に配達するためデジタル小売プラットフォーム。
  • Zydii (ケニア)
    アフリカで働く人々にとって魅力的かつアクセスしやすく、ビジネスの成長につながる地域密着型のデジタルトレーニングソリューション。
  • Mipango(タンザニア)
    女性およびマスマーケット用パーソナルファイナンスとアドバイザリーアプリ。
  • Smart Ikigega(ルワンダ)
    農家のポストハーベストロス(収穫後廃棄)をなくし、デジタルで金融サービスにアクセスできるサービスを提供。
  • Afriwell Health(コンゴ)
    コンゴの患者を世界の医療従事者へ迅速かつ効率的につなぐ。
  • Alajo App (ナイジェリア)
    銀行口座やスマホを持たないユーザー向けのデジタル貯金箱。USSDとSMSの利用で、エージェントとユーザー間のエスクローバンキングシステムを構築。
  • Kola Market(ガーナ)
    アフリカの中小企業向けに売上保証・スマート在庫推奨・プロダクトファイナンスを提供するフルスタックのB2B eコマースプラットフォーム。
  • Maxibuy (ナイジェリア)
    ナイジェリアで消費財を大量購入する業者に向けて、在庫調達および金融サービスを共同提供するプラットフォーム。ビジネス拡大とスケールメリットを支援。
  • MosMos(ケニア)
    アフリカ向けSave-to-Buyプラットフォーム。
  • eWaka(ケニア)
    個人用のオンデマンド電動マイクロモビリティから配送業者に持続可能な物流まで提供するライドシェアリングプラットフォーム。
  • Hepta Pay(ルワンダ)
    カード決済とモバイルマネーを連携させ、移民や難民からの資金流入を促進する製品。
  • Jem HR(南アフリカ)
    人事・給与システムに接続するソフトウェア。給与明細の送付・休暇申請・給与前払い・WhatsAppを介した数千人の従業員とのコミュニケーションなどを簡単に行うことができる。
  • Suitch(カメルーン)
    銀行口座を持たない層の成長を促す専用デジタル金融サービス。
  • Tyms Africa(ナイジェリア)
    アフリカの零細企業向けマイクロクレジット(小口融資)。

Googleが女性向けアカデミー設立へ

Googleは、アフリカにおける女性主導ビジネスの成功を支援する取り組みの一環として、女性向けトレーニングプログラム“Hustle Academy”を展開予定。これは、アフリカ経済圏のバックボーンとなる「女性が経営する中小企業」に焦点をあてている。

例えばナイジェリアでは国内GDPの48%、雇用の84%を中小企業が占めている。ケニアでも同様で、雇用の80%が中小企業によるものだ。しかし、経済的に極めて重要な役割を担っているにもかかわらず、アフリカの中小企業の多くは資金不足や非効率的な経営などの理由で、設立から5年以内に倒産に追い込まれている。

GoogleのHustle Academyはナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカの中小企業に対し、ブートキャンプ形式のトレーニングを実施することで、収益の向上・投資機会への準備・将来に向けての持続可能なビジネスの構築を支援する。条件を満たす女性起業家は、Googleのウェブサイトから参加申し込みが可能。

Googleのアフリカ人女性支援計画について、Google Africaのコミュニケーション責任者を務めるDorothy Ooko氏は、意欲を覗かせる。「Googleではアフリカの女性起業家に資金・メンターシップ・ネットワーク構築機会へのアクセスを提供することに力を注いでいます。当社のプログラムを通じ、男女の格差を埋めるとともに、女性がそれぞれの分野で成功するために力添えできるよう尽力していきます。」