2012年、Ife Kohossiは大学を卒業したものの、ベナン共和国で栄養士としての仕事を見つけることは難しいと感じていた。

インターンシッププログラムで期待した結果を得られなかったKohossiは、自力で社会に出ることを考えた。人々がより良い食生活を心掛け、健康的に生活を送るよう指導することにかけては、確固たる自信がある。彼女の国で肥満が原因による疾患率の高さは大きな社会問題であり、それならば、Kohossiのそのスキルを必要とする人々が必ずいる筈だと確信した。

数年後、Kohossiはアフリカ人が独自の特技や能力をマネタイズするプラットフォームIrawoに接触を試みた。「彼女はFacebookページを使ってコミュニティを作る方法を知らなかったのです。」と言うのは、Irawoの創業者Mylene Flicka氏である。

オンラインツールの利用方法と、自身のビジネスマーケティングを学べるIrawoのプログラムを受けたKohossiは、Ife Nutritionを起業した。体に良いものを食べることで、より健康的な生活を送るように人々にアドバイスし続けること数年、そのビジネスは月に約2,000ドルの収入を得るところまで成長した。

アフリカのパッションエコノミー

ここ数年、インターネットはパッションエコノミー台頭の一助となってきた。パッションエコノミーを端的に言い表すとすれば、スキルの収益化を図る人々のニッチなコミュニティの新しい波と言ったところか。

オンラインクラス運営であれ、デジタルブック販売やコピーライティングであれ、パッションエコノミーは、一個人の熱意でお金を稼ぐことを叶えてくれる。

パッションエコノミーについて語られる時、Kohossiのようなアフリカのクリエイターが自身のスキルの収益化に活用できるプラットフォームについてほとんど触れられない。15歳から24歳まで2億人の若者を抱えるアフリカは、世界で30歳未満の人口が最も多いというのに。

現在8回目となるIrawoのプログラムでは、これまで200人以上のクリエイター達をトレーニングしてきたとFlicka氏は述べた。Irawoのトレーニングプログラムへは誰でもサインアップ可能で、プログラム料金は60,000 FCFA($100)から始まり、最も高くて1,950,000 FCFA($3,500)となる。

研修以外にも、受講者はメンターとつながり、役立つツールや教育が継続的に提供される大規模なコミュニティの一員となれる。Irawoはベナン共和国で始まり、現在は世界中のフランス語圏のアフリカ人に対応しており、それはアフリカのクリエイターからの関心が高まりつつあることを証明している。

クリエイターがソーシャルメディアの使い方を理解したら、その次のステップは売る方法である。最近は誰でもソーシャルメディアを利用して商売できる時代になり、アフリカにはクリエイターが自身のスキルをマネタイズすることに特化した専用のeコマースプラットフォームがある。

「クリエイターのほとんどは、こうした既存のプラットフォームとそれを有効利用する手立てを知らないのです。」と、彼女は言った。

2015年にMylene Flicka氏がIrawoを立ち上げたとき、アフリカ人によるアフリカ人のための才能を収益化するためのプラットフォームはほとんど存在しなかった。

パッションエコノミーを後押しするアフリカのeコマースプラットフォーム

過去5年以内に、Flutterwave StorePaystack CommerceAfricreatorsAfrikreaSelarなどのアフリカベースのプラットフォームが立ち上がり、何百万というアフリカ人による製品やサービスの販売をサポートしている。

「過去12ヶ月間に、65万ドルに値するアフリカのクリエイターの商取引を手助けしてきました。」Selarの創設者Douglas Kendyson氏はそう話してくれた。

ナイジェリアのラゴスに拠点を置くSelarは、世界中のどこからでもアフリカ人のスキル、知識、コンテンツの収益化を支援し、現在、30,000人の登録ユーザーと約6,000人の加盟店を抱える。

Selarは、クリエイターがあらゆるデジタル製品を販売するためのeコマースストアビルダーである。利用は無料だが、取引手数料のみ利用通貨に応じて4~10%の範囲でチャージされる。

Kendyson氏にマーケットの規模についてはどう捉えているのか、また、アフリカのクリエイターであり続けられるのかと聞いてみた。その答えは、「多くのクリエイターと仕事を共にするほど、彼らが想像以上に変革的であることがわかります」であった。

2018年にSelarで5~10ドルの電子書籍を販売していたクリエイターが2020年にはコーチングサービスで1,500ドルを稼ぐまでに成長した例を引き合いにした。

「もちろん、誰もがそのレベルに達するわけではありませんが、クリエイターがビジネスを始めて収入が倍増するという話は枚挙にいとまがありません。」と彼は言い添えた。

クリエイターであることは他のキャリアパスとなんら変わるところはないという信条をKendyson氏はもっている。クリエイターがなんらかの価値を提供し続ける限り、それは持続可能であり、急激な成長をももたらす可能性があるという考えだ。

また、価値の提供だけでなく、クリエイターとしてオーディエンスを構築することが次に重要な事柄であるとも付け加えた。

デザインに関するデジタルブックを販売して1ヶ月以内に100万ナイラ(2,070ドル)を稼いだ著者について触れた。その著者はそれまで一度も本を書いたことはなかったが、彼女がオンラインコミュニティを構築していたことが功を奏した。

「どこからともなく始まり、うまくビジネスにのせる人がいます。それはある意味、外道とも呼べるが、パッションエコノミーの勘所は、誰もが何らかの方法で可処分所得を得られるということなのです」と、彼は言った。

アフリカのクリエイターを悩ます問題の1つは、価格設定だ。それをよく説明する例として、0.62ドルで農業マニュアルを販売し始めたケニア人のエピソードをKendyson氏は話した。価格が低過ぎると思った彼は、10ドルでも購入したいというナイジェリア人もいたことを踏まえ、それと同価格か、せめて2倍まで引き上げても問題ないと彼を説得しなければならなかった。最終的には、約3ドルに値上げしても、販売売り上げは下がらなかった。

このことでわかる通り、アフリカのクリエイターは、自分たちが生み出したアイデアの価値を過小評価するきらいがあるのだ。

課外活動の支払い

Angie Madaraと彼女のビジネスパートナーMattが2019年5月にGrowdを始めたのは、自分の子供たちのためにより良い学習環境を与えたいという思いに突き動かされてのことだった。5ヶ月間のパイロットプログラムを経て、ケニアでこれを必要としている人々がいたことが明らかとなった。

Growdは、14歳以下の子供を持つ親と協力して、音楽、スポーツ、芸術などの共同カリキュラム活動を見つけ出し、デザイン、マッチングすることで、数学、英語、科学における子供の学業成績を向上させるプラットフォームだ。

このどこに、アフリカのクリエイターの必要性があるのか?20,000人いるGrowdの顧客のコミュニティは、こうした共同カリキュラム活動を指導する270人のインストラクターによって支えられている。Growdはひとりの子供に最も適したプログラムを組み立て、そしてあとはインストラクターネットワーク頼みだ。インストラクターが価格を設定し、学生はインストラクターを選択する。そして、Growdへは手数料が支払われるという仕組みだ。

インストラクターは従業員ではなく、自分たちがしていることに情熱を傾けているパートナーであり、中には、報酬に無頓着な人さえいると Madaraは言った。彼らはひたすら評判を築きたいだけなのだという。

現在、270人のインストラクターが週平均2クラスを受け持ち、Growdの照会では、毎月16,000人のアクティブユーザーがいる。

ビジネスは順調であり、子供たちの学業成績も向上させているにもかかわらず、ケニアでは課外活動は軽んじられているのだとMadaraは指摘した。

アクティビティには、その性質上、対面式とバーチャルクラスの両方がある。今のところ、クラスの70%がオンラインクラスとなる。

学期(3ヶ月)毎にサインアップするか、期間内に特定の日程を選ぶことができるが、まだ、Growdモデルは目新しいので、いいとこ取りする人々も多い。インストラクターが満足のいく内容を提供してくれると納得するまで、1クラス分の料金を支払う。

Madaraは、子供たちに絵の描き方を教える美術教師の例を挙げた。彼は1クラス時間あたりわずか2人の子供から始めたが、今では25人の子供のフルクラスを持っている。家庭教師の収入がどれだけアップするか数字で表すのは難しいが、かなりいい収入を得ている人たちがいるとMadaraは言う。

手数料オプションには7%と30%の2パターンあり、それぞれ内容が違う。インストラクターがより高い手数料のオプションを選ぶと、Growdはプラットフォーム内で通常は有料のプロモーションサービスを無料で提供してくれる。金融機関と協力して融資のオファーもある。

Growdを始めたときにMadaraが驚いたことの一つは、ほとんどブルーカラーの労働者ばかりだと思ったインストラクターの中には、ホワイトカラーもいたことだった。

子供たちに金融リテラシーを教える保険会社のマネージャーや、コードを教えるテクノロジーハブワーカーがいる例をMadaraは挙げた。

オンラインクラスの料金は1時間あたり平均2ドルで、物理クラスは1時間あたり8~10ドル。平均して、月4時間のクラスを毎月100人の学生が受ければ20,000 KES(200ドル)を得ることができる。

アフリカ人の85%が1日あたり5.50ドル未満で暮らす大陸で、それはかなりの金額だろう。

アフリカの失業率の60%を若者が占める中、スキルを収益化できるパッションエコノミーとプラットフォームの台頭は、果たして失業者と貧困格差を埋める救世主となるだろうか。