南アフリカのアドテク系のスタートアップAdbot。中⼩企業に向けて、人工知能を利用した効率的なオンライン広告キャンペーンの運用を支援している。同社は、先ごろナイジェリア進出を視野に入れたシードラウンドでの資金調達を発表した。
McKingsey社のデータによると、過去5年間アフリカ諸国で、オンラインを利用した商品やサービスの購入者が占める割合は2倍以上に膨らんでおり、これはアフリカ大陸人口全体の約10%に匹敵するという。また、アフリカのインターネットショッピングは前年比約25%増と世界でも高い成長率を示しており、年間で1,000万人以上がインターネットショッピングを始めている計算になる。
南アフリカのアドテク系スタートアップとして、中小企業がこの流れに乗る支援の担い手をAdbotは目指している。同社は、中小企業がわずか10分以内でGoogleやBing広告を出稿できる、AI技術を駆使した自動広告キャンペーン管理ツールを提供する。Adbotは先日、このサービスをナイジェリアを初めとしたより多くの市場へ向けて拡大するため、Tofino Capitalから未公開のシードラウンドで資金を調達した。
TechCabalは、Adbotの創業者兼CEOであるMichelle Geere氏にインタビューを行い、オンライン広告においてAIが果たす役割、不況時の資金調達、アフリカにおけるオンライン広告の状況などについて話を聞いた。
Adbotと同社が提供するサービスについて、詳しく教えてください。
Michelle Geere: 当社は、アフリカの中小企業向けに、人工知能を使った自動オンライン広告キャンペーン管理ツールを提供するアドテク系企業です。現在アフリカでオンラインビジネスを行うには、まずクレジットカードが必要となります。Google、Facebookなど、どのようなプラットフォームでもビジネスを展開するためには欠かせないクレジットカードですが、アフリカでそれは、他国程一般化されていないというのが実情です。私たちはこの問題を解決したいのです。加えて、オンラインビジネスを展開する場合、キャンペーン管理は自社で行うことになり、スキルがない場合、それはとりわけ大変な作業になってしまうという問題もあります。
そうした事情で、中小企業ではネット広告を活用したくても、そのための手段がないといったケースがよく生じます。そうなると、オンライン広告に比べて、非効率的で時間がかかる他の方法を探すことになってしまうというわけです。そこで私たちが思いついたのは、ビジネスオーナーのためにすべての管理を任せられる技術を構築するということでした。デジタルマーケティングや、Google 広告の専門家である必要はありません。この技術は、キャンペーンを自動的に管理する機能なので、ユーザーは、自社のビジネス拡大に集中することができるのです。
Adbotは最近、シードラウンドで資金調達を完了しました。資金調達が容易でない状況下、それに踏み切った経験についてお聞かせください。
MG:現状では、資金調達は確かに難しい状況にあります。私たちが幸運だったのは、Tofino Capitalのチームと対話を重ねるうちに、互いの文化が見事に合致したことだと思います。私は個人的にアフリカの中小企業の倒産率を下げたいという強い思いがあり、彼らは、アフリカにおけるビジネスの発展に貢献する企業に関心があります。そうした点で、共通の目的につながり、契約成立に至ったのだと思います。この決断は非常に早かったですね。
南アフリカで事業を行うにあたり、どのような課題に直面しましたか?また、これから進出する市場では、どのような課題が予想されますか?
MG:まず、南アフリカにおける課題と、私たちが今後事業展開する予定のナイジェリアにおける課題は少し異なってくると思います。南アフリカは、オートメーションに対する理解がまだ進んでいないという点が壁となりました。今回の資金調達は、アフリカの他の地域にサービスを展開するためというのがひとつの理由でした。いずれ、「機械の方が人間よりも有能」という認識が浸透していくとは思うのですが、現時点では残念ながらそうではありません。だからChatGPTの登場によって、そのような考え方も変わりつつあることは喜ばしい限りです。
ナイジェリアの場合、eコマースの手法が非常に特殊なため、広告やオンラインサービスのコンセプト導入が課題となるでしょう。例えば、Instagramのようなソーシャルプラットフォームを利用した電子商取引はごく一般的なのですが、一方でGoogle検索のようなサービスは、それほどではありません。私たちのテクノロジーで、より大きな規模でビジネスを実現できるということを、市場に幅広く浸透さ せることが今後の課題となるでしょう。
企業が自社で広告キャンペーンを展開する場合、Adbotにはどんな強みがあるのでしょうか?
MG:仮にあなたが中小企業の経営者で、Googleで直接広告出稿するならば、プラットフォームの仕組みを正確に理解していなければなりません。これには、かなり学習が必要ですし、そのための時間を確保しなければなりません。しかし、経営者にそのような余裕がある人はほとんどいないのです。次に、広告をGoogleから直接出稿する場合、日々自分のアカウントにログインして、キーワードに対して課金する必要があります。これを効率的に進めるには、有効なキーワードとそうでないキーワードを把握していなければなりません。この作業はやはり相当な時間を費やすことになります。つまり、きちんとした知識がないと、逆に何も得られないまま費用だけがかさむ可能性があるということです。
Adbotを利用すれば、面倒な作業は一切不要です。文字通り、わずか10分足らずで完成するフォームに、ご希望の広告掲載内容を入力するだけです。あとはAIが介在して、余計な出費なしに処理してくれます。
アフリカ地域における今後のオンライン広告のあり方をどのように見ていますか?
MG:将来的にはより自動化が進み、経営者は本来のビジネスに集中することが可能になるでしょう。加えて、インターネットの普及率が着実に上昇していることを踏まえれば、アフリカの企業にとってオンライン広告を活用することは、事業拡大と収益性を促進させる絶好のビジネスチャンスと言えます。AIのような技術は、中小企業がオンライン広告をより効率的かつ効果的に利用するための、はるかに有効な手段なのです。
