アフリカの中小企業は地元での製造、販売、再輸出といった目標をクリアするため、製品販売先となる海外サプライヤーからの輸入に依存している。こうしたアフリカ諸国間、および主要貿易相手国との貿易の流れが、ビジネス決済を円滑化する好機となるかもしれない。

2017年、輸入資金に必要となる外貨獲得に苦心する中小企業に対し、ナイジェリアの中央銀行は四半期ごとに最大2万ドル(約290万円)を提供する特別機関を開設した。さらに昨年、ケニアの小規模輸入業者が外国為替不足により大打撃を受けたことから、銀行は1日1,500ドルから2,000ドル(約22万円から29万円)の限度額を課す必要に迫られるという状況にある。

こうした難局に見舞われながらも、海外のサプライヤーとビジネス展開する企業の多くが今も地元銀行との取引を好む傾向にある。これは、ナイジェリアの企業間決済自動化をすすめるDuplo社が最近発表したレポートで明らかにされたことだ。ケニア、ガーナ、ナイジェリアなどの国々では、中小企業が並行市場で外貨を調達するケースがある一方、業者からの請求書決済に銀行送金や電子送金を利用せざるを得ないケースもある。

Duplo社のレポートにはクロスボーダー決済の金額に関する洞察は記されていないものの、輸出入の数字を見れば、中小企業によるクロスボーダー取引のおおよその金額は推察できる。

その一例が、製造業者のおよそ90%を中小企業が占めるナイジェリアである。同国統計局のデータによると、2022年10月から12月の3カ月間、ナイジェリアの企業から他国の企業および個人向けに約10億2,150万円相当の商品(靴、傘、日よけ、帽子など)が売られている。同じ時期、同国の企業(および個人)が同じ商品を海外から輸入している。これは12月の一般的な並行輸入レートで約49億300万円に相当する。これらの数値は、2022年最終四半期におけるナイジェリアの輸出入額の其々2%と10%にすぎないが、アフリカ最大の経済大国における企業(主に中小企業)のクロスボーダー取引額の概要を示しているともいえる。

アフリカの中小企業の多くは、企業間決済に銀行を利用

ナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカ共和国での調査対象となった1,200を超える企業のうち、61%がクロスボーダー決済に携わっている。このうち、ほぼ半数(48.4%)が海外のサプライヤーやベンダー向けの決済に現地の銀行を利用する。フィンテックのソリューションを通してクロスボーダー決済を行っている企業は、調査対象企業のわずか19.5%に過ぎない。

あらゆる国において、銀行がクロスボーダー取引の決済チャネルとして、より好んで利用されている。ナイジェリア、ガーナ、ケニアでは、近年為替圧力にさらされた影響なのか、フィンテックプラットフォームが銀行に次いで選ばれている。これは、フィンテック・アプリを介するクロスボーダー決済が、両替所やオフショア・バンキングを追い越す勢いで急速に成長したことの表れでもある。

フィンテックが銀行から学べること

銀行は圧倒的な強さを誇る一方で、アフリカ何カ国もまたぐ市場展開にもかかわらず、その規模のメリットを十分生かしきれていない。資本規制や厳格なルールにより、たとえばナイジェリアにあるUnited Bank for Africa銀行(UBA)口座の所有者が、ケニアのUBA支店ではその口座からの引き出しや振込ができないことがある。外貨決済においても、状況は変わらないという。

UBAはアフリカ大陸20カ国以上に支店を持つ。こうした障壁により、たとえEcobankのようにアフリカ全域で展開する銀行でさえも、その規模に値する恩恵を享受できずにいる。

Duplo社によると、銀行がパートナーに選ばれる大きな要因が、既存の取引関係や従来の銀行システムへの信頼によるものという。これが事実であれば、地元銀行が中小企業との主要取引関係を活用し、クロスボーダー決済取引の管理業務を行ってきたことがうかがえる。

これこそ、アフリカのフィンテックが追うところの定石なのかもしれない。

通常フィンテックは地元企業向けの取引、あるいはクロスボーダー決済サービスの提供に重点を置いている。その双方のうちどちらかしか提供しないのは、サービス限定の行き過ぎとなるかもしれない、という教訓を銀行から学べるだろう。銀行がこうしたサービスを迅速に行うことはまず難しい。

ナイジェリア最大の資金規模を誇る金融機関Access Bankは、アフリカでの存在感を戦略的に高めており、その背後に多くのフィンテックを従えている。その中には、ナイジェリア、ガーナ、ケニア、ジンバブエ、南アフリカ、コートジボワール、イギリスで事業を展開する大手決済プロバイダーであるeTranzactの過半数の株式も含まれる。