偽造医薬品は、毎年100万人以上の人々を死に至らしめる世界的な脅威となっている。世界保健機関(WHO)は2017年、低・中所得国の医薬品全体の10%が規格外や偽物であり、この内アフリカでの事例が42%を占めていると報告している。

アフリカで蔓延しているこの問題を解決するために、ソリューションを提供するテック系スタートアップが台頭している。そのうちの1社であり、命を救うために最前線にいるChekkitは、自社の技術を向上させるためにプレシードラウンド50万ドルの資金調達を発表した。

Dare Odumade氏によって2018年に設立されたChekkitは、ナイジェリアを拠点とするB2Bソフトウェア企業で、FMCG(Fast Moving Consumer Goods、日用消費財)や医薬品に製品認証・トレーサビリティソリューションを提供している。同社の技術は、偽造品が消費者に購入されたり使用されたりするのを防止する。合わせて、顧客のエンゲージメントやダイレクトマーケティングツールも提供している。

百聞は一見にしかず、恐怖の体験から生まれたソリューション

Chekkitを始める前に、Odumade氏は偽造医薬品の恐ろしさと、それがいかに人命を奪うかを目の当たりにした。ガーナの友人の薬局で、偽造抗マラリア薬を服用した患者が腎臓破裂により死亡した事故に立ち会ったのだ。

この悲しくも恐ろしい出来事の後、彼は小さなチームを集めてAccra(アクラ、ガーナの首都)で市場調査を開始した。その結果、消費者は偽造品やそれがもたらす危険性に関心がないことがわかったのだ。ましてや、偽造医薬品の影響は、ユーザーの体に深く食い込むまで、長期間にわたって気づかれないことがある。

Odumade氏はTechCabalに次のように語っている。

私たちは、医薬品を認証するステッカーラベルを利用した認証システムを開発することにしました。ステッカーには、暗号化されたUSSDコード(特定の動作を実行させるために電話に入力するコードのこと)や、QRコードが搭載されています。また、消費者が認証情報を確認する間に回答することで、即座に報酬を受け取ることができるアンケートを搭載することもできます。

彼らは、大きな問題を解決するために、シンプルなソリューションを生み出したのだ。その仕組みは、医薬品や食品を購入した後、顧客がシールに記載されたUSSDコードを発信したり、パックに記載されたQRコードをスキャンしたりすると、認証通知が届き、同時に報酬を得ることができるというものである。腎臓破裂の可能性を回避したことで報酬を得られると考えればいいでしょう。

Odumade氏によると、Chekkitのラベルが貼られた5つの製品を認証し、アンケートに答えると、100円相当の通話時間がもらえるとのことだ。

露店の薬売り場/出典:BBC

Yaba(ヤバ、ナイジェリア都市)からKabul(カブール、アフガニスタン首都)まで、機会が準備を満たす

Chekkitは過去数年にわたり、ナイジェリア、そして最近ではアフガニスタンの消費者と生産者を偽造品の危険から守るために、消費者にオリジナル製品を識別する手段を提供してきた。

ナイジェリアのスタートアップ企業がアフガニスタンに進出することは稀だが、なぜアフガニスタンなのか?

「そのきっかけは、Fantom(ブロックチェーン)財団チームとのパートナーシップにありました。アフガニスタン政府は、国内での偽造医薬品の蔓延を抑える方法を早急に探していて、Chekkitは彼らの問題を解決する完璧なソリューションです」と、ChekkitのCMOであるTosin AdelowoはTechCabalに語っている。

Chekkitによると、これまで700万点以上の医薬品と20万人以上の消費者を保護してきた。更に、アフガニスタン政府とのパートナーシップを拡大し、中東の国で2億点以上の製品の検証と追跡を行っている。

MerckRoyal Star PharmaNabros Pharmaceuticalなどの世界的な製薬会社との提携は、Chekkitの成長に大きく貢献している。Chekkitは、IndomieNiveaFlour Mills of Nigeria PlcなどのFMCG事業者とも提携しており、エンゲージメントソリューションを提供することで消費者との距離を縮める手助けをしている。

同社は声明の中で、政府やNGOと密接に連携していることを述べている。

我々はAfrican UnionAfrica CDCとのパートナーシップでCovid-19エンゲージメントソリューションを展開しています。NAFDACGS1FCCPCなどの規制・標準化機関と常に連携して、我々が使用する製品が安全で最高の基準で消費されることを保証しています。

自己資金や助成金での運営を経て、サービスローンチ以来初めてとなる機関投資家からの資金調達

Launch Africa日本戦略投資株式会社Blockchain Founders Fundがこの50万ドルの資金調達ラウンドに参加した。また、2つのシンジケートグループのエンジェル投資家も参加し、Orange Cornersプログラムからの助成金でこのラウンドを終了した。

エンジェルシンジケートの1つであるBiola Alabi氏は、Chekkitへの投資について、「ナイジェリアや世界の新興市場で偽造医薬品の撲滅に取り組んでいる彼らに投資をするのは当然のことです」と述べている。

同社によると、Alabi氏の資金を得るだけではなく、Alabi氏の長年にわたるメディア・コミュニケーションの経験と業界の専門知識を活用すべく、彼女を同社のアドバイザリーボードに迎える予定とのことだ。Alabi氏は現在、Unilever Nigeria Plcの非常勤取締役を務めている。

この資金は、自社の技術を改善・拡大し、より多くのイノベーターを雇用して「崇高な探求」に参加させることで、世界で最大1億人の命を直接守るという目標を達成するために使用される。

「何百万人もの人々の生活を守るために独自の技術を開発し、インフォーマルなアフリカ市場の消費者を知ることで、複数のブランドのビジネス活動を直接改善することができるようになる。今回の資金調達を受けて将来を非常に期待しています」とOdumadeは声明の中で述べた。

一つだけ確かなことは、Chekkitはクライアントのビジネスのサプライチェーン全体に触れ、顧客との距離を縮めるお手伝いをしたいと考えているということだ。それにより、偽物の製品が入り込むことは難しくなるだろう。

「初のコンシューマー・インテリジェンスSaaSを発表します。つまり、消費者ブランドがエンド・ツー・エンドのロイヤリティ・キャンペーンを実施し、エンゲージメント・データを集計し、社内やマーケティング代理店と協力して報酬を配布することを実現します。これにより、消費者は商品パッケージに直接印刷されたQRコードやUSSDコードを通じて、ブランドと直接対話することが可能になります」とOdumadeは付け加えた。

5~10年後には、約10億人の生活に影響を与え、世界をリードする有形製品の認証・トレーサビリティ技術となることを計画している。ガーナで設立され、ナイジェリアでサービスを開始し、現在はアフガニスタンまで拡大しているのだ。Chekkitのインパクトを世界が感じるのは時間の問題である。