世界各国とアフリカとの間に存在するデジタルデバイド(情報格差)が、今ほど顕著になったことはない。

デジタルデバイドとは、パソコンやインターネット接続など、現代の情報通信技術(ICT)へのアクセスとそれを利用する能力があるグループとないグループの間で生じる格差を指す。

アフリカ諸国では、主に都市部と農村部、教育を受けた人と受けていない人、その他社会的、経済的グループの間に不平等が広がっている。国際的にも、国と国、地域と地域の間で格差が生じており、アフリカはヨーロッパや北米などに比べてその点では、はるかに遅れをとっている。

デジタルデバイドが問題視され始めたのは、コロナ禍以前に遡るが、今回のパンデミックによって、世界各国で生じているデジタルデバイドによる分断がさらに顕著化されたことになる。

米国や英国のようにデジタルインフラが整備されている国ならステイホームは可能だが、アフリカの多くの発展途上国では、そのロックダウン対策には無理があった。なぜなら、リモート学習やリモートワークに必要なテクノロジーもなく、高速インターネット接続ができないからだ。

アフリカのデジタル化が遅々として進まない要因は、主にデジタルインフラの整備不足によるものであることは知られている。

この地域でのインターネットアクセスの鍵となるのはモバイルネットワークである。しかし、南アフリカを除くサブサハラアフリカ地域では、モバイルブロードバンド普及率は約34%、固定ブロードバンドに至ってはわずか5%未満にとどまる。

ヨーロッパで8,800万人、北米では3,500万人がインターネットにアクセスできない状況にあるが、アフリカでは13億人のうち8億人以上もオフライン下におかれている。

「新型コロナウイルス感染症が、デジタルギャップ解決のための資金調達を喫緊の課題へと変えたのです。」とは、サハラ以南アフリカ諸国のテクノロジー分野に特化したプライベートエクイティファーム、Convergence Partners社のCEO、Brandon Doyle氏の弁である。

「パンデミック下で、デジタルインフラと通信が非常に重要であることが証明され、ネットワークの可用性と機能の向上がより早急に求められています。」とDoyle氏はTechCabalに語った。

デジタルインフラプロジェクトへの資金提供

Convergence Partners社は、アフリカのテクノロジーおよびデジタル分野に初期から投資を行った企業のひとつである。付加価値のあるパートナーとして、アフリカ南部、東部、西部のプライベート・エクイティやインフラ事業に投資している。

ヨハネスブルグを拠点とする同社は、ICT業界の古参企業で、現在会長を務めるAndile Ngcaba氏によって2006年に設立され、Doyle氏はその共同設立者の一人である。

「銀行員だった2003年頃、Ngcaba氏からICT分野の投資会社設立を持ちかけられたのです。その分野での経験を持つ身としては、その話に心を動かされました。」と当時を振り返るDoyle氏は、テレコムやハイテク分野に特化した投資銀行でキャリアの大半を過ごしてきた。

Convergence Partners社、共同設立者兼CEOのBrandon Doyle氏

同社は過去15年間に、Convergence Partners Investments、Convergence Partners Communications Infrastructure Fund、そして最近立ち上げたConvergence Partners Digital Infrastructure Fund(CPDIF)の3つのファンドを通して投資を行ってきた。

Convergence Partners社のポートフォリオには、海底ケーブルシステム、静止衛星、地上長距離メトロアクセスファイバー、無線ネットワーク、データセンターのほか、これらのネットワークが提供するサービス(企業向けコネクティビティ、SD-WAN、フィンテック&ヘルステックソリューション、データスイッチングなど)が含まれる。

先ごろ1億2,000万ドルで3番目のファンドのクローズ(第一回)を完了した同社は現在、4億ドル以上の資金を運用しており、ICTに特化したアフリカ最大のプライベートエクイティ投資企業の1つとして存続している。

アフリカのデジタルインフラのためのプライベートエクイティの必要性

過去20年の間に、アフリカでは光ファイバーや海底ケーブルなどのブロードバンドやデジタルインフラの整備が進められてきた。こうしたプロジェクトは主に民間企業が資金を提供しており、アフリカ大陸におけるインターネット普及率の急速な増加に貢献してきた。

しかし、このようなインフラ適用をオフライン人口にまで拡大するのは、依然として困難な課題である。今回のパンデミックは、デジタルインクルージョンを推進するために多くの対策を講じる必要があることを今一度認識させるきっかけとなった。

それにも関わらず、アフリカ政府はインフラ投資に消極的で、デジタル投資にかける費用は、先進国の国内総生産(GDP)平均3.2%に比べ、わずか1%でしかない。

そのため、2030年までにサハラ以南アフリカにおけるデジタルアクセス率向上に要する資金1,000億ドルの半分以上を、プライベートエクイティファーム等民間セクターからの投資で補うことが期待されている。

光ファイバーケーブルの敷設。 Convergence Partners社はこれまで、地上長距離、メトロ、アクセスファイバー、その他ブロードバンド/ネットワークインフラに投資してきた

アフリカのインフラに対するプライベートエクイティ投資は、過去10年間で増加している。2012年から2015年にかけて、アフリカにおけるPEのインフラ資金調達案件の総額は116億ドルまでに達した。

高品質のブロードバンドへのニーズが高まる中、デジタルアクセスがアフリカでの投資機会を提供し続けることをDoyle氏は期待する。しかし、海外の個人投資家にこの地域への資金提供を説得するには、マクロ経済が依然として大きな壁としてたちはだかる。

「マクロ経済下では、不安定な現地通貨や政治的リスクがあるアフリカ市場は、プライベートエクイティの投資対象として厳しい見方がされるのです。」とDoyle氏は続ける。「しかし、幸いなことに、グローバルな開発銀行や開発金融機関が、アフリカ大陸のデジタルインフラに資金を投入する必要性とその重要さに理解を示してくれています。」

Convergence Partners社のファンドの主な投資企業は、英国CDC GroupWorld Bank’s IFC、米国 International Development Finance CorporationEuropean Investment Bankなどの多国間開発金融機関(DFI)やグローバル開発銀行である。

CPDIFは、最終的に2億5,000万ドルから3億ドル規模を目標としており、既存ファンドの戦略をベースに、デジタルインフラのエコシステムにおける新たな成長テーマに焦点を当てていく。

「3番目のファンドからの投資は、ファイバー、ワイヤレス、データセンター、タワーなどのインフラニーズに加え、5G、クラウド、モノインターネット(IoT)、人工知能(AI)、フィンテック、ネットワーク仮想化などが対象となります。」と、先ごろの声明に記されている。

World Economic Forumによると、通信、クラウド、IT業界の共同構築による近代的で開かれた5Gインフラは、世界的に生じているデジタルデバイドの解消に役立つとされている。

Convergence Partners社は、近い将来、6億ドルの運用資産を目指しており、ヨハネスブルグとラゴスに加えて、ナイロビにも新しいオフィスを開設する予定だ。

「弊社は、大陸のほぼ全域に投資を行っています。」とDoyle氏は言う。「インフラ整備に注力してデジタルインクルージョンを加速させるためには、サハラ以南のアフリカすべての地域に足を踏み入れる必要があるのです。」Convergence Partners社は、2003年設立当時のコアチームを維持しており、これはDoyle氏によれば「かなりユニーク」なことだという。適正な資本展開と優れたリターン、ポジティブな社会的影響、強力なコーポレート・ガバナンスに加え、この点が投資家にとって魅力的な判断材料となっていると、同氏は付け加え話を結んだ。