
ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領の家族は、長年にわたり、パナマや英領ヴァージン諸島などのタックスヘイブン(租税回避地)に、オフショア企業を秘密裏に所有していたことが、「パンドラ文書」と呼ばれる最新のリーク文書公開により明らかになった。
ケニヤッタ家は、1963年のケニア独立以来、同国の政治を支配してきた。数十年にわたって蓄積された、巨大な政治力に加え、金融サービス、ホスピタリティ、農業、メディアなどの分野でも大きな利益を得ており、国内で最も裕福な一族の一つとされている。
2018年、ケニヤッタ大統領はBBCへ向けて、「汚職と戦い、透明性を促進する」という意向を表明しつつ、一族の財産については国民の間では知られたところであり、法律で定められた通りに資産を申告していると語っていた。
しかし、先ごろ、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)、Finance Uncovered、Africa Uncensoredなどの報道機関は、ケニヤッタ家が所有する、秘密のオフショア資産についての調査結果を公表した。
これらの秘密事項は、オフショア企業を専門とする、14の法律事務所やエージェントから流出した約1,200万件の書類から発見された。そして、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手したファイルを世界規模の調査の一環として、ジャーナリスト600人以上が約2年間かけて調べた。
「パンドラ文書」では、10以上のオフショア企業や財団に、大統領自身を始めとしたケニヤッタ一家の7名が、様々な形で関与していることが発覚した。ケニヤッタ家のオフショア投資には、3,000万ドル相当の株式や債券を保有する会社も含まれる。
史上最大のリーク
「パンドラ文書」は、過去5年間にわたるオフショア資産の、最新かつ最大のデータリークファイルである。
2016年、モサック・フォンセカ法律事務所から、2.6テラバイトのデータ「パナマ文書」、翌年には、1.4テラバイトの「パラダイス文書」が流出した。
「パンドラ文書」のデータ量は前述の2つの流出文書を上回り、2.94テラバイトに相当する。情報源もベトナム、ベリーズ、シンガポール、バハマ、セイシェルなど、これまでよりもはるかに広範囲に渡るオフショアプロバイダーからリークされたファイルなのだ。
「パンドラ文書」は、現旧大統領、首相、国家元首を含む世界各国のリーダー35名が保有する、秘密のオフショア資産についての情報もリークしている。
「パンドラ文書」で報告されている各国の首脳には、ガボンのアリ・ボンゴ・オンディンバ大統領、コンゴ・ブラザビルのデニス・サッス-ングェッソ大統領、ヨルダンのアブドラ2世国王、トニー・ブレア元英国首相などが名を連ねている。
また、117カ国336名の大物政治家や高官、更には閣僚、裁判官、市長、軍人などが、タックスヘイブン(租税回避地)の約1,000社に及ぶオフショア企業に関与していることが判明した。
今回のリーク報告では、100人以上の富裕層をはじめ、著名人、ロックスター、ビジネスリーダーなどの名も挙げられている。
世界各国の富裕層は、タックスヘイブンで富を隠し、場合によってはほとんど税金を払わずに済ませている。また多くは、実体のないペーパーカンパニーを利用して、不動産やヨットなどの贅沢品や、隠し銀行口座、美術品などを保有している。政治家にとっても、国から横領した資金を隠す温床となっている。
明るみに出された他のアフリカ諸国
「パンドラ文書」により、他のアフリカ諸国の関与も暴かれた。
ナイジェリアは、ピーター・オビ前アナンブラ州知事をはじめとする、10名に及ぶ政治家、同じアフリカの主要産油国であるアンゴラは、9名の政治家が関与していた。
コートジボワールの政治家5名と、ガーナの高官3名は、外国人エージェントの助けを借りて、国から横領した疑いのある資金を隠していた。
チャド、ケニア、南アフリカ、ジンバブエ、コンゴ・ブラザビルはそれぞれ政治家2名、ガボンは3名、モザンビークは1名が関与していた。
ケニヤッタ大統領のスポークスマン、Kanze Dena Mararo氏は、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)による「パンドラ文書」のリーク報告について、疑惑に対する異議を唱えることもなく、次のようにコメントした。「こうした報告書は、財務情報の透明性と開放性を高めるためにも必要であり、ケニアのみならず、世界各国でも大きな役割を果たすことだろう。」
