DeFi(分散型金融=Decentralized Finance )は、旧来の政府機関や企業による中央管理を廃するだけでなく、世界の従来型商取引や中央管理システムによる制約からの脱却というチャンスをもたらす可能性をひめている。
DeFiという言葉は、Telegram上のソフトウエア開発者や起業家のコミュニティ活動から生まれた。ブロックチェーンを利用することで、プロセスの自動化を実現し、従来の金融機関を仲介することのない個人を重んじる新しい金融システムの名称は、と模索した結果そう名付けられたのである。
ブロックチェーンとは、銀行や政府機関、事業会社などの第三者を介さずに金融取引を行うことができる透明性の高い分散型台帳である。
ビットコインは分散型の方法で世界中に支払いを送金できるが、DeFiはイーサリアム上のブロックチェーンで動く。
それは、中央管理者を介在させずに貸し借り、取引、資金調達などの重要な金融サービスを提供するということにより、いつでもビジネスのやり方を変えることができるというDeFiの可能性を十分に物語っていることになる。
まさにその名が示す通り、DeFiの大原則は「分散化」なのである。
DeFiがユーザーに課す料金から提供する金融商品まで、第三者やボトルネックに左右されずに意思決定やガバナンスをDeFiで行われる。
DeFiと従来の金融システムとの違いは、直接民主主義と代表制民主主義の違いに例えることができる。
ただし、国民の大半が貧困におかれたままという政治的・経済的なボトルネックをもつ黒人が多い国では、若者が富を集める手段としてDeFiを活用している。
ひとり、あるいは少人数のグループからDeFiを利用し始めると、それがコミュニティへと発展することもある。
このようなコミュニティを自律分散型組織(DAO)と呼ぶ。
これは、WhatsAppやTelegramなどのソーシャルメディアプラットフォームに出現したピア・ツー・ピア(P2P)の仮想通貨取引グループである。
今回は、アフリカの未来における経済を解放するDeFiの役割について紹介する。
DeFiは黒人にとって魅力的な存在
アメリカのミュージシャン、Kanye West氏は、ビットコインのような分散型金融が、いまだに奴隷制度を基盤とした選挙人団に支えられている現在の政治権力に取って代わる、次のフロンティアを創造できると考えている。
米連邦準備制度理事会(FRB)が2019年に発表した報告書によると、白人世帯の資産の中央値は、約18万8,200ドルで、これは資産から負債を引いた額を示すだけでなく、経済的な後退を乗り切る能力も反映している。
そして、この数字は、黒人世帯の資産中央値の約8倍に相当するものだ。
他の推計では、さらに厳しい未来が描かれている。
この傾向が続けば、2053年には黒人世帯の資産の中央値はゼロになってしまうであろう。
DeFiや仮想通貨は黒人たちのより良い未来への鍵となると彼ら自身が確信している。
だから、彼らが中央管理による仲介のないシステムへと逃れようとするのは当然のことなのだ。
そこで登場したのが、資産を黒人の手に取り戻すことを目的とした新たな黒人経済コミュニティ、Crypto for Black Economic Empowerment(CBEE)である。
Crypto Black Wall Streetの愛称で呼ばれるCBEEは、6大陸20か国以上から集まった黒人とアフリカ人仮想通貨リーダーの共同体であり、コミュニティ内で知識、リソース、資本を共有することで、共に急成長を遂げている。
コミュニティ結成から1年足らずで、CBEEのメンバーは、非代替性トークン(NFT)を用いて、仮想通貨投資のポートフォリオを7,500%増加させ、世界で最も高い収益を上げており、アート、ベンチャーキャピタル、スポーツ、政策など幅広い業界で旗手となっている。
アフリカ人は、何世紀にもわたり数十億ドル規模の経済を牽引してきたにもかかわらず、奴隷制度や人種差別による搾取の後、あらゆる場面で不利益を被っている。
現在、CashApp、TikTok、Clubhouse、Apple、Tesla、Googleなどのハイテク企業が、黒人やアフリカ人の文化や知的財産を活用して利益を得ているにもかかわらず、アフリカ人はその恩恵に直接浴することができない。
しかし、CBEEはこの状況を変えようとしている。
また、有色人種による仮想通貨への投資に関する調査結果は、他の人種グループと同等、あるいはそれを上回るペースで投資していることを示している。
米国での調査によると、仮想通貨を所有している人の約44%が有色人種であることが明らかになった。
また、別の調査によると、米国では黒人投資家の30%、ヒスパニック系投資家の27%が仮想通貨を所有しているのに対し、白人投資家では17%にとどまっている。
アフリカは世界で最も速く仮想通貨を採用していることをここで今一度念押ししておく。
DeFiはアフリカの経済的解放の先駆者となるか?
DeFiはまだスタート地点に立ったばかりである。2018年に用語が生まれてからわずか3年、分散型ステーブルコインである「DAI」が誕生してからまだ7年しか経っていないのだ。
しかし、CBEEは今後100年で1億人の黒人・アフリカ人に普及させたいと目論んでいる。
同じ志をもつ人々のソーシャルコミュニティが設定するルールや規則をスマートコントラクトと呼ばれるプログラミングコードに埋め込み、ガバナンストークンを発行することができるという自律分散型組織(DAO)を形成することを意図している。
従来の企業と比較すると、DAOは構成員一人一人によって自律的に運営される民主化された組織となる。
DAOのガバナンスはコミュニティに基づいて行われる。
全てのDAO構成メンバーは、変更を実行するための決議権を持つ必要がある。
DAOは、近年直面しているセキュリティ、合法性、構造上のハードルがあるにもかかわらず、一部のアナリストや投資家は、この種の組織がいずれ脚光を浴びることになるだろうと予想している。
ひょっとすると、社会全体がブロックチェーンを利用して、自動化された安全な環境で、管理者なしにビジネスを行えるようになり、世界中の商取引のあり方が変わることになるかもしれない。
だからこそCBEEは、投資資金、メディア、コミュニティ、アドバイザリーサービスの提供など、さまざまな方法でこの長期的に渡るレガシーを構築している。
ベンチャーキャピタル企業、Audacity VCは、仮想通貨やDeFiに特化したアフリカの市場で、黒人やアフリカ系起業家が率いるスタートアップに最大10万ドルを投資している。
このコミュニティは、わずか数ヶ月で多大なインパクトをもたらし黒人がDeFi上の帝国を築けることを明らかにした。
このコミュニティに参加している企業や起業家の価値は2億5千万ドルを超えるとインタビューで語るCBEEの社長であり、Audacity VCの創設者でもあるErikan Obotetukudo氏は、次のように続けた。
このグループの参加者は、お互いに助け合いながら何百万ドルも稼いでいます。一人が誰かに何かするよう助言すると、その誰かのポートフォリオは70倍になります。その結果、仮想通貨のポートフォリオは、1万ドルから75万ドルになるということです。同じ経済圏にいるグループで、お互いに著しくレベルアップしているのです。
Michael Johnsonという黒人少年が開発した非代替性トークン(NFT)を公開したところ、1分間で100万ドルの売り上げを達成したのもCBEEの手助けによるものである。
Obotetukudo,氏は、DeFiがアフリカの経済的解放の鍵という希望のきっかけとなったさまざまなエピソードを語ってくれたが、その中でも特に印象的だったことがある。
以前、ヘルスケア業界で研究者として働いていたObotetukudo,氏は、ある老婦人から「マラリア予防薬を配るようなことしかしてないじゃないか」と叱責を受けたことがある。
その老婦人は、彼女に向って「欧米に戻って、根本的な解決策、つまりインフラをなんとかする方法を見つけなさい。」と言ったそうだ。 そして、彼女はそれを実行した。
黒人やアフリカ系の人々が、自らの手で自らの未来を切り開いていく姿は、実に素晴らしい光景である。新体制へようこそ!
