長いこと停滞していたナイジェリアのクラウドファンディングへの規制であるが、このほどSEC (Securities and Exchange Commission証券取引委員会)が新たに、事業者に1億ナイラの資本条件を定めることとした。

Sim ShagayaのuLessonが750万ドルを調達した際、そのほとんどが4カ所の投資先から集められたものであったのとは対照的に、Eversendの「アフリカ人のためのネオバンク」は、投資型クラウドファンディングを通じて不特定多数の人々から100万ドルを調達することができた。

クラウドファンディングとは、人や企業が1~2人の個人から大きな金額を調達するのではなく、多数の人々から小額資金拠出を募ることで資金を得ることである。株式投資型や貸与型クラウドファンディングは、中小企業が資金調達するための、理想的かつ典型的な方法でもある。

しかし、ここ数年ナイジェリアでは、クラウドファンディングへの規制が求められている。これは、ライセンスを取得していないマーケットオペレーターによる不正行為から出資者を守らなければならない事情がその背景にある。かなりの数に上る企業が投資会社や商社と称し、何千人もの出資者からお金を集めたまま、行方をくらます。このような実態を防止し、本当に資金調達を必要とする企業のための明確なガイドラインを示そうとするものだ。

SECの新クラウドファンディング規制

2020年4月、SECは、投資家とクラウドファンディング事業者向けのガイドラインを含む公開ドラフトを公表した。その必要性についてはここ何年も叫ばれてきたが、実際にガイドラインを作成するのはこれが初の試みとなった。

このドラフトは正しい方向への第一歩であり、SECは先月になって漸くナイジェリアでのクラウドファンディング事業に関する新しい規制の公表に踏み切った。ドラフトにあるルールの多くを反映させ、眉を顰めたくなるような実態も明らかにされた。

最低2年の事業実績をもつナイジェリアのMSME (Micro, Small & Medium Enterprises 中小零細企業)のみが、登録されたクラウドファンディング事業者の運営するプラットフォームを通して資金調達できる。そして、この基準を満たして初めて、資金調達額が決められることになる。中規模企業へは1億ナイラ以下、中小企業は7,000万ナイラ、零細企業は5,000万ナイラ以下と各々金額が設定されている。

興味深いことに、この制約はCIP(commodities investment platforms)には適用されない。CIPは、プロジェクトを支援することで、そのリターンとして投資家が農産物や商品の提供を受けるタイプのクラウドファンディングである。

クラウドファンディングプラットフォームの規制

投資ベースのクラウドファンディングを目的としたすべてのプラットフォームは、その推進、運営、起案者とナイジェリアからの出資者のインタラクションの維持と機会を提供し、クラウドファンディング事業者として正式に登録された者によってのみ運営されるものとする。

– クラウドファンディングプラットフォームに関するSEC一般規定

SECで登録、取引、マーケットインフラ、イノベーションを担当する責任者、Timi Agama氏は、ガイドライン設定の理由は出資者の安全にあるとTechCabalに語った。

新しい規制は、PiggyVest, Pettysave, FarmCrowdyThriveAgricなどの事業者がクラウドファンディング事業者として登録する必要があることを意味する。昨年の規制ドラフトから保持されたもう一つの要件は、1億ナイラの最低資本条件である。PiggyVestはマイクロファイナンス銀行のライセンスを保有しているので、問題はないだろうが、中小企業は資本条件を満たすために統合合併の必要に迫られるかもしれない。

しかし、SECはどの企業の合併についても言及しない。Timi Agama氏によると、「それは飽くまでビジネス上で決定されることであり、私たちは必要最低条件を提示しているに過ぎないのです。時代を超えても残るものは何かを見極め、どのようなテクノロジーが求められどうのようにして購入されるのか、またそれが持続可能なものなのかを注視します。つまり、守るべきものを、サステナビリティの観点から見出しているのです。」

新しい規制に関する限り、スタートアップはまさにその状況をよく把握していることがわかる。PiggyVestの共同設立者であるOdun Eweniyi氏は、投資対象「Investify」に大きな変更は生じない、と述べた。「継続に必要なライセンスなら、なんでも取得します。そのために、現在、法務チームが判断をくだしており、必要に応じて申請することになります。」

プラットフォームにおけるビジネスの合法性の検証から、出資者の教育、リスク開示など、クラウドファンディング事業者にはより多くの責任が生じる。SECの新たなクラウドファンディングルール(Rule 12)には、「クラウドファンディング事業者は、今後プラットフォームを利用した資金調達者に対してデューデリジェンスを行う必要がある。」と記載されている。 この規定は、出資者に対して義務の不履行があった資金調達者に、事業者は何らかの責任を負うことを保証するものとなる。投資詐欺が「投資の波」を利用し始めるにつれて、これはより重要事項になるであろう。

投資詐欺の排除

過去何年もの間、投資会社を装った企業がクラウドファンディングスキームを利用してナイジェリア人からお金をだまし取ってきた。なかにはMMM (*1)のように、投資目的も明記せず、簡単にポンジ・スキーム(*2)とわかる例もある。

しかし、MMMの崩壊以来、投資詐欺の手口はより巧妙になってきている。何をどう取引するかについての情報がほとんどないにもかかわらず、多くが正当な出資者やトレーダーを装うのだ。

MBA Forexという企業からお金を持ち逃げされたと主張する人たちの経験談がアップされたナイラランドスレッドは、投資詐欺をクラウドファンディングから締め出す必要性を示している。新しいSECの規制では、特定の事業計画を持たない、もしくはブラインドプール型の企業は、クラウドファンディングプラットフォームを通じて資金を調達することができないとしている。

問題なのは、「複雑な構造」が一般の人々から資金調達を遠ざけてしまうことなのだ。「複雑な構造とは、どこに有益なのかその実体を瞬時に特定できないようにすることで、所有者や管理者の透明性を持たない存在」と規制で述べられている。

出資者の保護

ナイジェリアの投資問題の一つは、出資者の多くがそれに伴うリスクに気づいていないということである。それ故、SECがすべてのクラウドファンディング事業者に対して、出資者から必ずリスク承認フォームに同意を得るよう徹底させている。それにより、投資した金額すべてまたはその一部を失った場合、プラットフォームは責任を負わない旨と投資におけるリスクを出資者が理解したと認識される。

不信感をまねくかもしれないが、規制にはまた、出資者が証券購入のオファーや同意を引き下げる権利を持つと明記されている。出資者は、オファー締切りの48時間前までにクラウドファンディングプラットフォームに通知するだけで、48時間以内に返金を受け取らなければならない。

また、オファー締切り前に不利につながる重大な変更が生じた場合、出資者は投資を取り消すことができる。この種の変更は、プロジェクトまたは資金調達事業者そのものになんらかの影響を与える可能性があるからである。

SEC のガイドラインの全文はこちらから

(*1) MMM 1990年代にロシアで起きた金融詐欺事件

(*2)ポンジ・スキーム Ponzi Scheme

「出資金詐欺」という、投資詐欺の一種。詐欺師チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi)の名に由来する。