オンラインで注文した商品が遅れて届いた話をしばしば聞いていたSeun*は、1ヶ月後に控えた卒業式で着るドレスを注文するなら、今がベストタイミングであると思った。

そこで、彼女はインスタグラムでうってつけのドレスを見つけ、早速ベンダーとメッセージのやりとりを始めた。支払いを済ますと、ドレスはせいぜい1週間程度で届くということであった。

だが、その2週間後、Seunはまだドレスを受け取れてはいなかった。ベンダーに問い合わせるとドレスは確かに発送されたので、心配する必要はないという返信が送られてきた。

しかし、それは杞憂では終わらなかったのだ。なぜなら、届いたドレスのサイズは間違っていた上に、オンラインで見つけたスタイルとは全く違う別物であった。この時点で、Seunの卒業式は、わずか3日後に迫っていた。

ベンダーに苦情メッセージを送ったものの、返信もなく無視されたので、もう一度、メッセージを送ろうとしたところ、Seunは自分がブロックされていることに気づいた。

Seunのこの話は、商品を製造もできず、在庫もないのにあたかもあるように見せかけるベンダーの言いなりになるしかないオンライン購買者のエピソードである。

一度痛い目を見れば、二度目は慎重になるもので、SeunはもはやInstagramでショッピングをしなくなった。今は、信頼できる「ひとつかふたつのプラットフォーム」しか利用していない、と言う。

eコマース市場は成長し続けているものの、オンラインベンダーに対する顧客からの不信感は、エコシステム全体の成長をも妨げかねない。

アフリカのeコマースフォーラムのCEO、Alastair Tempest氏によると、eコマース市場が伸び悩む原因は、低いインターネット普及率、ブロードバンドの高いコスト、オンライン取引への不安などがあげられている。

インターネットの普及やブロードバンドのコストについては、アフリカ大陸において問題視されてはいるが、オンライン取引に対する信用の欠如については置き去りされたままである。

2020年、アフリカの消費者がeコマースプラットフォームで費やした平均金額は10ドル増え、2022年までにはさらに5ドル増加する見込みである。

これは、パンデミックと実店舗の閉鎖によるところも大きいだろうが、より多くの人々がベンダーを信頼することで、どれだけオンラインショッピング市場が拡大する可能性があるのだろうか。

Maria *は、Seunと同じように、Twitterで見つけたスカートを購入したが、それを手直ししてもらうのに更にお金を支払わなければならなかった。スカートはオンラインで見たものとは雲泥の差があったからだ。

このように粗末なサービスがアフリカ全土で蔓延ることで、eコマース市場が発展から遠ざかり続けるという懸念がある。

オンラインで便利に買い物、支払いすることを後押しする一方で、いつまでも払拭できない疑問を捨てきれないのだ。利便性の真の対価とは一体いくらになるというのだろうか? *個人プライバシーの配慮から、人物名は仮名表記