金融サービス、スキル開発、仕事、ネットワーキングを通じて女性の起業を後押しするスタートアップ企業「Herconomy」は、同社のプラットフォームの拡大のため、プレシードラウンドにて60万ドルの資金調達を行ったことを発表した。
今回のプレシードラウンドには、Herconomyのコミュニティメンバー、VC(ベンチャーキャピタル)Oui Capitalのほか、Zephans & CoのCEONkiru Ayemere氏、Ernst & Youngのビジネストランスフォーメーション担当ディレクターEhi Onwudiwe氏、Diageoのリザーブ部門責任者Ope Makinwa氏、Jand2Gidiの共同設立者Ama Akpata氏など、多数のエンジェル投資家も出資を行った。「この資金調達ラウンドが始まったとき、私たちは24時間という短い時間で509人のコミュニティメンバーから570万ドル相当の出資提案を得ることができました。しかし、私たちは、事業規模の拡大に必要な60万ドルのみを受け取ることにしました。」と創業者兼CEOのIfe Durosinmi-Etti氏はプレシードラウンドを振り返った。
コミュニティの立ち上げ
2018年6月、Ife Durosinmi-Etti氏は、「Accessing Grants for Startups(スタートアップの助成金活用)」と題した、アフリカの起業家が利用できる国内外の助成金やコミュニティなど、女性にとっての「きっかけ」を紹介した書籍を出版した。この本は、同氏が数カ月間にわたって個人のインスタグラムアカウントで投稿した内容をまとめたものである。

出版から数ヵ月後の12月、Durosinmi-Etti氏は、彼女をフォローする多くのフォロワーに向けて、インスタグラムのページの作成することにした。彼女はこのページを「AGS Tribe」と名付け、女性がグローバルに様々な機会にアクセスできるコミュニティを構築した。ナイジェリアでは、無給で仕事をする女性が圧倒的に多く、男性の2倍はいるとされている。また、男性の給与所得者は65.67%で、女性の給与所得者の34.33%を大きく上回っている。
Durosinmi-Etti氏はTechCabalのインタビューに対し、「女性がチャンスや助成金を得ることや、同じ志を持つ仲間とつながることができる場所を作りたいというのが私の想いです。私たちの取り組みの価値を知った人々がフォローしてくれて、こうした機会の創出に関する議論が広がっていきました。そのとき、これは単なるオポチュニティボードではなく、コミュニティであると気づきました。」と語った。
2019年に、AGS Tribeは数千人のフォロワーを抱えるほど大きく成長した。その結果、Durosinmi-Etti氏にとって、ホームページとコミュニティの整備が本業となり、人々が気軽にアクセスできる有料コミュニティプラットフォームを立ち上げることを決めた。当初の計画では、ウェブ上でプラットフォームを立ち上げる予定だったが、2019年12月6日のローンチ日にプラットフォームがクラッシュしたため、計画がとん挫することとなった。その日の夜即座に、コミュニティはプラットフォームをTelegramグループ(メッセージアプリ)に移し、月に5,000ナイラ(12ドル)、または年に50,000ナイラ(120ドル)で人々にプラットフォームを提供することとなった。
コミュニティの立ち上げから1年後、AGS Tribeは1,500人以上の有料会員を抱えるコミュニティに成長した。彼らはコミュニティで様々な機会を得ることができるだけでなく、投資や金融、性的暴力や健康問題など、さまざまなテーマに焦点を当てたスキルアップのためのワークショップを毎週開催している。
しかし、AGSチームはさらなる困難に直面することになった。規模が拡大するにつれ、Telegramのコミュニティ上で交わされるメッセージの数が膨大なものとなった。その結果、コミュニケーションの管理という課題が浮き彫りになり、コミュニティの更なる規模拡大の妨げとなった。Durosinmi-Etti氏は、「1つのグループに多くの参加者が集まったことにより、何時間かアクセスしないでいると、再びアクセスした際に、コミュニティに何千件ものメッセージが表示されていました。チャンスはコミュニケーションの中で生まれるため、欲しい情報を見つけるために、すべてのメッセージに目を通さなければならないこともあり、解決策を見つけなければなりませんでした。」と当時、直面した課題を振り返った。
Herconomy
新型コロナウイルスにより起きた世界的な問題の一つに、賃金格差があった。ロックダウンによって何百万人もの人々が職を失い、その中でも女性へのインパクトが大きく、男性よりも100万人近く多い550万人が影響を受けた。加えて、ロックダウンの影響で、あらゆる場所で在宅勤務や在宅教育を義務付けられたことにより、多くの女性の家事等、家庭内での責任の増加に直面した。
そこでAGS Tribeは、アプリを立ち上げることで、他の機会にも視野を広げる判断をした。

同社はサービスを提供する中で、すべての女性が会費を払えるわけではないことに気付き、より多くの女性にアプローチしたいと考え、アプリをリリースする決断を行った。毎月会費を払うことができない人を対象に、モバイルアプリ上で、無料会員のオプションを提供している。このアプリは3段階の会員体系になっている。コミュニティやオポチュニティ・ボードに無料でアクセスできるフリーミアム会員、毎週開催される能力開発ワークショップ「ライトボックス」にアクセスできるシルバー会員、そしてRaddison Blu Lagos、カタール航空、アディダスなど60以上のブランドから割引を受けられるコミュニティのアフィニティ・ネットワークにアクセスできるゴールド会員がある。さらに、ゴールドメンバー(年間120ドルを支払う人)向けの追加特典が付いている。また、求人情報も掲載し、最終的にナイジェリア初のAmazon EU地域における採用パートナーとなった。
前進するプロジェクト
現在、Herconomyのコミュニティには15,000人以上が参加しており、そのうち20%が有料会員だという。同社は、今後、コミュニティメンバーに金融サービスを提供することを計画しており、所属するメンバーにとって更なる利益になると考えている。これまでに、複数の貯蓄プログラムを実施し、少なくとも500人の女性が合計で10万ドル以上の貯蓄に成功している実績もある。今回の資金調達により、同社は会員がより高い利子を得ることができる貯蓄サービスも提供する予定があるという。
当初、外部からの資金提供を受けて来なかったHerconomyだったが、最近は、コミュニティメンバーのために助成金やギフトを提供してきた様々な個人や企業からも資金を得ている。同社はこれまでに、年間助成プログラムの一環として、42人に30,000,000ナイラ(7万1,600ドル)の助成金を支給したと発表した。
「Herconomyの構想を何人かの投資家に提案しましたが、初めのうちは、良い感触は得られませんでした」とDurosinmi-Etti氏は言う。大きな転機となったのは、Startup Bootcamp Acceleratorプログラムに選ばれたことだった。プログラム期間中、アドバイザーからのアドバイスを通じ、ビジネスモデルのブラッシュアップを行った。同氏は、「女性が主導するスタートアップの多くが簡単に資金を得られないことに気づき、自分たちのための投資を受けやすい環境を作ることにしました。」と当時を振り返った。8月に同氏は自身のInstagramのストーリーを通じて、Herconomyへの投資に興味がある人がいないか呼びかける投稿を行った。その結果、その日のうちに、「何百もの反応」が投資に関心のあるコミュニティメンバーから寄せられた。
「最終的には、509名の方から570万ドルのご支援をいただきましたが、実際に必要な資金は60万ドルでした。また、すべての方が最低出資額の2万ドルの投資ができないと気づき、そういった方が対象の特別目的会社(SPV)を設立することにしました。コミュニティメンバーがこの資金調達に参加することが非常に重要だと考え、特別目的会社(SPV)設立の判断をしました。GetEquityで非公開のディールルームを作り、投資に意欲的な方々を招待しました。」とDurosinmi氏は語った。この資金調達ラウンドには、Oui CapitalなどのVCも含まれているが、同社の出資者の大半は、Herconomyのブランド構築に関心のあるコミュニティのユーザーからのもので、そのうちの7割は女性からだった。
Durosinmi-Etti氏は、「すべてがうまくいきました」と今までの活動を振り返る。「女性が投資しやすい環境を実現することができました。Herconomyでも発信している、女性起業家に投資するというマインドセットを作ることができていることに喜びを感じています。」と語った。Oui Capitalのマネージング・パートナーであるOlu Oyinsan氏は、今回の投資について、「我々は、アフリカにおけるコンシューマー・フィンテックの未来に、コミュニティが非常に重要であると考えています。同社は、コミュニティの要素が非常に強く、また、これまで金融サービスを十分に受けられなかった女性のために金融サービスの開発と発展に力を入れています。私たちはこの会社を非高く評価しており、このチームと一緒に事業を進めることができることを嬉しく思っています」と、Hereconomyについてコメントした。
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