第4回目となるスタートアップインタビューレポートでは、ナイジェリアのヘルスケア企業をご紹介いたします。ティーエスアイのグループ会社である日本戦略投資が最近投資したOnehealthは、オンライン薬局を主な事業として運営しています。単に薬の販売・配達だけでなく、健康コンサルティングも行っています。ひさしぶりに女性のCEOと話して、楽しく色々な面白いストーリーを聞かせていただきました。

あなたのストーリーを教えて頂けますか。Onehealthを始めようと思ったきっかけは何ですか。Onehealthとは何ですか?
私は薬剤師で、イギリスとアメリカで実務に携わってきました。アメリカからナイジェリアに戻った後、ある時、喘息(Asthma)の薬が必要になったのですが、オンラインでも手に入らず、アメリカにいる妹に薬を送ってもらうことになりました。ナイジェリアの状況は購入者にとってそんなに不便だということを知らなかったので、一般の購入者が便利になるよう、ナイジェリアでオンライン薬局を開くことを思いついたのです。
私の起業に至るストーリーですが、2019年にビジネスコースを取って、オンライン薬局に適したビジネスモデルを考えるために、MBAを取得しました。実は、MBAコースに入学した同時期にOnehealthをスタートしました。色々と学び、問題点を洗い出した結果、単にウェブサイト上で薬を買うだけでなく、メッセージや薬の使用方法に関する質問、健康への不安などを質問できるECプラットフォームを本格的に展開することにしました。ECプラットフォームの開発を加速させ続け、2020年8月にMVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)を正式に取得しました。その後、さらに機能を追加しています。
当初はB2Cに特化し、顧客の緊急のニーズに応えようとしましたが、現在はB2Bモデルにも拡大し、患者に処方箋を送る必要がある病院、医師、HMO (Health Maintenance Organisation, 健康維持組織) にサービスを提供しています。その仕組みは、APIで接続されており、診察から終わると、薬の注文が私たちのプラットフォームに送られ、私たちが患者さんに薬を届けるというものです。
私たちは繰り返す薬の問題を解決したいのです。在庫切れで薬が間に合わない、偽造品だった、いつもの薬が効かなくなったから別の種類の薬に変えたいなど、患者さんの悩みはたくさんあります。そこで、さきほどお話ししたパートナーとの連携に加え、処方箋管理サービスを行うことで、ユーザーにend-to-endの効果的なサービスパッケージを提供し、リカレント売上を得ることにしたのです。
Onehealthは、ナイジェリアの顧客に医療ソリューションを提供するデジタルヘルスケアプラットフォームであり、医薬品の提供だけでなく、患者のケアや薬の管理、フィットネスや健康全般のアドバイスなど、人々が自分自身をケアできるようなサービスを提供しています。
オフラインストアがありますか。
あります。オンライン薬局を開設するためには、オフラインの店舗を持つ必要があるからです。それだけでなく、オフラインの拠点を持つことは、オフラインのマーケティングにも役立ちます。実際に店舗があると、人々はより信頼を寄せる傾向があります。
ユーザーは、Onehealthとパートナー契約を結んでいる有資格の医師や専門家に相談することができます。では、あなたはどのように医師をOnehealthに参画するよう説得したのでしょうか。
現在も医薬品の配達を主な業務としており、今年からコンサルティング事業を開始したところです。医師が私たちのプラットフォームに参画してくれることは難しいことではありませんが、長期的にコンサルティングの質をどう維持するかが課題です。医師は自分の空いている時間に相談に乗ることができ、お金をもらっている以上、拒否することはありません。
Onehealthのウェブサイトを見たところ、「ヘルスカリキュレーター」という機能がありましたね。このツールは、社内のエンジニアチームが開発したのでしょうか?外注費がかさむので、それを削減できると良いですね。
そうです。全て自分たちで開発しているということをプライドがあります。

現在、OnehealthのビジネスモデルはB2Cが中心で、最近、B2Bを始めていますね。すでに代理店やメーカーとの提携で収益を上げているのでしょうか。
今のところ、メーカーには30日間のクレジットを付与しているので、私たちは何も支払わなくていいということなのです。将来的には、メーカーの製品を宣伝し、その費用を請求できるところまでウェブサイトを発展させれば、追加収入を得ることができます。私たちのウェブサイトはすでに毎月6万人の訪問者があるので、これは実現できると確信しています。
偽造医薬品問題への対応、混入防止はどのようにされていますか。
大手メーカーを中心に、4~5社に絞っています。また、定期検査を行い、バイヤーからアンケート結果を収集しています。
Onehealthは、性別ごとのカテゴリーと、セクシャルヘルスと精神的健康のカテゴリーを設けているのが興味深いですね。ナイジェリアをはじめ、アフリカでは、性教育や精神的健康について、どのような現状があるのでしょうか。このテーマについて、人々は心を開き、専門家の助けを求めようとするでしょうか。
オンラインなら、そうですね。問題は守秘義務だと思うんです。特に女の子は、このような話題について声を上げると恥をかくことを恐れています。これはまさに、私たちがお客様を見ているところです。私はOnehealthを、人々が安心して自分の健康、特に性的な健康について何でも打ち明けられるようなコミュニティーにすることを目標としています。自分自身だけでなく、母親や父親、友人もケアできるようになるはずです。
このようなコミュニティを作りたいと思うのは、とても立派なことです。問題は、オンラインでも助けを求めるのに適切な場所を見つけないことですね。機密保持が全てではありません。情報は正しくなければならないし、サービスは信頼できるものでなければなりません。多くの人がインターネット上の誤った情報を見てしまい、助けを求めることができない、あるいは、どのように探せばいいのかわかりません。それは本当に有害ですね。
その通りです。私たちは自分たちが何をしているか十分知っているからこそ、こうした特定のお客さまに自信を持って支援を提供できるのです。私たちは多くの人々を助けてきており、彼らは私たちを一度信頼すると周りにも広めてくれます。
それは素晴らしいことです。なぜ、このテーマで特に質問したかというと、私の男友達の実話からなんです。ある時、彼は彼女ではなく女友達のために緊急避妊薬を買おうとして薬局に行きました。その時、彼は薬剤師からとてもおかしな顔をされ、今までで最悪の経験だったと言います。そろそろ、この話題について、人々がもっと教育され、オープンマインドになる時期なのではないでしょうか。
そうなんです!こちらでも同じようなことがよくあります。若い人たちは怖くてどこにも相談に行けないから、避妊や妊娠のタイミングなどについて私たちとオンラインでチャットしています。ヘルスカリキュレーターはそのためのものです。多くの人が尋ねてくるので、「じゃあ、自動でできるようにしよう」と思ったんです(笑)。人と話さなくても、自分の体をナビゲートしてくれる高度なデジタルツールがあれば、恥ずかしがることもなく、さらに安心できますよね。
私の出身地である東南アジア地域では、このようなサービスはほとんど見かけません。日本では、テレヘルスの相談窓口を見たことがありますが、セクシャルヘルスはその中の1つのカテゴリーです。しかし、そこでも多くの人が助けを求めているかというと疑問で、むしろ自分自身で物事を解決しようとし、時にはそれが悪化することもあるのです。だからこそ、私はあなたとあなたのビジネスを私の地域に紹介することに非常に興奮しています。特に若い人たちには、実際に助けを求めている人たちがいることを知ってもらい、恥ずかしがったり、自分一人で抱え込んだりする必要はないというメッセージを伝えたいのです。
もちろんです。私も、顧客がどのような悩み持ち、どのような行動をしているのか、もっと知りたいと思っています。
私たちのような海外投資家に、どのような期待をお持ちですか。私たちはどのようなサポートを提供できるのですか。
(笑) どんなことでも感謝です。アフリカ以外の市場、具体的には日本市場について、もっとインサイトを深めたいと思っています。私たちはナイジェリア国外に進出し、製薬会社や航空会社など、海外のパートナーを探しています。さらに、まだアイデア段階ですが、ナイジェリアの貧しい女の子たちを助けるために、自分たちで生理用品を作ろうと考えています。
最後の質問です。Onehealthを設立にあたって、何らかの困難に直面したことはありますか。また、仕事とプライベートのバランス、精神面のケアはどのように行っていますか。起業家仲間にアドバイスをお願いします。
どこから話せばいいのでしょう(笑)。スタートアップはハリウッド映画のような華やかなものではありません。安定した収入のあるフルタイムの仕事を辞めなければできないこともあり、すごく大変です。だから、自分がやろうとしていること、それに伴う問題を100%好きだと確信する必要があると思います。そして、どんなに忙しくても、家族との時間、友人との時間、人間関係を大切にすること、ですね。
これは非常にリアルで貴重なアドバイスです。私もこのアドバイスを参考にさせていただきます。ありがとうございました!
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