昨年、アフリカのスタートアップエコシステムは、革新的な新興スタートアップと莫大な投資で記録的な数字を打ち出し、一巡したと見てよさそうだ。イノベーションが社会的、経済的、技術的な進歩の証であるとすれば、アフリカのスタートアップエコシステムは発展したと言えるだろう。

そこで、アフリカで生まれた数多くの優れたスタートアップの中から、今年大きく成長すると予想される、注目すべき11社を厳選した。

フィンテックと仮想通貨分野

1. NFTfi―(南アフリカ共和国)

2020年2月にStephen Young氏によって設立されたNFTfiは、分散型ピアツーピア(P2P)仮想通貨のローンプラットフォームで、ユーザーは自身のNFTを担保に、他のユーザーから融資を受けることができる。

プラットフォーム上では、借り手が、自身のNFT通貨で融資を申請すると、他のユーザー(貸し手)が様々な利息や返済条件を提示し、仮想通貨の融資入札が開始される。借り手となるユーザーが、オファー(提案)を承諾すると、wETHまたはDAIの流動性が確保でき、NFTはローン期間中、二重に査定されたエスクロー・スマートコントラクトに転送される。期限内に返済すれば、NFTは返却され、債務不履行の場合は、貸し手は借り手のNTFを差し押さえることができる。

これは、NFTの潜在的な価値を顕在化させる良いイノベーションと言えるだろう。NFTを他人に売却することなく、資産の流動性を高めることができることを想像してみて欲しい。

2. Lazerpay (ナイジェリア)

仮想通貨が広く受け入れられ、普及し続けるにつれ、所有者同士で気軽に取引できる必要性が生じる。Lazerpayは、昨年11月に、Njoku Emmanuel氏によって設立され、ベータ版の提供を開始。Paystack(アフリカのキャッシュレス支払いプラットフォーム)の仮想通貨版という位置づけである。

昨年、Lazerpayは、仮想通貨、Web3サービスの構築、運営、投資を行う革新的ベンチャー企業Nestcoinから非公開の出資を受けた。上場を控えた同社は、アフリカのPaystackFlutterwaveが提供するようなサービスを、仮想通貨分野に発展させることが期待されている。

3. GetEquity (ナイジェリア)

GetEquity は、Jude Dike氏、William Okafor氏、Temitope Ekundayo氏が2021年7月に共同設立した。同社は、アフリカで現在活況を呈するスタートアップ・エコシステムに馴染みのない人たちにも、シンプルで迅速な資金調達とスタートアップ投資へ参加してもらうことを目指す。

GetEquityのプラットフォーム上で、投資家となるユーザーは10ドルからスタートアップ投資を始めることができる。スタートアップ企業は、複数のエンジェル投資家、シンジケート、機関投資家とつながりを持てるだけでなく、コミュニティや顧客から投資を募る機会も得ることができる。所有権を持つことで、高いロイヤリティのある顧客との関係性が強化される。

昨年12月時点で、同社の担当者は、すべての目標値において、100%の成長率を達成したと言う。現在、同社のプラットフォーム上に、4,000人以上のユーザーと約20社のスタートアップがリストアップされており、総額40万ドル以上が投資されている。

4. Float (ガーナ)

Jesse Ghansah氏とBarima Effah氏によって設立されたFloat(旧Swipe)は、アフリカの急成長企業向けの小規模融資、請求書、流動性管理のフィンテック企業として、2021年6月に立ち上げられた。

同社は先ごろ、CaurisTiger GlobalJustin MateenのJAM Fund、Ingressive CapitalMagic Fund、そして多くのエンジェル投資家を含む世界中の著名な投資家から株式と債券などで1,700万ドルの資金を調達している。

同社はすでにナイジェリアとケニアで事業展開しており、今回のシードラウンドにより、今年度、さらなる成長が期待されている。

5. Telda(エジプト)

Teldaは、Swvlの共同創業者Ahmed Sabbah氏とUberの元エンジニアYoussef Sholqamy氏が昨年4月に立ち上げたオンライン銀行。ユーザーは無料で口座開設でき、送金などのサービスを受けられる。また、オンラインや実店舗で使用できるキャッシュカードも利用することができ、他にも、現金引き出しや請求書の支払いにも対応している。

設立からわずか1カ月後の2021年5月には、Sequoiaを中心に500万ドルのプレシード資金を調達したことを発表。また、エジプト中央銀行(CBE)の新規制に基づき、カード発行とデジタル顧客対応のライセンスを取得した初の企業でもある。

2021年度に短期間で成長を示したことで、2022年度はさらに大きな成果を期待されている。

エドテック

6. Crayde(ケニア)

Craydelは、Manish Sardana氏、John Nguru氏、Shayne Aman Premji氏の3人が2021年3月に設立したEdtechスタートアップ。同社は、アフリカの学生が高等教育、コース選択、キャリア決定を行う際の指針として信頼性の高いオンラインプラットフォームを提供する。

Craydelは、学校、プログラム、コース選択から、出願の手続き、入学の段階に至るまで、幅広い高等教育オンラインサービスをエンドツーエンドで提供する。また、海外留学を希望する学生には、ビザ取得のサポートも無料で行う。

既にカナダ、イギリス、アメリカ、アイルランドを始め、マラウイやケニアといったアフリカ諸国の90機関とパートナーシップを結んでおり、学生は、大学と大学院を合わせて3,000以上のコースから選択することができる。

7. Edukoya (ナイジェリア)

2021年5月に設立され、12月にベータ版を提供したEdukoyaは、グーグルナイジェリア法人出身のHoney Ogundeyi氏よって設立された。同社は、生徒とその親が学習をマネジメントし、レベルの高い学習教材へのアクセスや教科指導員からのサポートを気軽に受けられる環境を整える。

同プラットフォームは、Target GlobalやShola Akindolu氏、abs Ogundeyinなど、アフリカのトップ起業家や企業から、既に350万ドルのプレシード資金を調達し、ターゲット層であるナイジェリアの中高生に効果的な教育を提供することを目指す。

創業者自身の経験値の高さと優れたチームメンバー、資金調達によって得た潤沢な資金により、今年、同社がEdtech分野で大きな成果を上げることが期待される。

ヘルステック分野

8. Bypa-ss L(エジプト)

Bypa-ssは、博士号を持つ、Andrew Saad氏によって2019年に設立され、独自製品の医療情報交換システム(*1)プラットフォームでヘルステック領域に参入。クラウド型診療所管理ソフト、HealthTagを医師に無償で提供する。

HealthTagは、クラウドデータベースと連携することで、さまざまな医療機関から収集したカルテを安全に保管し、ユーザーとなるデータ所有者がそれを利用できる。

昨年11月時点で、HealthTagカードホルダーは17,000人以上に上り、3,500人以上の医療従事者(主に診療所、薬局、研究所、放射線センター)が同社の製品を利用していることをSaad氏は明らかにした。

9. Afya Rekod(ケニア)

ブロックチェーン技術に注目し、設立されたAfya Rekodは、患者が自身の医療データを所有する権利を保有することで、アフリカ大陸内におけるシームレスなヘルスケアの実現を目指す。

Adanian Labsの共同創業者兼CEO、John Kamara氏によって、2019年に設立されたAfya Rekodは、大別して4つの独自サービスを展開している。中核となるサービスの患者のポータル、病院向けの電子医療記録システム(EHR)、医療ラボ向けの分析サービス、エボラ出血熱や新型コロナウイルスなどの慢性疾患管理ソフトなどを顧客に提供する。

電子商取引、ロジステック分野

10. Tendo (ガーナ)

Tendoは、ソーシャルコマースの起業家に対して、物流、融資、マーケティングソリューションを提供し、設立や運営コストの削減を支援するソーシャルECプラットフォーム。

Derrick Mungai氏、Evans Darbo Boateng氏、Felix Manford氏、Primerose Katena氏によって設立されたTendoは、厳選された商品カタログに加え、マーケティングツールを始めとして、取引を円滑にするための様々なツールをユーザーに提供する。販売者が指定した金額で商品が売れると、Tendoが商品の出荷を行い、原価を差し引いた利益を販売者の口座に送金する。

誰でも資本金ゼロでネットショップを始められるようなソーシャルコマース独自のソリューションが特徴的だ。Y Combinator 2022 Winter Batchにも参加し、そのポテンシャルの高さから、今後の注目株となるだろう。

11. Norebase (ナイジェリア)

2021年6月にTola Onayemi氏とTope Obanla氏によって設立されたNorebaseは、アフリカビジネスの拡大、商標出願、アフリカ大陸全域での知的財産(IP)の特許申請のためのワンストップ店舗デジタルプラットフォーム。

同社が提供するプラットフォームで、アフリカ大陸の別の国で新たにビジネスを立ち上げるために必要となる申請手続きを一括してできる。事業者登録、銀行口座開設、コンプライアンス、許認可の申請、その他の法的な手続きなど、このプラットフォーム1つで、事業立ち上げが可能。

Norebaseは、アフリカのスタートアップ業界の成長に大きな影響を与えるだろう。スタートアップの仕組みそのものまでを変えるようなプロダクトを構築する、言わばゲームチェンジャーと呼べるのではないだろうか。

(*1)医療情報交換システム(Health Information Exchange)

医療情報をオンラインやクラウドサービスを用いて、電子的に共有し、地域やコミュニティ、病院内のシステムで利用可能な状態にするシステムまたは、その団体。