Vietnam Investment Review

2020年に公布されたベトナムの投資法(The Law on Investment :LoI)と企業法(the Law on Enterprises :LoE)は、外国投資家が同国へ進出するにあたり、法的側面の基準となるものである。より有利な条件を両法律に設定することで、外国直接投資(以下、FDI)における法的枠組みの発展に重要な役割を果たしてきたともいえる。

Riccardo Verzella シニアアソシエイト(左)とHo Ngoc Diep D’Andrea & Partners法律事務所法律顧問

前述の規制には、以前のFDI制度と比較してより妥当性のある新機軸も盛り込まれた。今後さらに、外国投資家によるベトナムへのビジネス展開促進を図るため、ある程度定義が最適化される可能性もある。

まずは、市場アクセスに関する規制が、改正投資法の下で大幅に改善された。施行前は、旧法に基づき、外国人投資家に許可される事業分野は、投資法に定められた「外国投資家に対する条件付き市場アクセス分野」リストに記載された内容に限られていた。

一転して現在では、国内投資家と区別されることなく、外国人投資家の市場アクセスのネガティブリストに含まれないすべての事業活動が可能となった。この改正で、外国人投資家にとって規制の確認が容易になり、ベトナム国内でのビジネスチャンスが拡大し、FDIの手続きが簡素化されることになる。

また投資優遇措置に関して言えば、技術革新、高等教育、医療・製薬機器製造、公営住宅建設に関連した投資プロジェクトなど、外国人投資家が措置を受けられる分野が新たに追加された。それには、税制優遇措置、融資の利用、研究開発の支援、さらには追加措置が含まれる可能性がある。

もう一つの重要な点は、ベトナム投資において投資先企業が外国資本企業として外資規制を受けるか否かの基準が企業法改正に伴い若干修正されていることである。外国人投資家の出資比率が、定款資本の51%から50%を超える資本へと引き下げられたのだ。

これにより、外国企業が50%出資するベトナム法人は、ベトナムで追加投資を行う際に、国内企業と同じ恩恵を受けることができるようになった。企業法については、株式会社における少数株主の権利をより保護するために、大幅な改善が行われたことは特筆すべき点である。

さらに、最低1年という株式保有期間が撤廃され、一定の事項が発生した場合において、取締役会の決議事項の停止または取消しを裁判所に請求する権利を株主は有するようになった。また、株主が会社の株式の1%以上を保有している場合に、株主代表訴訟の提起が可能にもなった。企業法の下では、有限責任会社は監査役会の設置が不要となり、ガバナンスが簡素化された。

外国投資誘致における規制改善のために想定される選択肢はいくつかある。第一に、許認可プロセスの最適化である。現在、2つの法改正を受けて、ベトナムへの投資需要は高まりつつある。しかし、投資家が新規プロジェクトの許認可申請をするには、複雑で無駄に時間を要する行政手続きという面倒な作業に直面することになる。

デジタル社会となった現在において、ベトナムの行政手続きに伴う必要書類の提出は、依然として投資家にとって煩雑で時間を要する作業であり、簡略化されるべきだろう。

また、投資の際に直近2年間の監査済み財務諸表を提出することが義務付けられているが、これは他国ではあまり見られない要件であり、事情が異なる国の小規模企業には負担となる可能性が考えられる。

許認可手続きの最適化における更なるステップは、中国の経験に則したFDIの場合、制限を受けない事業分野の投資登録証の申請・承認手続きを改善することであろう。例えば、強制的な事前承認ではなく、より簡易な「記録提出」や、管轄当局による「事後」審査へ置き換え、または簡素化するのがよいかもしれない。

第二の選択肢としては、企業の法定代理人の居住条件の撤廃である。企業法は第12条3項で、いかなる企業もベトナムに居住する法定代理人を少なくとも1人擁していなければならないと定めており、それを満たさない場合には、出国前にベトナムに居住する別の代理人に対して、権利・義務の行使を書面で承認する必要がある。

重要性、効率性、技術、環境保護を目標の主軸として、先進的なクリーンテクノロジーを視野に入れたプロジェクトをベトナムは優先するべきである。そして、明確で透明性のある優遇政策をさらに推し進めることが推奨されるだろう。公平で信頼性も高く、国際競争力のあるビジネス環境を確保するためにも、任意評価や煩雑な行政審査・承認は可能な限り取り除かれることが望ましいと言える。