外資ハイテクプロジェクト数の割合が低いベトナムでは、国内企業が海外から技術を修得するプロセスにおいて障壁に直面する事態を招いている。

The Vietnam Association of Foreign-Invested Enterprisesが5月10日に公表した第1回外国直接投資年次報告書で、外国資本の誘致・活用の実質的な内容とその効果が限定的であることが明らかにされた。
同報告書では次の通りの指摘がなされた。
ヨーロッパ諸国発祥の高度で近代的な技術を活用したプロジェクトの数は依然として多くはない(5%)。大半(80%)は中程度レベルの技術プロジェクトであり、そのうち30〜40%は中国由来の技術となる。残り15%の前時代的な技術は、いまだに環境汚染、エネルギー消費の増加、資源枯渇に関するリスクを招き、課題を生んでいる。
同報告書ではまた、外資系企業とベトナム国有・民間企業との経済面での連結や相互作用が首尾一貫しておらず、生産性や技術への波及効果が現段階では乏しいことが示されている。計画投資省計画管理局の元副局長Ngo Cong Thanh氏がその背景をこう語る。
外資系企業は生産において、現地企業から原材料・商品を調達するよりも本国から材料を輸入する傾向が見られます。外資プロジェクトは、衣料品・繊維製品・シューズ加工・組み立てや食品加工といった労働集約的で中型ハイテク産業の部分的な工程に、より重点を置いているのです。
また、自動車、電子機器、家電など一部の産業では、国内企業がより単純な作業工程を請け負うことが多く、それは限定的な技術移転に過ぎない。そのため、現地化も遅々として進まない状況だという。
一方、国内企業による海外からの技術を修得する能力や技術リテラシーにもまだ限界が見られる。統計局のデータによると、先端技術を利用する産業グループの比率は、タイ31%、マレーシア51%、シンガポール73%といった数値を示す一方で、ベトナムは20%にとどまる。
石油・ガス開発は、海外からの技術移転を受けて著しい成長を遂げている数少ない経済セクターの一つである。PetroVietnamがその一例として挙げられるが、同社が関わる石油・ガス探査・生産等の契約全般において、技術移転、管理、技術者訓練プログラムの規定が記載されなければならないという。同グループは、Schlumberger、Landmark、GeoQuestなどの企業から地震研究資料のデータ処理と翻訳、技術開発のためのソフトウェアを導入している。
また同社はBach Ho、Rang Dong、Su Tu Den油田における、バイオテクノロジーと化学技術を応用した二次生産で油のリサイクル係数を向上させることに貢献している。
その他にもPetroVietnam Fertiliser and Chemicals CorporationのPhu My Fertiliser プラント、PetroVietnam Ca Mau Fertiliser JSCのCa Mau Fertiliserプラントでは最先端技術の獲得に成功している。
国内の民間グループ企業は、先進的な技術を獲得するために海外パートナーとの協働に積極的に乗り出している。例えば、Truong Hai Auto Corporationは、ドイツの自動車メーカー、ダイムラー社との提携により、メルセデス・ベンツバスの新型モデルを導入する予定だ。2017年、両社は技術移転に関する契約を締結し、ベトナム市場におけるふそうトラック・バスの新たな販売代理業務をTruong Hai Auto Corporationが担うことになった。Heesung Electronics Vietnam Ltd.のゼネラルディレクターKo Tae Yeon氏は、海外パートナーから先進技術を獲得するための効果的な方法は、先進技術のアクセスにベトナム人がより一層の関わりをもつことだとの見解を示す。
技術移転を効果的に実施するためには、ベトナムの教育システムを見直し、トレーニングプログラムをアップグレードするため何らかの対策を講じる必要があるのです。
技術者が自身の知識レベルに合わせて情報を共有できるよう、定期的なセミナーや職業訓練プログラムを設けるのもよい方法だろうという。
外資系企業を通じた国内パートナーへの技術移転促進は、ベトナム政府の優先政策課題の1つである。2030年へ向けて、優先度の高い特定産業における外国技術の移転、修得、開発を2025年までに促進するプロジェクト「首相決定第1851号(Decision No.1851/QD-TTg)」が承認されたのは2018年に遡る。Vu Duc Dam副首相は今年1月、その再編案に署名した。
この決定には、ベトナムは2025年までに海外技術4,000件のファイルをデータベース化し、海外から400件の技術移転を受け入れ、10種の技術修得を目指すことが盛り込まれている。