Hinrich Foundationの最新レポートで、他の多くの東・東南アジア諸国と同様に、ベトナムも海外直接投資(Foreign Direct Investment 、FDI)(1*)の恩恵により、グローバルバリューチェーン(Global Value Chain、GVC)(2*)における存在感をさらに高めていることが報告された。
ロンドンスクールオブエコノミクスの経済地理学教授であるRiccardo Crescenzi氏は、「グローバルバリューチェーンの高度化:経済発展への海外直接投資の活用」レポートの発表記者会見において、各国にとってグローバルバリューチェーンへ参画する機会は豊富にあると述べた。
アジア諸国は、現在の課題を解決するために、グローバルな経済統合と持続可能な開発との関係性の分析が求められている。その結果を元に、グローバルバリューチェーンへの参画を奨励する支援政策を策定できるようになる。それにより、持続可能な開発を促進することができるのだ。
ベトナムの開放戦略の拡大により、海外直接投資残高の対GDP比が上昇している。
周辺諸国に比べると、ベトナムは最も海外直接投資を制限していた国から、最も開放的な国へと変化した。
有益な変化のひとつは投資政策法の改正である。中央政府と地方政府に対して投資に関する規制権を制限することで、不確実性や重複・矛盾する法律を排除することができた。
Crescenzi氏は「ベトナムの経済モデルは依然として海外直接投資主導だが、輸入に依存する最終組み立て作業に重点を置いている。」 とも述べた。
Crescenzi氏はまた、ベトナム国内の生産調達能力を高めて付加価値を生み出すために、政府と企業が輸出の流れを理解することが重要だと強調した。
「アジア太平洋経済協力(Asia-Pacific Economic Cooperation、APEC)加盟国に対する海外直接投資額は、10年前は世界全体の50%未満であったが、2020年には約68%に達した」と、APEC政策支援ユニットのシニアアナリストであるAkhmad Bayhaqi氏は述べている。
同氏はまた、アジア太平洋経済協力の半分を占める東・東南アジア諸国は、グローバルバリューチェーンにおいて重要な役割を担っているとし、この地域が20年以上にわたって世界の海外直接投資の18.4%を集め、「世界の工場」として機能してきたと指摘した。
海外直接投資ネットワークの中心に位置する国は、世界貿易ネットワークのハブでもある。また、グローバルバリューチェーンへの参加は、多くの新興国が海外からの投資を呼び込むのに役立っているようである。
創造性がなければ、ベトナムは生産性を向上させることができず、競争に苦戦する。国際競争における勝利のセオリーは創造性である、と同氏は述べている。
(*1)海外直接投資(Foreign Direct Investment、FDI)とは「外国の企業に対して永続的に利益を獲得するため、資本を投下して事業を営むこと」を意味する。 そのFDIの定義としてはおもに2つあり、グリーンフィールド投資と呼ばれる、現地法人や子会社などを設立して、現地工場や販路を一から作る形態の投資や、投資先の国の企業を買収したりする海外企業のM&AであるクロスボーダーM&Aなどがある。
(*2) グローバルバリューチェーン(Global Value Chain、GVC)とは、製品・サービスを市場で販売するために必要な、国境を越えた活動および調達のことである。