Vietnam Investment Review

資金の流れを不透明にする世界的な経済の不確実性にもかかわらず、ベトナムの今年の野心的な目標である海外投資誘致は達成される見込みだ。

国連貿易開発会議(UNCTAD)が7月に発表した「世界投資報告2022」によると、2021年に回復した世界の海外直接投資(FDI)(*1)は、約1兆6000億ドルを記録した。しかしながら、2022年もこの流れが続く可能性は低いと見られている。

今年は、ウクライナにおける戦争の影響で、食料価格高騰・燃料価格高騰、金融引き締めの三重苦に陥り、ビジネス・投資環境は劇的に変化した。その他、パンデミックの影響の再燃、主要国のさらなる金利上昇の可能性、金融市場のマイナス心理、景気後退の可能性などの要因が海外直接投資の見通しを曇らせていると報告書で述べられている。

The Vietnam Association of Foreign-Invested EnterprisesのNguyen Mai会長によると、世界各国の地政学的緊張や政策の変化は、ベトナムの海外直接投資の誘致に影響を与えるという。

「下半期に海外直接投資誘致に何らかの進展がない限り、2022年のベトナムへの海外直接投資流入額は310〜320億ドル、海外直接投資実行額は昨年と同じ200億ドル程度になると思われる。海外直接投資誘致の競争が激化する中、ベトナムが「質」と「社会経済的効率性」を達成するのは困難である。しかし、少なくとも海外直接投資額に関しては、設定された最低目標に到達することができる」 と、今年5月にMai氏は述べている。

ベトナムは、200-300億ドルの投資実行を含め、300-400億ドルもの登録外資を誘致するという最高目標を設定した。一方で、世界の投資の流れに影響をもたらす不確実性により、質の向上に関しては多くは望めない見込みである。

7月、世界銀行は2022年の世界経済成長予測を2.9%に下方修正したことに加え、ロシア・ウクライナ危機が景気後退を悪化させ、世界中でインフレ停滞のリスクを高めていると強調した。その上、中国のロックダウンと生産の中断は、外国人投資家に混乱を引き起こしたのである。

「中国のパンデミック政策は内需を減少させ、中国の国際貿易額を減らしている。ベトナムはある程度の影響を受けているが、これらの要因の影響は短期的なものに過ぎない。」と、ベトナム計画投資省の傘下の外国投資庁(FIA)のPhan Huu Thang元長官は述べた。

デンマークの玩具メーカーであるLego社が南部のBinh Duong省に初のカーボンニュートラル工場建設費として10億ドル以上を投入するなど、ベトナムが海外直接投資を誘致するための前向きな兆候が見られると、外国投資庁のゼネラルディレクターDo Nhat Hoang氏は述べている。この新規事業は、今後15年間で4,000人の雇用を生み出す可能性がある。

「ベトナムは、SamsungIntelLGFoxconnなどの多くのグローバル企業が進出し、徐々に東南アジア地域の新しい製造拠点になりつつある。」とHoang氏は語った。

実際、UNCTADによる2022年世界投資報告書では、ベトナムは有力な投資先として取り上げられている。産業用不動産における国際的なプロジェクトファイナンスの発表も、パンデミック下で減少することなく、数年にわたり継続的に増加している。2021年の案件数は3倍増の152件、金額は1,350億ドルである。大型プロジェクトでは、インドでの鉄鋼・セメント製造工場の建設(140億ドル)、ベトナムでの960ヘクタールの医薬品ゾーンの建設(100億ドル)が含まれる。と、報告書に記載されている。

2019年制定の政治局決議第50-NQ/TW号は、この10年間の制度・政策の完成と外資協力の質・効率の向上について、国の全体的な方向性を示すものである。それによると、登録資本は2021~2025年の期間に約1,500~2,000億ドル(年間300~400億ドル)、支出資本は同期間に約1,000~1,500億ドル(年間200~300億ドル)、現地化率は現在の20~25%から2025年までに30%、2030年までに40%に引き上げるとしている。

上半期のベトナムへの海外直接投資流入額は、前年同期を下回る結果となった。具体的には、同期の流入額は約140億ドルで、前年同期比8.9%のわずかながらの減少となり、100億ドル以上が経済活動に振り向けられた。

(*1)海外直接投資(Foreign Direct Investment、FDI)とは「外国の企業に対して永続的に利益を獲得するため、資本を投下して事業を営むこと」を意味する。 そのFDIの定義としてはおもに2つあり、グリーンフィールド投資と呼ばれる、現地法人や子会社などを設立して、現地工場や販路を一から作る形態の投資や、投資先の国の企業を買収したりする海外企業のM&AであるクロスボーダーM&Aなどがある。