ベトナムは、2045年までに高所得国になること、また2050年までにカーボンニュートラルを達成することを二つの明確な成長目標としている。

昨年のCOP26気候変動サミットで、ベトナムのファム・ミン・チン首相は、開発モデルを環境に優しく、循環型で、持続性があり、包摂的で、人間性豊かな経済に転換する必要性を強調した。
ベトナムは、2050年までに排出量をゼロにすることを約束し、また国家気候変動戦略案と電力開発計画案VIIIを改訂した。この事実は、10年にわたる社会経済開発政策に循環型経済(CE)を取り入れたことと併せて、循環型経済を中心とした持続的エネルギーへの移行における重要な礎となっている。
日本政府は現在、ベトナム政府に協力し、ベトナムの循環型経済に関する国家行動計画の策定を支援している。日本で最初に策定された1999年の循環型経済計画で、日本政府は産業廃棄物の削減と、天然資源の使用制限を目標としていた。
そのため、日本は、生産効率や製品使用効率の向上のための様々な政策を実施し、使用済み製品やリサイクル製品の適切な取り扱いに努めてきた。循環型経済の構想に基づき、日本はEPR(1*)の推進、リサイクル率の向上、環境関連事業の拡大を実現した。
第一のポイントは、製品に使用する再生材の割合を増やすなど、生産工程に対する解決策である。日本では、製品自体のエネルギー効率の向上とEPRの実施が制度化されている。、政府のさまざまなインセンティブプログラムや支援によって効果的に実施されている。
第二は、適正処理・適正再資源化の結果です。日本では、「循環型社会形成推進基本法」に基づき、循環型社会形成のための政策が展開されている。
容器包装、家電製品、食品、建設廃棄物、自動車部品、その他の家電製品など、品目ごとにリサイクルの方法や要件が明確に定められている。
日本の環境法規制は、物質や資源の循環を重視しているだけでなく、廃棄物の適正な処理・処分のための透明な行政措置を公布しており、日本では廃棄物の処理過程を監視し、不法投棄を防止するためのマニフェスト制度が設けられている。また、ゴミのポイ捨てや不適切な処理の防止に関する規制も設けている。
近年、日本では、プラスチック廃棄物の問題を認識し、プラスチックの使用量削減への国民意識を高めるために様々な取組が始まっている。例えば、スーパーで買い物をする際にはプラスチックのレジ袋を購入しなければならず、それにより、プラスチック製品利用削減に対する意識を高めている。
ここまでの成果の背景には、ベトナムでも役立つと思われる実践的な教訓がある。日本においても様々な問題が生じており、具体的な解決策が必要とされている。日本のリサイクル推進政策の原点は、埋立地不足が深刻化したことである。1992年のリオサミット以降、環境問題への関心が高まっている。つまり、政策立案の必要性を日本につきつけた問題を広く共有することは非常に重要なのだ。
日本の循環型経済政策の枠組づくりには、伝統的に「もったいない」の精神がある。2000年に制定された「循環型社会形成推進基本法」 にもこの精神が盛り込まれている。
当時は、最近のベトナムのように、廃棄物が増え、廃棄物処理施設の用地が限られているという差し迫った問題に直面していた。この法律は、大量生産、大量消費、大量廃棄からの脱却を目指す日本の取り組みを認識させ、個々の廃棄物やリサイクルに関する法律や規制の策定を先導した。
日本での循環型経済をさらに推し進めるため、2020年にこのビジョンを更新した。その背景には、特に気候変動危機があり、環境と経済成長の好循環への転換を促すことが目的である。
最後に、廃棄物の管理についても、従来からReduce(削減)、Reuse(再使用)、Recycle(再利用)の3Rの推進や分別の徹底など、継続的に取り組んできた。
今こそ、ベトナムの天然資源環境省との協力関係を強化し、ベトナムの環境経済モデルを実現するための強固な法的基盤や政策の方向性を確立する時なのである。
(1*)ERP(enterprise resource planning):エンタープライズ・リソース・プランニングまたは企業資源計画という。企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のこと。多くの場合、リアルタイムで、ソフトウェアとテクノロジーによって仲介される。