Vietnam Investment Review
ベトナムの投資状況は、特に加工・製造業を中心に明るくなっているが、新規登録された投資額の落ち込みが懸念されている。
7月末に開催された南部ビンズオン省指導者との会談で、シャープの橋本吉弘会長は、同地域での事業拡大計画を明らかにした。
シャープグループは中国市場からサプライチェーンを移動させ、ビンズオン省を含むベトナム南部地域において、市場の多角化と流通を促進する機会を探っている。「シャープは今後も、ハイテク・先端製品の開発を目的とした大規模工場の増設・建設を進めていく。」と橋本氏は語った。
ビンズオン省はシャープの基準に沿って、投資環境が魅力的な地域であると評価されている。同社グループはベトナム国内のシンガポール工業団地 (VSIP) Iと拡張VSIP IIに2つの生産工場を有している。また、シャープは、建設用地、労働力、交通インフラの整備、税制上の優遇措置や建設費用の支援を期待している。
シャープの新設工場では、電気製品、電子機器、ハイテク部品、スマートフォンなどを製造・加工し、特に家電製品、ヘルスケア製品などを中心に生産が行われる予定である。
加工・製造業は、この国で過去30年間常に外国直接投資 (FDI) の最も活発な産業であった。多額の資金調達に加え、ベトナムで設備を拡大し続けているサムスン、LG、キヤノン、ホンダ、トヨタなどの大企業からも支持されている。
14年前にベトナムに足を踏み入れた韓国の大手企業サムスンは、その実績の最たるものである。北部のバクニン省にスマートフォン製造工場を建設したことを皮切りに、ハノイ市、タイグエン省、ホーチミン市と投資先を拡大し、最終的にはベトナムへの総投資額が200億ドル近くに達している。
シンガポールの富士フイルムビジネスイノベーションは、電子機器、ネットワーク機器、マルチメディアオーディオ製品を製造するバクニン、ゲアン、ハイフォンの工場を数百万ドル規模で拡張した。更に、今年最初の数ヶ月の間にホーチミン市で4億9200万ドルの工場拡張を行っている。
HSBCが6月に発表したレポートによると、ベトナム経済は順調に成長を続けており、世界の製造業の拠点として台頭しつつある。特に、エレクトロニクス、繊維、フットウェア等の多くの分野で大きな市場シェアを占めている。
計画投資省(MPI)によると、20年1月から7月の期間に、加工・製造業はベトナムに対して100億ドルの海外直接投資を行った。7月20日現在の累計を見ると、同業界の登録総額は2543億6000万ドルで、第2位の不動産業界の4倍となった。20年1月~7月の追加登録海外直接投資は前年比59.3%増の72億4000万ドル、自社株式購入資金は前年比25.7%増の25億8000万ドルであった。
世界の海外直接投資がまだ完全に回復していない中で、ベトナムへの外国からの資金流入には明るい兆しが見られる。計画投資省傘下の外国投資庁のDo Nhat Hoang長官は、「外国人投資家はベトナムへの進出を続けており、ベトナムの経済と投資環境を信頼していることを意味している。」と述べた。
しかしながら、ベトナムへの新規登録投資は依然として減少している。20年1月から7月の期間中に、927件の新規許認可プロジェクトに57億2000万ドルが注ぎ込まれた。プロジェクト数は7.9%のわずかな減少だったものの、金額は43.5%の大幅な減少となった。
「新規に登録された資金は継続してパンデミックの影響を受けているため、いくつかの投資促進会議が開催されておらず、一部の投資家はまだベトナムを訪問できていない」とHoang氏は説明した。Hoang氏は次のようにも語っている。
しかし、対前年比は月単位で改善している。グローバルサプライチェーンの移転メリットを生かすためには、ベトナムはもっと慎重に準備しなければならない。