Vietnam Investment Review

循環型経済に貢献できる、環境に優しい取り組みのできる国としてベトナムが注目されつつある。しかしながら、真に持続可能な投資を呼び込むには、様々な方面の改善が必要である。

6月に発表されたベトナムの循環型経済発展計画では、2030年までにGDPに占める温室効果ガス排出量を15%削減することを目指している (2014年比) 。

ベトナムはCOP 26において、「2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする」という公約を掲げている。この公約は、グリーン技術や環境に優しいプロジェクトへの投資と、循環型経済などの計画承認を促すキーになると考えられている。

これらのメッセージは、低炭素、グリーン開発、循環型経済発展のための新たな原動力となる可能性があり、同時にベトナムの競争力向上と外国直接投資に寄与する。

その結果、多くの企業グループがこの目標に向けてベトナムへの投資やその他事業に関する意思決定を行った。また、C.P.VietnamJapfa Comfeed VietnamTH Groupなどの畜産企業では、循環型経済と持続可能なエネルギーが長年にわたり生産段階から活用されてきた。

例として、7万頭の牛を飼育しているTH Groupの牧場では、家畜の糞尿や廃棄物のほとんどを、微生物の餌、生物由来の牛舎の内張り、燃料エネルギー、他の農場の肥料として利用している。また、牛舎の屋根に設置した太陽光発電で牛舎内の電力を賄い、副産物として牧草を束ねて縫ったものを袋として利用したりしている。

Nasu製糖工場の副産物はバガス(*1)で、バイオマス発電に加工される。また、糖蜜は乳牛の飼料に含まれる栄養成分に加工される。

「私たちの牧場で発生する副産物はすべて再利用・リサイクルしています。長年にわたり、生産および加工のすべての段階で循環型モデルを採用してきました。」とTH Milk Food JSCの農業技術部門の責任者であるTran Thi Nhu Trangは述べている。同社は中央部のゲアン省で12億ドル規模の最先端の乳牛牧場および新鮮な牛乳の加工工場を運営している。

良いビジネス

ここ数カ月の間に、特にホーチミン市に隣接する南部のビンズオン省に、ヨーロッパや日本から数十人の外国人投資家が、環境に配慮した成長が見込まれるプロジェクトへの投資機会を求めてやって来ている。

今年初め、デンマークのLegoグループは、ベトナムへの外国投資流入の「緑の礎」とされるビンズオン省に、同社初のカーボンニュートラル工場を建設することを決定した。Legoは10億ドル以上を投じて44ヘクタールの敷地に工場を建設し、今後15年間で最大4,000人の雇用を創出する予定である。

新工場の特徴の一つは、カーボンニュートラルであり、LEED(*2) Gold Standard認証に準拠して建設されることである。さらに、Legoグループは40 MWの太陽光発電所への投資可能性を探っており、新工場の操業に必要な電力として100%再生可能エネルギーを提供する予定である。

「ベトナムは、二酸化炭素排出量を削減し、気候変動に積極的に対応するという政府の強いコミットメントのおかげもあり、海外のパートナーや投資家にとって魅力的な場所となっています。」 とKim Højlund Christensenデンマーク駐ベトナム大使は述べた。

また、事業・投資の観点からは、国境炭素税(*3)は世界貿易の特徴となる可能性が高く、外国直接投資を誘致するために、低炭素生産システムの利用がますます重要になるだろうと付け加えた。国際的な企業は消費者の要求に応え、二酸化炭素排出量を削減するという世界的な取り組みに対応している。すなわち、環境に配慮したサプライチェーンや製品を重視するようになり、再生可能エネルギーの増加も、ベトナムへの外国直接投資をさらに呼び込むことになるというのである。「したがって、グリーン化はベトナムにとって本当に良いビジネスです。」とChristensenは述べた。

以前は、ベトナムの多くの外資系企業も循環型経済に関心を持っていた。タイが出資するアジア有数のコングロマリットSCGは、排出量実質ゼロを目指し、セメントや化学製品から包装に至るまで、同社のすべての部門で循環経済モデルを適用している。

また、SCGグループのSCG Packagingは、再生紙だけでつくられた革新的な商品を提供している。

「循環型経済では、消費者の視点だけでなく製造業の視点からも、天然資源の使用削減、再利用可能な製品の開発、リサイクルといういくつかの要素に焦点を当てることができます。」と、SCGの社長兼CEOであるRoongrote Rangsiyopashは述べている。

「例えば、私たちは環境から水を汲み、それをリサイクルし、再利用しています。循環型経済は、私たちが低炭素化を実現し、排出量実質ゼロを達成するための非常に良いツールであり、行動計画なのです。」と彼は付け加えた。

また、DEEP C工業団地とDowは、北部の港湾都市ハイフォンにおいて、プラスチック廃棄物対策とベトナムの循環型経済推進のために、再生プラスチックで強化した最初のアスファルト道路を完成させた。DEEP C工業団地のジェネラルディレクターであるBruno Jaspaertは次のように述べている。

これらの耐久性と安全性が高い新しい道路は、DEEP Cと我々のテナントに利益をもたらすだけでなく、ベトナムがプラスチック廃棄物管理を環境上の最優先課題としていることを示す強力なメッセージにもなっています。

再生プラスチック道路の総延長は1.4kmで、合計6.5トン(軟包装材170万枚以上相当)の軟包装材がゴミとして埋立地に捨てられることを防いでいる。再生プラスチックは、ほとんどがポリエチレンフィルムなどの軟包装であり、地元の廃棄物収集業者であるURENCO Haiphongから供給された。この廃棄物は洗浄、乾燥、破砕され、150〜180℃の温度でアスファルトと混合される。

ハイテクに焦点

Savills Vietnamのインダストリアルマネージャー、Le Huy Dongによると、ベトナムは多くの有望な計画が進行中であり、順調に発展し始めているという。「しかし、我が国は、他の地域で起こった過ちを繰り返さないために、地域や他の国々から得た教訓に目を向ける必要があります。ベトナムはグリーン・ファクターを産業発展の必要条件として考慮する必要があります。」とDongは強調した。

中国があきらかな例であり、30年前、この国も現在のベトナムのように、地域において多くの際立った強みを持っていた。利用可能なすべての強みを活用し、様々な産業における外国直接投資を呼び込んだ。しかし、そのため過去10年間に中国は深刻な環境汚染を引き起こし、北京は周辺地域の製造工場がつくるスモッグに飲み込まれた。現在、中国はエネルギー集約型で排出量の多い産業を抑制している。

これに対処するために、ベトナム政府は、ハイテク外国直接投資、循環経済の発展、および排出量実質ゼロに焦点を当てた決議を行った。

ハイテク技術や環境に優しいプロジェクトへの投資を呼びかけるために、そういった投資には特別な投資優遇措置を規定していると、計画投資省外国投資庁のDo Nhat Hoang長官は明らかにしている。

「持続可能な開発と循環型経済に貢献し、排出量実質ゼロのコミットメントを実現するハイテクプロジェクトであれば、5~9%の法人税優遇と数十年間の土地賃貸料免除を受けることができます。これらの政策は十分魅力的だと思います」とHoangは述べた。

ベトナム外国人投資企業協会のNguyen Van Toan副会長は、政府の政策や方向性には賛同しつつも、「しかし、地方は持続可能な開発のためにあらゆる種類の海外直接投資を誘致するのではなく、持続可能な開発に向けたハイテクおよびグリーン・テック・プロジェクトを選択すべきです。」と述べている。

Toanは、より環境に優しい海外直接投資を増やすためには、より多くのエコ工業地帯の開発に注力する必要があると述べた。しかし、より多くの企業グループがこれに参加するには時間がかかるであろう。

「これらの工業地帯に新たな海外直接投資を呼び込むことが望ましい。そうすれば、ベトナムは全く新しい技術の海外直接投資の流れを作り、高度な技能を持つ労働者を集め、社会的責任を果たし、より多くの付加価値を生み出すだろう。」とToanは付け加えた。

(*1)バガス(Bagasse)はサトウキビ搾汁後の残渣。年間約12億トン生産されるサトウキビからは約1億トン(乾燥重量換算)のバガスが発生する[1]。主にや衣料品[2]の原料、ボイラー燃料建築資材、家畜飼料などに用いられる。

(*2)LEED

LEEDは、非営利団体USGBC(U.S. Green Building Council)が開発、運用しGBCI(Green Business Certification Inc.)が認証審査を行っている、ビルト・エンバイロンメント(建築や都市の環境)の環境性能評価システム。LEED認証を受けるためには、グリーンビルディングとして備えるべきいくつかの必須条件(Prerequisiteを満たし、選択項目のポイント(Credit Points を選んで取得することが必要。

Certified, Silver, Gold, Platinumの4つの段階がある。