Vietnam Investment Review

2050年のネットゼロエミッション達成に向け、重要な役割を担うエネルギー産業。グリーン成長への構造転換が求められるベトナムにとって、先進国からの資金、技術両面の支援が不可欠となる。

7月22日、ベトナム首相は2021年から2030年のグリーン成長に関する国家行動計画を承認した。この計画には、根幹をなす4つの目標が掲げられ、国のグリーン成長戦略を詳らかにするものとなる。GDPあたりの温室効果ガス排出量の削減、経済セクターのグリーン化、ライフスタイルのグリーン化と持続可能な消費の促進、平等・包摂(インクルージョン)・回復力(レジリエンス)の原則に基づくグリーン化の実現が提言されている。

8月17日、「グリーン成長に向けたエネルギー転換、COP26の影響」に関して会議が開催された。そこで、計画投資省のNguyen Thi Bich Ngoc副大臣は、エネルギー転換を実現して2050年のネットゼロエミッションを目指すにあたり、資源が最大の問題であるとの見解を示した。

世界銀行の試算によると、ベトナムがネットゼロエミッションを達成するためには、2022年から2040年にかけて、毎年GDPの約6.8%にあたる3,680億米ドルの追加投資が必要になるという。

このうち、レジリエンスの構築プロセスだけでこの金額の約3分の2を占めることになり、資産やインフラ、社会的弱者を保護するためには多額の資本流入が必須となる。

脱炭素化ロードマップのコストは、再生可能エネルギーへの投資や脱石炭への流れを管理する費用など、主にエネルギー部門に由来し、2022年から2040年に渡り約640億米ドルを要すると言われている。

「再生可能エネルギーの急速な普及と火力発電所の燃料転換により、COP26以降の電源開発計画改定におけるCO2排出量は大幅に減少した。」と、産業貿易省(MoIT)傘下にある電力・再生可能エネルギー局のHoang Tien Dung局長はコメントした。

CO2排出量は、2031年~2035年の2億3,100百万トンのピークを境に、徐々に下降する。CO2排出量は、2045年には約1億7,500万トンまで減少し、COP26以前の代替案と比較すると約2億800万トンのCO2削減の見込みとなる。2050年には、発電部門からのCO2排出量は年間約4,000万トンまでに下がると試算されており、「2050年までのネットゼロエミッション達成」というCOP26でのベトナムの宣言が守られることになる。

この会議に出席した産業貿易省(MoIT)のDang Hoang An副大臣は、エネルギー転換とは、エネルギー部門の単なる内部問題だけにとどまらないと指摘する。経済全体がエネルギー集約型からエネルギー効率型モデルへの転換を図ることになると解き明かした。

産業貿易省(MoIT)の試算により、電力・エネルギー需要は、今後、工業化・近代化に伴い増加し続けることが明らかにされた。この成長率に対応することがこれからの課題となっていく。

従って、今最も重要なミッションは、適切で実現可能かつ持続可能な開発戦略を構築することにある。

「地球規模でのエネルギー科学技術という研究開発の重要性と緊急性を強く訴えかけたいのです。水素、アンモニア、先進エネルギー貯蔵技術、CO2の吸収・貯蔵技術などの新たな一次エネルギー源を活用した大規模発電のための技術においては、とりわけ差し迫った課題となってくるのです。」とAn氏は力説した。そして、経済活動のあらゆる分野で、エネルギーの経済的かつ効率的な利用が急務であることが強く認識されるべきと補足した。

また、Ngoc氏が提案した今後のエネルギー転換に関連する5つのアイデアは以下の通りとなる。
・国家のエネルギー安全保障を確保するために、グリーンで持続可能な移行に向けたロードマップを慎重に計算すること。
・移行期間中、特に貧困家庭への電気代高騰による影響や、再生可能エネルギーへの移行による化石エネルギーなどの産業・分野の労働者の失業など、弱者への影響軽減に配慮することが求められる。
・移行に関わるすべての関係者が責任を負う。
・移行を完了するためには、先進国からの資金と技術支援を要する。
・そして、最後は、エネルギー転換の実施過程についてこう提案されている。投資の制限・削減、代替ルートの確保、汚染生産施設や高炭素インフラの閉鎖など、評価・検査・監督・関連制裁を効果的に行うことが肝要となる。