Vietnam Investment Review
東南アジア市場において新たな取り組みを望むデンマークの投資家達から、ベトナムの農業分野が注目を集めている。
8月中旬に開催された、ベトナム企業と農業・食品分野のデンマーク企業13社間のマッチングセミナーにおいて、デンマーク大使館のTroels Jakobsen貿易参事官は次のように語った。
デンマークの企業や専門家は、ベトナム企業と革新的なアイデアや技術を共有し、協力して持続可能な良いビジネス構築の機会を探している。
食品・農業における酵素と微生物技術の世界最大プロバイダーであるNovozymesは同セミナーの参加企業である。「今回の協力の目的は、ベトナムの市場関係者が国際的な基準を満たすことができるように、規制プロセスを改善することである。また、そのために、デンマークとベトナム間のより良いビジネスへの貢献、ベトナムが東南アジアでより高いレベルへ到達するための協力をどのように実現するか、議論することである。」と、同社の規制部門責任者であるShirley Vincent Rameshは述べた。
デンマークの食品製造・加工企業の多くは、ベトナム農業市場の発展可能性を高く評価し、ベトナム企業との協業機会に大きな期待を寄せている。
50カ国以上で事業を展開する牛肉加工品グループ VikingGeneticsは、ベトナムの過去10年間における酪農業の高い成長率を踏まえ、ベトナムを主要市場の一つとして選んだ。「私たちは世界中に多くの販売代理店を持っている。そして、次のステップはアジアでのプレゼンスを高めることだと考え、まずはベトナムでの展開が必然だと信じている」と、VikingGeneticsの輸出・キーアカウントマネージャーAhmet Yilmazは述べている。
ベトナムの牛乳と乳製品は48カ国に輸出され、2021年の売上高は3億ドルを超えた。農業・農村開発省(MARD)畜産局のTong Xuan Chinh副部長によると、ベトナムは畜産酪農産業の工業化においても東南アジアをリードしている。
ベトナムには28,000以上の酪農場と375,000頭近くの乳牛がいる。VikingGeneticsが提携しようとしている最大の市場の一つである。
「酪農家が自慢できる、より多くの牛乳を生産し、長生きで、健康な、繁殖力の強い牛を育成する。私たちと協力して販売できる代理店を探している。」とYilmazは付け加えた。
農業は、海外直接投資 (FDI) の観点からはまだ魅力的な分野ではないため、ベトナム市場におけるデンマークの大手農産物加工企業の関心は大きな驚きと共に受け止められている。
計画投資省傘下の外国投資庁の統計によると、2022年の最初の7ヶ月間に、農林水産業は、投資資本総額2200万ドルのベンチャー企業7社を誘致しただけである。この金額は、新規プロジェクトの1%以下、ベトナムへの海外直接投資全体の0.37%を占めるに過ぎない。
多くの専門家によると、農業分野に魅力がない理由のひとつは、煩雑な行政手続きと土地の不足にあるようだ。
農業・農村開発省(MARD)の農業・農村開発情報センター所長のNguyen Anh Phongは、「現在、土地は主に農民が所有している。外国企業は農地利用権の譲渡を受けることができず、農家から農地を直接借りることも、その借りた農地を融資の担保にすることもできない。」と述べている。
このような規制を除くにはもっと時間が必要だが、デンマーク投資家の中には、ビジネス成長を加速させるベトナムの利点を理解している人もいる。SKOV Asia Ltd.のマネージングディレクターであるRasmus Ellefsenは、「ベトナムの安い人件費により、生産効率をあげることができると思う」と述べている。
SKOVは、畜産のための気候制御と農場管理を世界的に扱っている。デンマーク本社のほか、世界25カ国以上に駐在員事務所を構えているのだ。
SKOVのベトナム事業は現地の営業事務所が担当している。「すでにC.P.Groupのような大企業が参入し、ベトナムへの輸出を支援する大規模な事業を立ち上げている。こういった大企業は既に事業を行っており、ベトナムへの投資を選択していることがわかる。つまり、ベトナムへの全ての参入者は前進できると確信している。」と、Ellefsenは付け加えた。