Vietnam Investment Review
今回、VIRのAnh Hoa記者がインタビューを行った相手は、ブロックチェーン事業で資金調達に成功したHOBBIT InvestmentのWilliam Do CEOである。取引において懐疑的であること、プロジェクトの実態を把握してリスク回避すること、そして投資の優先順位を見極めること、この3つの重要性について同氏はじっくり語ってくれた。
投資家がブロックチェーン技術や暗号資産の投資先選びに慎重な今、企業はどのように強みを活かして、資本化していけばいいのでしょう?
資本市場での競争力とは、つまり質の高い関係性を構築できるかどうか、ということです。資金力のあるドバイだろうと、他の地域であろうと、それは変わりません。しかし良好な関係を築くには、まず土台として質の高い商品が期待されます。そして質の高い商品を確保するためには資本が必要です。こうなると「卵が先か、鶏が先か」という問題になります。
通常、ブロックチェーン技術業界の投資ファンドがポートフォリオ構築に着手する際、まずは自分たちの所属するコミュニティや株主から資金を調達します。投資先のプロジェクトが成功すれば、今度は利益を根拠に、また別のプロジェクトへの投資を呼び込むことができるかもしれません。ただ、投資先として適切かつ良質なプロジェクトを見つけられるかどうか、ということはまた別の問題です。
私たちは、トリプルA評価を受けた案件やメタバースゲーム事業において強力なネットワークを構築し、大規模な資本を獲得しています。これは、プロジェクトの評価と選定に長い時間をかけた賜物です。共に歩むプロジェクトが決まり、ひとたび協力関係がスタートすれば、あとは様々な課題を乗り越えながら互いに構築し合い、発展をすすめていくことになります。
プロジェクトの資金調達ラウンドに参加した後には何が待ち受けているのでしょうか?
近年、かなり過熱気味となったベトナムのブロックチェーン市場では、詐欺が横行するなど、投資家の不信を招いていますが、これを避けることはできません。そのため、投資家は必要な知識を蓄えアップデートし、自らの判断力でプロジェクトを選択する必要があります。投資家がプロジェクトの質を客観的に評価し、問題点に真摯に向き合えば、ベトナムのブロックチェーン関連スタートアップのプロジェクトは透明性が大きく向上すると思われます。
こうした要素を踏まえ、各プロジェクトの資金調達プロセスはそれぞれ独自路線を歩むことになります。また、結果的に交渉力を弱めてしまうことになる投資家の過熱ぶりも、これらの要因に大きく左右されるのです。
専門家によると、市場の下落や減速がみられた場合、投資ファンドはポートフォリオの構造を査定し、資金を守らなければならないといいます。貴社ではどのようにポートフォリオを再構築しているのでしょうか?
私たちは、ベンチャーキャピタルとしての一歩を踏み出した頃から、独自のポートフォリオ基準を構築してきました。そのベースになるのが、ブロックチェーン技術業界の長期的なビジョン、そしてその技術をいかにして関連する消費者エコシステムに応用していくか、という点です。市場が下落し事業活動への影響が小さくなったとしても、私たちには使命を遂行するための基盤と目標達成への持続可能な信念があります。
資金調達の鍵となりそうな有望なプロジェクトとしては、次に何が来るのでしょうか。
私たちの目下の目標はベトナムや東南アジア全般の古くからある組織や企業、投資家、消費者とデジタル資産時代をつなぐ架け橋となることです。
私たちの強みは海外のリソース、特に世界のブロックチェーン産業の中心となるドバイを首都に持つアラブ首長国連邦のリソースを活用することです。その強みを活かすため、最適なプロジェクトを事前に準備し、製品やサービスのテストランを経て、完成したプロジェクトと統合できるようにしてきました。それが実を結び、今後の資金調達プロジェクトについては既に計画段階を終えています。現状を踏まえてさらに詳細な数字を算出し、後日公式ニュースサイトを通じて発表する予定です。
ファンドがプロジェクトを探求し続けるうえでどのような障壁がありますか?
ベトナムで暗号資産を利用して資金調達を行うブロックチェーン系スタートアップがあったとして、それが法的に認可されていなければ、投資家としては心理的なハードルが上がります。それが現地のブロックチェーン市場の発展を妨げる大きな要因になっていると思われます。
地方のコミュニティではブロックチェーン技術のプラットフォームを理解していない人が多く、「暗号資産」というだけで不安になることも少なくありません。すると創業者側がこの種のプロジェクトを避けるようになります。その結果、ベトナムのブロックチェーン系スタートアップは、法的にも、コミュニティにおいてもリスクを回避するため、ベトナム国外でプラットフォームを構築する傾向になります。このままでは投資家からの莫大な資本のほとんどがベトナム国外に流れていってしまうことになるでしょう。