Vietnam Investment Review

ベトナムのM&A市場において長年にわたり主要な役割を担ってきた日本、韓国、シンガポール。その各国投資家の新たな動きは、急成長する市場への関心に変わりはないことの明確な顕れのようだ。

先頃、RECOF Vietnam Co, Ltd.のCEOであるMasataka Yoshida氏は、日本企業がまだベトナム企業との戦略的取引に応じる姿勢である点について言及した。

過去5〜6年、東南アジアにおける日本の投資家のM&A先として、ベトナムはシンガポールに次いで2位にランクされています。取引件数についてはまだ発表されていない案件も多く、簡単には比較できません。それでも、ベトナムにおける日本の取引規模は、5〜6年前と比べると拡大してきているのです。

最近の動向を見ると、Cool Japan Fundは、人気ピザ店「4P’s」のネットワークを所有して運営する4P Holdingsに対して約1,000万ドルの出資を決定した。この動きは、収益性の高いベトナムの食品・飲料市場に参入するファンド戦略の一環となる。一方、日本の東邦ガスは、ベトナムのガス販売会社Phuc Sang Minh Trade Engineering Servicesの株式の40%を取得するという戦略的投資協力協定に調印した。

また、三井住友銀行が936万ドルでSmartNetを買収するなど、日本の投資家絡みで注目のM&Aも今後行われる予定だ。

RECOFのデータによると、2022年1月~10月に日本の投資家が関与したM&Aは案件数で、ベトナムが世界で第10位であったという。東南アジア諸国の中では、ベトナムはシンガポールやインドネシアに遅れをとっているとはいえ、タイ、フィリピン、マレーシアには大きく差をつけている。パンデミック後、日本の投資家の市場復帰への動きは鈍かったものの、現在では、世界の金融市場の変動や地政学的な緊張の高まりにもかかわらず、追い上げ基調にある。

同様に、韓国の投資家もベトナムのM&A市場で活発な動きを見せ続けている。ベトナム最大手の薬局チェーンとして知られるPharmacityは、急速に拡大する東南アジアの小売・ヘルスケア市場への参入を目指し、SK Groupの傘下に入った。

一方、SK Group企業SK E&Sは、Gia Lai Power Electricity JSCの傘下にあるNew Renewable Energy JSC No.1の99.99%を3,750万ドルで取得する契約を締結した。この契約は、SK E&Sがベトナムの再生可能エネルギー市場に参入する道筋をつけるためのものである。

韓国の金融グループも、ベトナムの長期的見通しを楽観視しているため、ベトナムのパートナーに合計で数十億米ドルの投資を行っている。5月には、韓国のShinhan Financial Groupがベトナムの電子商取引会社Tikiの株式の10%を取得する戦略的契約を締結した。4月、Hana Financial Investment Co. Ltd.がBIDV証券の35%を取得し、取引総額は約1億1,700万ドルに達した。

「数年前までは、韓国の投資家は対象企業を丸ごと買収したがっていたのです。しかしそれでは、事業を再構築し、利益を上げて安定させるために新オーナーに追加投資が強いられるのです。現在では、市場のノウハウや評判、現地の人材などを組み合わせて相乗効果を生み出せる、ベトナムのパートナーを求めるようになりました。」と解説するのは、Bae, Kim & Lee Vietnamのアソシエイト、Hanh Nguyen氏である。

2022年初頭から10カ月間で、韓国の投資家によるM&A取引を通じて、約3億7,000万ドルがベトナムに注ぎ込まれたことを同氏は言い継いだ。

一方、シンガポールはバイヤーとして今年最も活発な動きを見せる国のひとつであり、ベトナムの電子商取引ソリューションプロバイダ、OnPointとシンガポールのTemasekの間接子会社間との5千万ドルの案件など、多くの大規模な取引が行われている。この投資は、急速に拡大するベトナムのeコマース分野に注力するためのもので、eコマース実現に向けた民間資金調達ラウンドとしては過去5年間で最大規模となった。

また、シンガポールのベンチャーキャピタル(VC)ファンドは、自国のスタートアップ企業に投資することで、ベトナムに強い足場を築いている。先般、ベトナムの電動バイクスタートアップ企業であるDat Bikeは、シンガポールのJungle Venturesが主導する新たな調達ラウンドで800万ドルの資金を獲得したことが報じられた。

Wavemaker PartnersやInnoven Capital と並び、GSR VenturesとDelivery Hero Venturesもこのラウンドに参加した。8月には、Jungle Venturesが850万ドルの投資で、地元の医療・保険プラットフォームであるMediciのシリーズAラウンドを先導した。

一方、シンガポールのVCファンド、Golden Gate Venturesは、ベトナムに2つのオフィスを設立し、東南アジアの次の成長段階を担う可能性を視野に入れ、ベトナムで成長するハイテク産業に投資している。また、もうひとつのVCファンド、Quest Venturesは、Enterprise Singaporeと提携し、シンガポールのハイテクスタートアップ企業や中小企業のベトナム進出を支援するGIA acceleration programmeを運営していくことになる。

ASL Lawのマネージング・ディレクター、Pham Duy Khuong氏は、こう言い切る。

2023年の動向は容易に予測できません。それでも、日本や韓国、中でもシンガポールの投資家にとって、ベトナムが魅力的な国であることに変わりはないのです。