Vietnam Investment Review

景気低迷が懸念される一方で、再生可能エネルギー産業におけるM&Aにはまだ多くの可能性が秘められている、とエコノミストは語る。

海外投資家との活発なM&A

PwCベトナムのゼネラル・ディレクター代理兼トランザクション・サービス・リーダーのTiong Hooi Ong氏によると、2022年はマクロ経済的に障壁があったにもかかわらず、M&A取引が活発な年でもあり、海外の投資ファンドから大きな注目を集め続けたという。

「トレーダーがM&Aによる事業強化やビジネスセクターの変革に重点をおくため、ポートフォリオの最適化を図る戦略的な狙いが増えていることが見てとれます。」と同氏は見解を示した。

2022年から2030年にかけてベトナムの電力消費需要は8倍以上になると予測され、再生可能エネルギーの開発は必然的な流れであった。さらに、世界の主な製造企業の78%が、2025年までに動きの遅いサプライヤーを切り捨てるだろう、と語るのはVNDirect Securitiesの分析部門ディレクター、Tran Thi Khanh Hien氏である。

「東南アジアでは、ベトナムが太陽光発電で16,000MW、風力発電で約5,000MWと、再生可能エネルギー業界をリードしています。再生可能エネルギーは、電力事業の民営化を強力に推進しました。」とHien氏は評価する。

さらに、2018年当初には18.4%に過ぎなかった太陽光発電が、2021年末には独立系発電所がシステム全体の設備容量の41.3%を占めるまでに至ったと付け加えた。

再生可能エネルギーの生産比率は、2020年初めの4〜5%から、2022年初頭から8カ月間で14〜15%へと急増した。

同時にHien氏は、2022年はベトナムにおける「グリーン資産」にとって重要な節目の年となったと述べている。多くのM&Aが行われ、EDP RenewablesがSunseapの87%、ACENがSola NT Holdingの49%、B.Grimm PowerがTTVNの48MW Quang Tri風力発電プロジェクトの80%、と各々株式を取得した。

また、B.Grimm Powerは240MWpのTay Ninh太陽光発電所の全株式を取得、Sustainable HitachiはTrung Namの152MW風力発電所の35%の株式を日立より取得、Xuan Thienは255MWpのThuan Bac太陽光発電所をEDP Renewables(ポルトガル)に売却した。また、Super Energy Groupは、ベトナムで1GW以上の太陽光発電と風力発電のポートフォリオを徐々に構築している。

VNDirectの一般的なデータによると、ベトナムは再生可能エネルギー設備容量では、太陽光発電が16GW、風力発電が約5GWと世界の上位20カ国に入っており、東南アジアでは業界の先駆けであることが示されている。

また、このデータでは、プロジェクトの商業運転化において、競合する民間企業が目立つようになってきたことを表している。この2年間は、再生可能エネルギーを奨励する政策により、多くの企業が市場に参入してきた。

VNDirectによると、開発当初はベトナムの民間企業が主導的な役割を担っていたという。しかし、現在では外資系企業が頭角を現すようになり、プロジェクトの獲得に積極的になっている。

KPMGのデータによると、2022年1~10月のベトナムのM&A総額は57億米ドルに達しているが、昨年と比較して35%以上減少したことになる。

しかし、再生可能エネルギー分野に限って言えば、2021年全体と比較して約6倍にあたる6億ドル近くまで増加しており、分野別では有望な存在となりつつある。

近年、民間企業が現地のノウハウを活かして、再生可能エネルギーのクラスターを急速に拡大させている。この勢いは、主に規制原案で業界の民間企業をサポートするように変更されたことによるものだ。特に、2022年10月に更新された第8次国家電力開発マスタープラン(PDP 8)では、2050年の「ネット・ゼロ・カーボン」の目標に向け、太陽光や風力発電の電源構成計画を強化した。

そのため、2022年~45年には、屋根置き型太陽光発電を含む太陽光発電、風力発電の設備数はそれぞれ8%、16%と複合成長率が見込まれる。

Trung Nam Group のゼネラル・ディレクター、Nguyen Tam Tien氏は、第8次国家電力開発マスタープラン(PDP 8)適用後のベトナムの再生可能エネルギー市場は、熾烈な競争が繰り広げられるだろうと予想する。

国内企業がパートナーシップを持たないまま事前準備を怠ると、外国人投資家から敬遠されるおそれがある。そのため、Trung Nam Groupはその具体的な対策となる計画を立てていることを同氏は明かした。技術、設備、コスト管理、入札、財務ソリューションにアクセスして成長目標を確実に達成し、主要となる事業ポテンシャルのポジションを見極め、グローバルトレンドとローカルビジョンの一致を目指すという。

これまで、エネルギー分野には多くの大企業が参入してきた。設備容量のトップは約1,500MWのTrung Nam Group、次いで約1,200MWのXuan Thien Group、約600KWのBCG Group、400KW超のTTC Groupと続く。国会で電気事業法が改正されれば、企業が送電網の建設事業に投資できるようになり、2021年から2030年の同事業の投資資金は約140億ドル(年間約14億ドル相当)に上るだろう、と専門家は期待をのぞかせる。