Vietnam Investment Review

30年以上の時を経て、ベトナムはICT(情報通信技術)産業の外国投資誘致において、他の東南アジア地域諸国と肩を並べるまでになった。この業界は、グローバルなバリューチェーンに広く深く組み込まれつつあり、ベトナムにとって国際市場拡大のための多くの好条件が生み出されている。ベトナムを最も重要視するデジタル技術業界の大手企業が際立って増えてきているのだ。

電話機、コンピューター、コンポーネントなどの業界では、 外資系企業が輸出グループの主な割合を占める。過去5年間、電子機器業界は自国の輸出総額と、外貨及び貿易収支に大きく貢献してきた。2021年、電子ハードウェアの輸出は、輸出収入1,218億ドル、27.4%上昇。初めて1千億ドル台を超え最近5年間で最も高い水準を示した。

また、海外からの投資により、ベトナムは世界でも有数の電子業界発展拠点地となり、Samsung、Foxconn、LG、Panasonic、Intel、Electronics、Nokiaなど、大手企業を誘致している

ベトナムは電話機の輸出では世界第2位、コンピューター・電子部品の輸出でも、世界第6位にランクされている。さらに、 マイクロチップ、プリンター、ソフトウェア、ビデオゲームなどの分野でも、世界の輸出大国トップ10入りを果たした。

海外からの資金調達は、ベトナムにおける製品や ビジネスに多大な影響を与えている。ベトナムでは、ICT製品の現地化が進んでおり、外資系企業のハードウェアや エレクトロニクス業界においては、現地化の割合は約31.9%にもなる。

ソフトウェア、デジタルコンテンツ、およびITサービスに関しては、案件決定段階から研究、設計、プログラミング、保証、保守、コンサルティング、技術サポートに至るまで、ベトナム企業が技術、製品、生産等のプロセスを統括管理することが可能なため、現地化率は約80%に達している。加えて、研究、創造、生産、技術の習得など、ベトナム製製品における国内リソースの充実がますます進んでいる。

ベトナムが今後も成長を目指すのなら、テクノロジーや規格をオープンにして世界と肩を並べられるようにならなければいけない。それに伴い、ベトナム政府には、デジタル技術を活用したソリューション製品の開発において、外資系企業と協力し、国のデジタル変革を進める準備が求められる。

いちユーザーの立場から、ベトナムは外資系企業と協力し、国内の問題を解決するための デジタル技術製品を研究・開発し、さらには国際的にマーケットを開拓していくことになる。

この変革は、自国の産業化と近代化のプロセスを短縮することで加速させ、デジタル技術産業をプラットフォーム化して発展させるための画期的な新開発手法と捉えている。ベトナムでは、インダストリー4.0(第4次産業革命)の恩恵を受け、全産業においてデジタル変革を全国的かつ包括的に推し進めている。

その実現には、国力と並行して国外からの力を活かして、 デジタル変革や社会経済発展のプロセスを加速させる体制を整えることが必要だ。

ここ数年、外資系企業によるICT産業への参入は、ベトナム人労働者の資質とスキルの向上に寄与しており、世界の先端技術をベトナムに導入し、経済と社会の両面で地域や他国との統合を深める重要なチャネルとなっている。

ベトナムにおいて外資系企業は、ICT産業の重要な構成要素であり、デジタル技術企業の一部であると考えられている。健全な競争環境の中での連携・発展が奨励され、ベトナム企業に協力した外資系企業は、ベトナムのデジタル変革に新技術を適用させることで、結果的に持続的成長への絶好のチャンスを得たと言えるだろう。

外資系企業を効果的に取り込むためには、税制や土地優遇などの金融優遇措置のほかに、環境面での発展、ベトナム企業と外資系企業(特にグローバルテック企業)とのサプライチェーン連携を強く意識した投資誘致や融資に関する政策の改善が必要である。

ベトナムは、まずグローバルミニマム税を含む制度や法律の制定、国内外の関係性、社会経済インフラの近代化、国の行政改革のスピードアップなどへの取り組みが求められる。

次に、ハイテク産業に位置づけられ、一定の特性を有するデジタルテックと変革についてである。ベトナムでは、具体的、集中的、かつ重要な優遇政策が不可欠となる。半導体チップで言えば、先進国は軒並み開発プログラムがあり、資金調達のためのファンドを持っている。TSMCとソニーが共同で熊本県に建設する半導体工場の建設費約35億ドルのうち、半分を日本政府が資金援助していることが例として挙げられる。

そして第三の側面として、質の高い労働力を育成するための投資拡大がある。これは、デジタル技術において資金調達を行う際の決め手となる重要な要素であると考えられている。政府は、研究開発だけでなく教育プログラムにも資金を投入するべきだろう。と同時に、国内外の企業と行政のリソースを基盤に、ビジネスニーズに適した実務経験を持つ質の高い人材育成センター設立の支援は不可欠となる。