Vietnam Investment Review

今、ベトナムの不動産に外国人投資家から熱い視線が注がれている。しかし、これまで取引が成功したケースはほとんど見られないのが実情だ。

アメリカで総合不動産業を営むジョーンズ ラング ラサールグループ(JLL)は6月14日、インドネシアおよびホーチミン市の大手ホテル(計3軒)のポートフォリオ売却において顧問委託を受けたことを公にした。

その3ホテル(インドネシアのプルマン・ジャカルタ・セントラルパーク、ホーチミン市7区のイビス・サイゴン・サウスおよびカプリ・バイ・フレイザー)は総額1億600万ドル超で売却に成功。JLLによると、今年に入って東南アジア市場でホテルポートフォリオが売却されたのは今回が初めてだという。

5月末、シンガポールの複合企業であるケッペルグループはトゥードゥック市のカンディエン・ハウス・トレーディング・アンド・インベストメントから2物件の株式を約1億3,500万ドルで獲得したことを発表した。その内訳はエメリア(6ヘクタール)およびクラリタ(5.8ヘクタール)。結果的に、ケッペルグループが両社の株式のうち49%を所有し、残りの51%をカンディエンが保持することとなった。

ベトナムの不動産会社サヴィルズ・ベトナムのニール・マクレガー代表取締役は先月末、同社の投資コンサルティング部門がそれぞれ5,000万ドルから1億ドル規模のM&Aを5件以上手掛けていることを明らかにした。

海外の機関投資家がホーチミンおよびハノイで営業中のオフィスビル3軒の購入に加え、多くの国内投資家もホテル物件の獲得に意欲を見せている。

ベトナム不動産協会(VARS)によると、不動産にかかわるM&A取引に関与して、ノウハウを得る海外投資家が急増しているという。

注目すべきは、シンガポール、韓国、台湾、日本、マレーシアの投資家だ。しかし、VARSによれば取引が成功した例は極めて少なく、大規模なM&A取引はいまだ開示されていない。

さらに追い打ちをかけるのが昨今の厳しい経済情勢。多業種企業がコアマーケットに集中せざるを得ず、中小規模の取引しかできない状況にあるとVARSは分析する。

不動産投資の流動性低下と金融コストの上昇を考慮すると、購入に必要な資本を移動できる国内不動産開発業者は多くない。したがって、VARSは外国資本が流入するだけで10億ドル規模の取引が増えると見込んでいる。しかし、その大半はまだ評価や交渉の段階にある。

「取引成立に至らないもう1つの理由は、多くのプロジェクト投資家が未だに非現実的な期待を抱いたり、それに失望したりして、利益を生むまでに苦心しているからです。そのため、提示価格に説得力がないのです。」とVARSは解き明かす。

加えて、法的な障壁が立ちふさがる。譲渡を希望するケースでも、その資格が認められないプロジェクトは少なくない。VARSいわく、これは「法制度の矛盾と土地管理手続きの複雑さが原因」だという。近い将来、M&Aが行われ調印されれば、市場回復の原動力となるであろうことをVARSは強く訴えた。