ベトナムで食品・飲料業界は、急成長を遂げつつある。業界に画期的な変革をもたらすパイオニア的パートナー企業「Bloom.」についてTetra Pak Vietnamの社長Eliseo Barcas氏とDenEast VietnamのCEO Johan Boden氏が、VIRに語ってくれた。
Bloom.について聞かせてください。また、このビジネスモデルを他国で展開したことはありますか?
Barcas: この革新的なプラットフォームは、Tetra Pakと受託製造サービス・プロバイダーDenEastの提携開発によるものです。
このプラットフォーム開発は1年半前から計画されていました。製品開発のあらゆるノウハウを駆使して、新たなコンセプトをスピーディーに生み出し、費用対効果が高い新機能を備えた革新的な製品を市場へ提供することを目的としています。
実店舗での新製品体験ができないユーザーには、リモート体験も可能です。
さらに、柔軟で高度な技術を利用することができ、DenEastが持つ食品ライセンスのおかげで、試作から生産段階まで幅広く対応することが可能です。最大のメリットは、設備投資をすることなく、自社ブランド製品を販売できるという点です。
現在、Tetra Pakグループには、世界各地に11か所の製品開発センターがありますが、これ程大規模なケースは今回が初めてです。このセンターの最大の特徴は、専属の委託製造業者と業務提携をしていることにあります。ブランドの大小を問わず、大規模生産の開発と拡大を実現することができるようになったのです。
クライアントとなる企業はBloom.に何を提供する必要がありますか?Bloom.を利用して新たに飲料製品を開発する場合、どのような過程をたどることになるのですか?
Barcas: 必要なことは、「この製品で何をしたいか」というアイデアとビジョンだけです。あらゆる優れた製品はビジョンから生まれると信じています。クライアントのビジョンと私たちのリソースによって、アイデア発想から本格的な生産に至るまで、あらゆる面で新たなイノベーションの実現へと導きます。
まず、私たちが持つ幅広い市場分析力をどのようにクライアントのアイデアに活用するか検討します。そして、その製品を市場に展開するための可能性と課題を特定します。
さらに、クライアントのアイデアを練り上げ、ビジョンに沿った新たなアイデアを生み出せるよう、私たちのチームが一丸となってサポートいたします。その後、製品の試作品を製作し、機能性と実現可能性を評価した上で、評価グループによる試用を通じて製品の妥当性を検証します。
ひとたび試作品の有効性が認められたら、新製品がターゲットとする消費者に魅力的に映るように、ブランド・デザインの制作を始めます。
次に、小ロットで製品を製造し、消費者のフィードバックを通して品質評価を行います。
それがうまくいけば、小中規模から、大規模生産へと段階的に移行するための、状況に応じた戦略策定をサポートします。
従来型の施設と比較して、統合型施設の特徴とはどのようなものですか?
Boden: 今日のイノベーションの主流は、何段階もの工程を経て、複数の拠点で行われるというものです。企業は、まず製品開発に着手し、次に別の施設に移動して小ロット生産を行い、最終的に大規模な施設で製品試作を実施します。この方法では、非常に時間がかかり、しかも作業が断片的になってしまいます。
こうした課題を解決するため、私たちはTetra Pakと提携して総合的な対策を考案しました。つまり、製品開発プロセスを一元化し、アイデア段階から市場に送りだせる製品化まで全ての工程を、同じ場所で完結できるようになります。
さらに、食品ライセンスの確保、加工許可の取得、ゆるぎない品質管理システムの確立など、食品を消費者に届けるために不可欠となるあらゆる課題についても対応します。
このイノベーションセンターの候補地にベトナムが選ばれた理由をお聞かせください。
Barcas: インフレによって引き起こされた厳しい状況にもかかわらず、ベトナムは安定した経済成長を続ける魅力的な国です。2030年には、世界の消費市場トップ10入りすると見られています。
ベトナムの人々は、健康と環境問題に強い関心を示しており、環境への影響を最小限に抑えながら、健康的な生活をサポートする製品を求めているのです。
ベトナムの食品・飲料業界は、ここ3年の年間平均成長率(CAGR)が3%と、順調に成長を続けています。さらに、今後3年の年平均成長率は6.1%に跳ね上がると予測されており、世界平均の2倍を超えると見られています。
Bloom. は、急増するベトナム1億人の消費者の需要に応えるために、食品・飲料(F&B)メーカーが新製品を売り出すための理想的な支援体制を整えています。
ベトナムという戦略的な地理的位置づけを活用すれば、ローカル・ブランドに効果的なサービスを提供し、業界の地域的な革新拠点として機能することが期待できるのです。
同業他社と一線を画すこのイノベーションセンターには、どのような特性が備わっているのでしょうか?
Boden: 特筆すべき特徴のひとつは、一元化された総合サービスを提供し、アイデアから実際に製品を生み出すことが出来るという点でしょう。とりわけ重要な点は、単なる物理的なインフラや施設をはるかに超えて、人材と専門知識、そしてこれまでの経験といった根本的なイノベーションであるということです。
このセンターは、グローバルに展開するTetra Pakのすべての拠点と相互につながり、効率的な技術的問題解決のために、あらゆる面で優れた能力を活用することができます。さらに、原材料調達やレシピ開発業界の大手企業と確かな提携関係を築いています。
このような取り組みによって、あらゆる角度からの問題解決と、迅速に製品を売り出せる幅広いノウハウを構築しています。
このセンターが、食品・飲料業界に与える商業的影響、もたらす画期的変革について考えをお聞かせください。
Barcas: このイノベーションセンターは、小型から大型まで、ベトナムのすべてのブランドに活用される予定です。ベトナムの飲食ブランドは、競争力を維持するために革新的な製品が必要であるということを理解しつつも、往々にして業界特有の壁に突き当たっています。
例えば、小型ブランドは人材の制約や専門知識の不足に悩まされ、大型ブランドは生産の中断や微細な技術革新を可能にする専用施設の不足という問題に直面しています。食品業界におけるTetra Pakが誇る70年の伝統とDenEastが持つ確固とした製造能力を活用するという画期的な取り組みは、そのためにこそあるのです。
最終的な目標は、製品開発サイクルを根本的に加速させ、これまで数年かかっていたスケジュールを数ヵ月にまで短縮することです。このセンターは業界に新風を吹き込み、革新的な製品を低コストで市場に送り出し、ブランドにも消費者にも大きな恩恵をもたらすことになります。
このプラットフォームは、イノベーション主導経済への転換を目指すベトナム政府の意向にどう対応し、どのような形で支援できるとお考えですか?
Boden: 「イノベーション中心の経済へと国家を推進していく」というベトナム政府の構想は、とてもすばらしいと思います。私たちの役割は、製造だけに焦点を絞るのでなく、付加価値連鎖(バリュー・チェーン)を向上させることによって、一連の流れを円滑にすることであると考えています。つまり、専門知識の結集、人材育成、グローバル連携の確立、斬新な取り組みを先導することなのです。
さらに重要なことは、私たちの戦略は、持続可能性にも着目していることです。ベトナムは2050年までに炭素排出量ゼロの達成を目指しており、私たちはこの目標を積極的に支援していきます。
太陽光発電の利用や 生質班(バイオマス・チーム)などの革新的な対策など、持続可能性という面でTetra PakとDenEastの取組みとその成果を示していこうと思っています。このような高い目標達成には、他社との連携と開かれた情報共有が必要不可欠であると確信しているのです。
私たちのチームは、食品科学者、製造工程の専門家、包装の専門家など、高い技能を持つベトナム人および国際的な専門家で構成されています。高度な技術と革新的な技術を確実に習得できるよう、研修にはかなりの時間を費やしています。現在、食品・飲料業界の革新的な発展に向けたサポート体制を整えており、ベトナムがイノベーション型経済へ進化することを積極的に支援していきます。