このほど、ベトナム商工会議所(VCCI)と中央経済管理研究所(CIEM)は、新型コロナウイルス感染症発生時でも生産活動を停滞させない対応策について議論するワークショップを開催した。
ベトナム繊維・アパレル協会(Vitas)の会長であるVu Duc Giang氏は、首相指示第16号による全国規模の社会隔離の実施で経済界は圧力を受け、南部19州の生産活動の障害になっていることを指摘した。地方自治体が指示に対して柔軟に取り組まず、新型コロナウイルス感染発症事例がなくても、事業を閉鎖せざるを得ない企業もあるという。
Giang氏によると、新型コロナウイルスの再拡大により、南部地方の繊維・衣料品メーカーの97%が操業停止に追い込まれたという。
繊維・衣料品業界は、生産能力のわずか10〜15%で運営されているが、ベトナムの企業は、海外のパートナー企業から衣類などの製品納入を急かされている。セールシーズンが終わってしまってからでは、どこも製品を受け取りたくないからである。
衣料品メーカーの中には、北部の下請け企業へアウトソーシングを検討するところもあったが、資材の輸送が容易ではなく、途中で検問を受ける恐れもある。
だからと言って、他国へ発注をシフトするのは一時的な対処に過ぎず、長期的に見ても、ベトナムは衣料品ブランドにとって、最適な国の一つであることに変わりはない。
Vietnam Logistics AssociationのNguyen Duy Minh事務局長は、貨物輸送を「4つの鍵を持つ錠前」に例える。その鍵とは、保健省の要請によるドライバーの陰性証明、運輸省が要求するQRコードと「グリーンパス」、投資貿易大臣が要求する「必需品」のみの輸送、そして地方自治体が設置するチェックポイントである。
この4つの要因が、輸送コストの高騰を招いているのだ。
ホーチミンに所在する Food and Foodstuff Association (FFA)のLy Kim Chi会長は、食品・食料品メーカーが稼働停止したら、サプライチェーンも混乱をきたすと危惧する。
また、生産活動を妨げないようにするため、現場で生産・現場で食事・現場で休憩という「3つの現場主義」というモットーを実践しても、生産性を保つには、短期間しか効果がない上、家に帰れない労働者はストレスを感じ始めるのだ。その一方で、企業は労働者のために1日3食用意しなければならず、労働者の中には1日20万ドンの手当を受ける者がいても、生産体制のすべてを維持するためにはこれでは十分とは言えない。
海外の業界にも不安が生じているとEuroChamの副会長であるNguyen Hai Minh氏は懸念する。国内外のサプライチェーンが寸断されるのではと危ぶまれる一方で、政府からの詳細なガイダンスは発せられないままだ。地方ごとに定められている規制は様々で、とりわけ「必需品」に至ってはそれが顕著である。
アナリストによると、欧米の市場は再開され、需要が増え始めているという。このままでは、ダウンタイムを最小限に抑えられない企業は、サプライチェーンから排除されてしまうことになる。
何万人もの労働者が故郷に戻ってしまったため、労働力不足も生じるだろう。そうなると、何か国もの企業からの大量注文に応じる生産体制や素材の供給確保に困難な状況が生じることになる。「繊維・衣料」「靴・バッグ」「電子機器」「木材・木工品」の4つの産業の輸出総額は年間1,500億ドルに上り、国の総輸出額の60%を占めているという。こうした産業に800万人もの労働者が雇用されている。もし、サプライチェーンの崩壊が始まれば、社会経済の発展に影響を与えかねないのだ。
求められる企業の自己決定力
ベトナム電子工業会(VEIA)のDo Thuy Huong氏は、パンデミック防止の観点から、政府や各省庁は見解を変える必要があると提言する。企業を政府の管理下に置くのではなく、重要な武力となる協力者のひとつとして捉えるべきであるという。企業が率先して生産体制を整え、パンデミック対策に取り組むことができるよう、政府による具体的なケースに応じた対策基準の構築が求められている。
パンデミックが長期化しても、営業を停止し続けることはできない。もしそうなれば、生産チェーンに混乱をきたし、労働者は仕事を失ってしまう。企業も生産体制を整え、現場での医療管理を行うための支援が必要となる。
医療プロセスの基準に従って、労働者の自宅と職場間の行き来に企業が責任を持つことを政府が認めるよう提案します。労働者を検査できる簡易検査キットを企業が購入できるようにするべきなのです。“グリーンゾーン”を守り、生産活動を止めないために、企業による感染者の発見とその対処法(労働者を職場で隔離し、病院に連れて行くなど)を学ぶためのプロセスを保健省が講じる必要に迫られています。
CIEMの元代表である経済学者のNguyen Dinh Cung氏は、通常通り生産活動し、企業に責任を持たせることが良いのではと見ている。労働者を保護するためには、幅広い自治権を企業に与えるべきである。そして、鍵となる貨物輸送において、「必需品」のリストを削除し、ドライバーの必要条件(検査結果、有効期限、検査方法)を全国で統一することを同氏は提案した。