Vietnam Investment Review

世界的な金融危機の影響を受けているASEANでは、海外からの資金調達を促進するための新たな計画の一環として、投資促進の枠組みが策定されている。

先週開催されたASEAN経済大臣会合で行われた第24回ASEAN投資地域協議会では、ポストパンデミックの最優先事項である外国直接投資(FDI)の招集に関する地域メンバーの取り組みと実施状況に基き、投資促進枠組み(AIFF)が発表された。

AIFFは、ASEAN諸国メンバーに対して、実践的な提言を行っている。Lim Jock Hoi ASEAN事務総長の見解には、投資促進のプロセスと手続きの改善が最も重要な目標であり、これには投資措置の透明性と予測可能性の向上、行政手続きと要件のストリーミング化および迅速化、中でも国境を越えた問題に関しては、その調整と協力強化が含まれる、とある。

「人と資本の移動については、域内および域外からの人材流動を強化するとともに、人と資本の移動に必要な規制・枠組みを提供することに重点を置くべきです。」と事務局長は述べた。

また、デジタル化、現代の経済、サステナビリティも、持続可能な開発に貢献するセクターへのインセンティブを強化し、新たな経済を呼び込むために今日的なテクノロジーを活用することで、連合が注目している。

「景気回復のためのFDIの役割は極めて重要で、自由化と保護に焦点が当てられていますが、AIFFが目指している促進と円滑化についてはあまり注目されてはいないのです。」とHoi氏は続けて述べた。

ASEAN加盟国では、FDI招集を改善するための取り組みが行われている。カンボジア、ラオス、ベトナムなどの諸国では、官民対話メカニズムの構築、ビジネスサポートセンターやワンストップオンラインサービスの設置、ビジネスや貿易に関連する数多くの法規制の改正などが行われている。

他にも、ミャンマーでは、法規定の更新に加えて、経済成長への推進力と見なされた包括的な経済回復計画 が今月末承認され、その鍵を握る要因となるインフラ整備に関心を示している。

また、インドネシアの投資省は、2022年初頭に予想される世界的な健康危機からの回復後は、鉱業が同国の主要産業になると睨んでいる。

2020年のASEANへのFDIフローは、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響により、過去最高だった2019年の1,820億ドルから25%減の1,370億ドルとなった。減少を示したものの、ASEANが魅力的な投資先であることに変わりはなく、世界のFDIに占める割合は2019年の11.9%から2020年には13.7%に上昇した。現在、ASEANへの最大の投資元は米国で、その割合は30%を超え、域内FDIをも上回っている。次いで、香港(8.7%)、日本、中国、韓国、カナダと続く。

ベトナムのNguyen Thi Bich Ngoc計画投資副大臣は、新型コロナウイルス感染症が世界中の経済にもたらしている課題を踏まえ、健康危機がベトナムとその近隣諸国にもたらした、投資の再配置やサプライチェーンへの参加などの機会について言及した。

「AIFFは、ASEANにおける目下のパンデミック発生と、その地域および世界のサプライチェーンへの影響、さらにはFDIの移動傾向について、何らかの評価を行うべきだと思います。このような状況では、交通や入国管理に関わる円滑化のためのソリューションがまさに求められているのです。」とNgoc氏は提言する。

ASEAN投資サーベイランスレポート2020では、2020年の同連合の実質GDPの成長率は、過去10年間の4.7~6.2%から低下し、-3.3%と推定された。2021年には4%、2022年には5.2%まで回復すると予測されている。

「しかし、新型コロナウイルス感染症の新種が発生したり、一部の加盟国では予防接種の普及率が低かったりするため、これらの予測は必ずしも具体的ではありません。」と、ASEANのHoi事務局長は懐疑的である。

他のASEAN諸国と比較して、ベトナムは2021年もプラス成長が見込まれている。昨年のベトナムへのFDI登録額は15%減少したが、これはASEAN全体の平均的な減少率31%よりも低い数字である。今年初頭からの8ヶ月間の登録FDIは、前年比で2%の減少を示したものの、良好な状況にとどまった。

過去10年間、ベトナムは2013年の10.4%から2019年の81%というピークに達した期間の驚異的なFDI登録の成長率のおかげで、海外からの資金調達の魅力的な目的地とされている。一方、シンガポールは過去6年間で63%の成長を報告しているが、タイとマレーシアはその減少を認めた。

新型コロナウイルス感染症発生以後のASEANにおける経済的影響

国連貿易開発会議の「Asia-Pacific Trade and Investment Trends 2020-2021」によると、ASEAN加盟国は2019年と2020年のいずれにおいても、域内投資の最大のサブリージョンの1つであり、全体に対する割合は、各年35%、20%を占めていた。このサブリージョンからの域内投資は、2018年と2019年には480億ドル前後で安定していたが、それでもさすがに、2020年の初頭から8ヵ月間は100億ドル弱と大きく落ち込んでいる。

この大幅な減少には、サプライチェーンの大規模な混乱や、ロックダウン措置による投資プロジェクトの延期・中止が多大に影響している。シンガポールとタイは、2019年と2020年のいずれにおいても、ASEANからの域内FDIの最大の供給源であった。ASEANからの全域内投資のうち、シンガポールにおいては2019年に26%、2020年には85%までシェア率を上げている。一方、タイは各同年で17%、13%を占めている。

2020年と2021年はパンデミックの影響で域内投資は全体的に鈍化している。2022年までに状況が回復するとは思えないが、先頃の地域包括的経済連携(RCEP)の締結により、フローが強化され、投資の見通しがよくなることが期待される。

ASEANへの流入は2019年に大幅に増加したものの、2020年にはパンデミックの影響もあり、急激に先細りしている。これらの経済圏は製造業において地域および世界のバリューチェーンに高度に統合されているため、生産を一時的に停止するロックダウン措置が投資水準の低下を招いていることが具体的な要因として挙げられる。

例えば、マツダ、日産はタイ工場の稼働を止め、フォードはタイとベトナムでの生産ペースを一時的に遅らせ、トヨタはインドネシアとタイでの生産を一時停止した。また、繊維・アパレル業界をはじめとする他の分野も同様に生産停止に追い込まれた。こうした一時的な工場の操業停止は、全体的な投資レベル、とりわけ再投資収益やグリーンフィールド投資レベルの低下につながると予想される。

今回の危機により、サブリージョンの投資は低迷しているが、確立された貿易・サプライチェーンネットワーク、中間層の増加、教育を受けた若い労働力があるため、中長期的には回復の見込みが高い。自動化への進展と、世界のバリューチェーンの広範な需要と供給へパンデミックが与えたショックという二重の圧力により、大手企業はサプライチェーンとの依存関係とその回復力向上について見直しする必要に迫られている。

今後、中・短期的には、重要な部品や機器のニアショア・リショアリング化(*1)を進める企業が増える可能性がある。これは、バリューチェーンに関連したFDIや、バリューチェーンネットワークに高度に統合され、依存している中小企業にも重大な影響を与えるだろう。したがって、RCEPやASEAN経済共同体を通じた地域統合強化は、競争力を高めるための新たな、他にとって代わるビジネスチャンスを企業へ提供し、その重要性はさらに増すと予想される。さらに、AI、ブロックチェーン、5Gなどのデジタル技術を駆使した新たなバリューチェーンでの競争力を企業が強化することで、有利な政策環境という支援を受けて、さらなる機会を得られるかもしれない。

United Nations Conference on Trade and Development

(*1) リショアリング=主に製造業などにおいて、海外に移した生産拠点を再び自国へ移転すること。ニアショア=開発業務を部分的もしくは全部を、比較的近い距離の場所にある企業に外注すること。