台湾の大手DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)メーカー、Nanya Technology社は、ベトナムを含む東南アジア諸国のロックダウンや中国の電力不足が半導体不足を招く恐れがあるとの懸念を示した。

日経アジアによると、世界第4位のDRAMチップメーカー、Nanya Technology社は、2022年の第1四半期末まで、同チップの値上げの可能性を示唆した。
Nanya Technology社のLee Pei-ing社長は、「サプライチェーンに予測しなかった問題が多く発生しています。半導体の供給不足は多くの電子機器メーカーにとって、予想以上に深刻な状況をもたらしました。ベトナム、マレーシア、タイにおける新型コロナウイルス感染症によるロックダウンが、それに追い打ちをかけたことで、生産工程上のボトルネックになってしまったのです。」と語った。
また、Pei-ing氏は中国におけるインフレや電力不足も半導体チップ不足につながると懸念している。
教育用Chromebookを中心とした個人向けパソコンの需要が低迷している中、半導体不足はテレビや自動車の分野にも大きな影響を与えているという。多くの機器メーカーは、電源管理、オーディオ、マイクロコントローラーなど、特殊な半導体チップが極端に不足しており、これらの部品が生産の段階で、1つでも欠けてしまうと、デバイスの製造ラインを止めざるを得ない。
一方、Pei-ing氏は、チップ不足は長期化せず、来年までに、このサプライチェーンの問題は解決されると考えており、さらに、サーバー、スマートフォン、その他個人向け家電製品の潜在的な需要は依然としてかなり堅調であると付け加えた。
このNanya Technology社のコメントは、世界最大の半導体メモリーメーカーであるMicron Technology社が、今期の見通しの引き下げを行った数週間後に述べられたものだった。同社によると、メモリ以外の部品不足により一部の機器を組み立てられなったことで、PCメーカーからのDRAMやNANDチップの発注数が減ってしまったと分析している。Micron Technology社もNanya Technology社と同様、半導体チップの需要は今後回復するとの見込みであると、日経アジアは報じた。一方、KPMG Vietnamのアソシエイトディレクター兼不動産M&A・ディール・アドバイザリー部長のMeir Tlebalde氏は、半導体不足がベトナムの自動車産業に与える影響について、次のように語った。
ベトナムの自動車産業はタイの3分の1、インドネシアの4分の1の規模に過ぎず、他の国ほど影響を受けることはないでしょう。ベトナムに生産拠点を持つ自動車メーカーのうち、スズキやVinFast社は生産量に減少が見られました。その一方、トヨタ自動車やホンダ技研工業への半導体不足による影響は、さほど大きくはないと伝えられています。
しかし、半導体不足と輸送の停滞がサプライチェーンに混乱をもたらし、納期の延長化、価格の上昇、半導体チップ不足を見込んだ大量調達などの問題が生じていることは事実です。特に南部地域の工場では、ロックダウンによる操業停止や、ソーシャルディスタンスの確保のため、通常時に比べ、非効率的な作業を強いられました。さらに、原材料不足が重なり、その上新たな供給網がないため、企業規模にかかわらず、ベトナムの全メーカーに支障をきたしているのです。中でも、インテル、サムスン、LGなどの半導体需要の大きい外資系大手企業は、調達先の変更や追加が容易ではないため、中堅企業よりも大きな負担を強いられています。