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現在、厳しいコロナ禍にあるベトナムでは、大都市から帰省する人々のために、「大胆な思考と行動力、責任感のある」リーダーが求められている。

10月6日、保健省はホーチミン市、Binh Duong省、Dong Nai省、Long An省から帰郷する人へのコロナ対策ガイドラインを発表した。

ワクチン接種が完了した人やコロナ感染既往者に対し、初日の検査と7日間の自宅待機とするものだ。

この新たなガイドラインは、ホーチミン市から数十万人の移住者を受け入れているメコンデルタの集中隔離地域の行政機関や医療機関の負担軽減につながると考えられている。

10月初旬に、南西部のロックダウンが緩和されたことを受け、ホーチミン市、Binh Duong省、Dong Nai省、Long An省の労働者数万人が、故郷である南西部の省に押し寄せることとなった。

公安省によると、ホーチミン市、Binh Duong省、Dong Nai省、Long An省の4つの都市・県には、全国から約350万人の出稼ぎ労働者が集まっており、そのうち約210万人が故郷に戻ることを希望している。

Pham Minh Chinh首相は政府会議で、「出稼ぎ労働者の帰郷を望む声が多いのであれば、地方自治体は彼らの受け入れ体制を整え、帰郷ラッシュとならないよう安全対策を練る必要があります。」と述べた。

同首相は、州政府に対し、ソーシャルディスタンスの確保、地域医療システムや遠方からも簡単に医療サービスを受けられる遠隔診療体制の強化などを求めた。

また、新型コロナウイルスと共存していくための心構えとして、帰郷時も、自身で率先して疾患対策の意識と自立性を促すよう訴えた。

故郷に帰れば、集中隔離区域とは違い、十分な食料や薬、安心感などが得られるなどのメリットがある。

観光客の受け入れが始まったCan Gio県とChu Chi県

自宅で十分に隔離環境を整えられない人のために、集中隔離区域が設けられている。

保健省によると、新型コロナの陽性者の約8割は微熱、咳、倦怠感など軽度な症状のみで、1週間後には自力で回復できるという。

多くの人に明らかな自覚症状はないものの、2割近くの感染者が重症化するとされている。また、これまでのデータで、初期症状が重症化するまでの期間はおよそ5~8日ほどかかることが分かった。重症化した患者のうち5%は、治療が必要となるということが伝えられている。

陽性患者すべてではなく、本当に治療を必要としている少数の重症患者の治療に専念し、死亡率を軽減する必要があることをこのデータは示している。

故郷に帰る人が多いと収容力が十分でない学校や急場しのぎに過ぎない設備など、集中検疫地域の負担が大きくなっている。

一部自治体職員からは、人流を抑えるよう求めがあり、ホーチミン市から離れないよう呼びかけている。しかし、各省のトップは皆、4ヶ月間も食料不足と感染症への恐怖に直面し、精神的にも疲弊した市民の気持ちに同情を示している。

西洋医学と東洋医学の融合

死亡率が低いということで、ホーチミン市や政府から評価されているCu Chi県でのコロナ患者の治療例の周知を図る必要があるとの考えを専門家は示している。

Cu Chi県地区委員であるPham Thi Thanh Hien氏は、同県の治療方法は、特別なものではなく患者に果物などの栄養価の高い食事を確保することだと述べた。患者が毎日飲むレモネードやシトロネラ、ジンジャーウォーター等を作るために、教員が動員された。さらに、同県の隔離区域には、患者が部屋に閉じこもることなく、運動したり歩き回ったりできるように広いスペースが設けられており、音楽や治療方法を聴けるラジオも流されているという。

この環境下、無症状から体調が急変し重症化した例は、陽性者3,029人中、114人、わずか3.5%ほどにとどまり、Cu Chi県のこうした対策は効を奏したと思われる。

政府の新たな戦略による地方自治体毎の体制やCu Chi県の成功例は、新型コロナウイルスの感染が広がるメコンデルタ地域の12の省にとって参考となるだろう。

ワクチン戦略も医療体制と同じくらい重要な役割を果たしている。9月末の時点で、Long An省を除くメコンデルタ地域の12省の18歳以上の人口のうち、2回目の予防接種を受けたのはわすか4〜8%に過ぎないが、15〜35%が1回目の接種を完了している。

高齢者や基礎疾患を有する人の接種率が低い場合、新型コロナウイルスの罹患リスクは依然として高い。

そのため、メコンデルタの12省に居住する高齢者や基礎疾患を持つ人は、高いリスクにさらされているため、保健省は、直ちにワクチンを提供することが求められる。疫学者のNguyen Thu Anh氏の試算によると、ホーチミン市では50歳以上の8割にワクチン接種を完了させるには、100万回分のワクチンを追加する必要がある。また、Dong Nai省、Binh Duong省、Tay Ninh省、Long An、Ba Ria – VungTau省などでのワクチン不足はさらに深刻だという。ベトナムのGDPの45%を占めるこの地域では、約430万本のワクチンが必要とされている。