10月18日、National Innovation Centreが開催したデジタル・エコノミー・ワークショップにおいて、AlphaBeta社とGoogleは、ベトナムのデジタル経済のポテンシャルについて、大きくとりあげた。

「ベトナムのデジタル経済の可能性」と題された最新レポートが、10月18日に計画投資省のNational Innovation Centreで開催したワークショップで、AlphaBeta社とGoogleにより発表された。
会議の席上で、Tran Duy Dong計画投資省副大臣は、「デジタル経済は、Industry4.0(第四次産業革命)やIoT(モノインターネット)が登場する前から認識されていたわけではありません。しかし、今後、デジタル経済という概念は、経済全体に渡り、製造、運営業務をデジタル化する競争が始まるきっかけとなるでしょう。」とコメントを残した。
さらに、「新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、ベトナムは科学技術の進歩やイノベーションを起こし、デジタル経済を加速させ、生産性、効率性、競争力を高める必要があります。」と、今後の目標を述べた。
ベトナム共産党中央委員会政治局決議2019年第 52 号(No.52-NQ/TW)が採択されたことに基づき、ベトナム共産党と政府は、デジタル経済発展を成長戦略の骨子として後押しする。この決議は、2030年までに、ベトナムのGDPの30%をデジタル経済が占めることを目標としている。政府と計画投資省は、この目標の実現のための政策に取り組んでいる。

世界銀行のリードエコノミスト兼ベトナム担当プログラムリーダーのJacques Morisset氏は、ベトナムがオンライン主導のハイテク経済を発展させるためには、ベトナムのIT人材をより有効活用する必要があると主張した。同氏は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を成功に導くために優先すべき3つの取り組みとして、デジタルスキルや情報の質的向上とアクセスの促進、革新的なビジネス開発などを挙げた。しかし、ベトナムは国民のデジタルスキル開発が遅れており、企業にはユニークなアイデアを受け入れる土壌がまだ育っていないという。
「コロナショックは、経済に大きな打撃をもたらしましたが、ベトナムのデジタル化を加速させたという側面も持ち合わせています。現在、60%の企業がオンラインツールやプラットフォームを利用しており、2,000件以上の手続きをオンラインで処理できるようになりました。」とコロナによるデジタル化が進んだ例を上げた。
AlphaBeta社とGoogleの最新レポート「ベトナムのデジタル経済の可能性」では、デジタル技術をフル活用すれば、2030年までにベトナムに740億ドルの付加価値を生み出し、それは2020年のGDPの27%に相当するという試算もある。農産品・食品、教育・訓練、小売、サービス、観光の5つの業界がデジタル化により恩恵を受けるとしている。
ベトナムは、35歳以下の人口の7割が何らかの教育を受け、テクノロジーに精通しているとされており、全人口の約70%がスマートフォンを使用しているという強みを持つ。東南アジアではインドネシアに次いで2番目にインターネットの普及が進んでいるという。

レポートでは、モバイルインターネット、クラウド技術、ビッグデータ、AI、フィンテック、IoTとリモートセンシング、高度なロボット工学、アディティブ・マニュファクチャリングなど、今後デジタル経済で重要になるテクノロジー分野が大きく取り上げられている。
新たなビジネスモデルは、収益性の改善、コストの削減、企業の生産性向上などの効果をもたらすとしている。テクノロジーがもたらす変容は、企業やベトナム政府に大きな経済的価値を生み、GDPの成長に貢献する。
さらに、コロナ禍への対応と、コロナショックからの回服には、デジタル化は避けられないと指摘する。デジタル技術により、企業と顧客の関係構築がサポートされ、サプライチェーンの混乱による物流のボトルネックが軽減されるという効果が期待できる。これらをフル活用すると、ベトナムの潜在的なデジタル経済効果520億ドルのうちデジタル経済が70%を占めるという試算もある。
National Innovation Centre所長のVu Quoc Huy氏は、ベトナムのイノベーション・エコシステムとデジタル経済を高く評価している。同センターはすでにGoogleやAmazonなどの巨大企業とパートナー契約を結び、技術や電子商取引領域の人材育成のため、DXに関するオンライントレーニングなどのプログラムを行う予定だという。さらに、同氏は「今後、National Innovation Centreは、企業のDXを促進と支援のためのプログラムを構築、展開していきます。私たちは、ベトナムのデジタル経済を発展させるために、引き続き、計画投資省に政策を提案していきます。」と今後の展望を語った。