ベトナムのM&A市場ディールメイキング(取引締結)は、今年に入ってから回復の兆しを見せており、国内の数値はパンデミック前の水準を超える。
先週、Masan Group Corporation (HSX: MSN) は3億4,500万ドル、SK Groupが3億4,000万ドルでThe CrownXの二次株をキャッシュで購入する契約を締結した。取引完了後、MassanはThe CrownXの85%、SKは4.9%をそれぞれ保有することになるが、Massanは近い将来、The CrownXへの出資比率をさらに高める可能性がある。
Massanは、ここ数年の間ベトナムのM&Aシーンで最も積極的に活動している企業だ。VinMart+、Phuc Long Kiosk、新興のモバイル・バーチャル・ネットワーク・オペレーターであるMobicast JSCなど、数多くの事業を積極的に買収し、The CrownXのミニモールや、「生きがい」を意味するPoint-of-Lifeといったコンセプトを拡大してきた。
11月5日、Masan MEATLifeは、オランダ資本のDe Heus Vietnamと戦略的な契約締結を発表した。この契約に基づき、De Heusは飼料事業の経営権を取得し、ベトナムの動物性タンパク質のサプライチェーンに6~7億ドルを投資する。
先週、KIDOは5,298万ドルを投じて、ベトナム植物油産業公社(Vocarimex)の株式4,400万株以上、36.3%を国家資本投資公社から購入したことも発表した。この取引により、KIDOのVocarimexへの出資比率は51%から87.29%に急増した。
国際法律事務所であるWhite & Caseの最新レポートによると、今年のベトナムのM&A市場は、2020年の強力なパフォーマンスに続き、今年も堅調に推移する見込みということだ。2021年の第3四半期までに開示された取引額の合計は30億ドルに達した。年内あと1ヶ月半という取引期間が残っているため、このままいけば今年は2020年の年間総額39億ドルを超える勢いである。
この好調な業績は、主に第2四半期の活発な動きによるものだ。同期の19件という取引数は、四半期として過去最高を記録した。一方、取引額を見ると、25億ドルという数字は2017年第4四半期の52億ドルを下回りはしたものの、四半期としては過去2番目を記録したことになる。
第3四半期はロックダウンが相次いだことで、ディールメイキングは減少した。しかし、混乱が続く中でもそれが持続したことは、市場の回復力と地元の資産に対する持続的な需要があることの顕れであるとの見解を示すのは、米国の法律事務所White & Caseのパートナー、Jon Bowden氏。「訓練された低コストの労働力、急増する中産階級、安定した政治情勢などの強力なファンダメンタルズが、ベトナムが魅力的な投資先であり続けることの支えとなっているのです。」と同氏は述べる。
加えて、消費者金融、電子機器、小売などの高成長産業は、引き続き民間、戦略的バイヤーの双方から注目されており、最終四半期には多くのディールメイキングの機会があるだろうと予測している。10月に実施された規制緩和や、進行中のワクチン接種プログラムは、国の回復をさらに後押しすることになるだろう。同様に、Rajah & Tann LCT Lawyersの会長、Vu Thi Que氏も、VIRに次のように語る。
すべての企業は、新たなビジネスニーズの出現、政策の変更、消費者の需要により、協力関係の強化、戦略の再構築、ビジネスモデルのイノベーションが必要であることを認識しているはずです。
パンデミックの影響を大きく受けたセクターでは、M&A取引がより活発化しているようだ。不動産ビジネスは大方の取引が凍結されていたが、買収分野では活発な動きが見られ、とりわけ事業用物件、ホスピタリティ業界の不動産買収においてそれは顕著であり、M&A案件の40%を占める。
また、M&Aを選択する国内企業の数が増えていることもQue氏は付け加えた。買い手側となるベトナム企業は2018年にはわずか18%に過ぎなかったが、2019年~20年にかけて、その割合は30%にまで上昇した。
Que氏によると、協働や連携によって事業を再構築する企業が増える傾向にあり、2019年~21年まで、その割合は、ジョイントベンチャーが9%、合併が11%に上ったということだ。
一方で、M&A案件取引が展開する市場の内訳は、45%が1つの業界の関連市場に絞られ、19%は別の業界に携わる企業、36%がその他の市場取引となっている。
「とはいえ、新型コロナウイルス感染症の影響下でベトナムのM&Aは今後も強く成長し続けると思われますが、チェーンリンクやビジネスモデルの転換、事業拡大といった戦略が必要です。この長いパンデミック後のM&Aは、より持続的な成長のために、協業や提携といった形をとるようになるでしょう。」とQue氏強く語った。