Vietnam Investment Review

ベトナムでは専門特化した工業地帯計画案件が承認されることになり、近代的なエコロジーモデルやハイテクプロジェクトに参加する動きが投資家たちの間で見られ始めている。

環境に配慮した工業団地への転換を目指すベトナム。

昨年末、Kinh Bac City Development JSC(KBC)はベトナム北部のHung Yen省に200ヘクタールの新たな工業団地(IZ)開発の認可を得た。KBCのCEO、Nguyen Thi Thu Huong氏とACI Capital Co, Ltd.の会長、Robert Harold Hughes氏は、10億ドル規模の基本合意書に署名した。

ACI Capitalは、KBCの産業クラスターや工業団地のハイテク、物流センター、廃棄物発電所などのプロジェクトにおける調査及び開発サポートを手がける。

先月、首相はベトナム北部Thai Nguyen省にあるTan Hoang MinhグループのYen Binh Specialised IT Park(200ヘクタール)を基本計画に加えることを承認した。研究開発、研修、商業・サービス、物流ハブを網羅する同工業団地に4億3,500万ドル以上を投資することになる。同プロジェクトは、サムスン電子のハイテク施設を筆頭に、Yen Binh Parkで進められるプロジェクト間をつなぎ、支援の中核となることが期待されている。Tan Hoang Minhグループの副社長、Tran Hong Son氏は、次の通りコメントを残した。

Yen Binh Parkは、ハイテクパークに相応しい工場やサービス施設が整い、生産、仕事、リラクゼーションといった点で最大のメリットをもたらします。

中国から東南アジア諸国への工場移転の流れを受け、日本、韓国、米国、シンガポール、ヨーロッパから資金力と先端技術を保有する多国籍企業や戦略的投資家を迎えるため、近代的で統合的なインフラを備えたITパークを建設します。

ベトナム計画投資省の経済特区管理局によると、63都市・省のうち61都市に395の工業地帯が開発され、総面積は12万3000ヘクタール。21地方にある26の国境経済区(EZ)は総面積76万6000ヘクタール、沿岸経済区は合計18特区存在し総面積87万1500ヘクタールに及ぶという。経済特区管理局のTran Quoc Trung副局長は、ハノイで開催されたベトナム経済特区投資促進フォーラムで、経済特区の重要性を訴えた。

経済特区は国内外の投資プロジェクトの誘致に必要不可欠であり、今やベトナムに世界中からかなりな数の大手企業が進出し、多くの製品が世界市場へ輸出されています。そのため、東南アジアおよび世界の経済界におけるベトナムの地位向上に貢献しているのです。

2021年10月時点で、ベトナムでは約11,000に上る外資系投資プロジェクトが誘致され、資本金の総額は2,302億ドルに達している。サムスン電子の176億ドル、Formosaの120億ドル、LGの32.5億ドルなど、海外からの投資によって、数多くの巨大プロジェクトが工業団地内で進められている。

2020年には、工業団地と経済特区は、国の総輸出額の55%に相当する1,380億ドルの産出高と、59億5,000万ドルの税収をもたらし、さらに400万人の雇用創出に貢献した。

ベトナムは現在、中所得国の罠(*1)に陥ることなく、他のASEAN諸国から遅れをとらないよう、近代化された国となるための包括的かつ大胆な改革を進めている最中にある、とTrung氏は言う。そのため、工業団地や経済特区の開発には、より効率的で持続可能な開発を実現するための条件が求められている。

「工業団地と経済特区の開発は、ベトナムの投資誘致戦略の重要なコンテンツの1つです。今後、ベトナムは持続可能な方法で工業団地や輸出加工区(*2)を開発し、地域の強みを活かし、経済をリードし、地域間のつながりとなる基盤を作ることに力を入れます。さらに、Tan Hoang Minh、ベトナム・シンガポール工業団地、Viglacera、An Phat、Shinecなどの投資プロジェクトのように環境に配慮した工業団地や特殊な工業団地の開発を進めるでしょう。」とベトナムの工業団地開発の方向性について触れた。Nam Cau Kien Eco-Industrial Parkを開発するShinec JSCのゼネラルディレクター、Pham Hong Diep氏も、同様にこう述べる。

工業団地のプロジェクトにおいては、技術革新をアピールすると同時に、環境にも配慮する必要があります。

エコ・インダストリアル・パークのイメージとコンセプトは、投資促進フォーラムや州当局のパートナーの間に広まっています。

Director-general Economic Zones Management Department Ministry of Planning and Investment,  Le Thanh Quan氏

計画投資省は、工業団地や経済特区の魅力を高めるため、投資やビジネス環境の改善に取り組んでいます。管理モデルやインセンティブを完成させることで、こうした地区の競争力が上がる近代化されたモデル開発に力を入れているのです。さらに、私たちはベトナム全土に点在する工業地帯と経済特区間の連携強化を目標にしています。

経済特区の発展を促進するためには、国の近代化と産業化におけるその役割について、国の管轄機関内で適切な妥協点を見出すことが必要です。私たちは、経済特区の法的枠組みを完成させるために、専門家や投資家との対話を進めていきます。

Shinec JSC General Director Pham Hong Diep氏

生産活動だけでなく、専門家や従業員の意見を取り入れた、多機能な工業団地の開発を進める必要があります。

従業員の住居の確保は、最重要課題の一つです。企業は、工業団地内の居住施設の建設に積極的な姿勢を見せていますが、土地が不足しているケースが多く見られます。生産性を維持するために従業員用のアパートや住宅を建設したいのに、自治体から土地が用意されるのを待つしかないという状況が続いています。

コロナ禍では、多くの企業が数千人の労働者の食事と宿泊を賄わなければならなかったので、住居の重要性が表面化しました。しかし、多くの企業はそれができず、工場の操業を完全に停止するか、限定的な生産を行い、生産能力が著しく低下するという事態に追い込まれてしまいました。

An Phat Complex社 DirectorPham Van Tuan氏

私たちの目標は、ワンストップサービスを工業団地内で再現することです。これは、サービスを多様化し、投資家のニーズに応えるという、An Phat工業団地でも成果を上げた成功モデルです。

50〜70に及ぶ投資誘致と約12,000人の雇用創出が期待されるAn Phat 第一工業団地の完成が今から待ち遠しくてなりません。2024年には同工業団地の全区画は、すべて埋まる予定です。エレクトロニクス、食品・飲料、プラスチック、裾野産業など、さまざまな分野から投資家を集め、ベトナム北部ハイズン省における、環境に優しいハイテク工業団地の先駆けとして発展させることが目標です。

また、そうした工業団地の開発を通じて、米国をはじめとする海外投資家を呼び込むことも想定しています。この目標実現のためには、産業用不動産開発業者にとってより有利な仕組み作りが望まれます。

(*1)  中所得国の罠

開発途上国(発展途上国)が一定規模(中所得)にまで経済発展した後、成長が鈍化し、高所得国と呼ばれる水準には届かなくなる状態ないし傾向を指す通称。

(*2)  輸出加工区主に発展途上国に設置され、多国籍企業の誘致の下で輸出向けの生産が行われる工業団地。対外取引に便利な国際港の隣接地などに工業団地が造成され、関税や法人税の減免、外資比率の規制緩和、利潤 ・ 配当の本国送金の自由化などの優遇措置が採られる。

【Growtheater登録関連企業】
ゴミ問題に取り組むインドネシアの廃棄物管理ソリューション企業