このほど、ベトナム企業における電子契約の普及を阻む要因についての調査が行われた。その結果、500人中300人以上が、電子契約の法的有効性に対して懸念を抱くと回答したことが明らかになった。また、機密保持という点でも、ベトナム企業が電子契約導入に躊躇する原因となっている。

実のところ、電子契約も含めた契約全般に関する法的枠組みは、かなり包括的で時宜に適った内容となっている。電子取引法は、1996年の電子商取引に関する国連国際貿易法委員会の規定をほぼ継承する形で、2005年に公布された。
これに基づき、ベトナム政府は、電子商取引を行う際のルールを制定している。デジタル署名やその認証サービスに関する電子取引のガイドラインを詳述した「政令No.130/2018/ND-CP号」、電子商取引に関する「政令No.52/2013/ND-CP号」などにおいてそれは明白である。また、会計、金融、銀行、保険などの専門分野における法律を規定する法令も公布された。それぞれの法律が相互作用し補い合うことで、電子契約の法的有効性や契約に含まれるデータメッセージのセキュリティと完全性が確保されている。
ここで目に留まるのは、契約の有効性が2015年の民法に準拠するにとどまるという点である。取引当事者が法人格または当該取引に適合する法的能力を有すること、それぞれの意思に基づいて自由に取引すること、取引の目的および内容が法律及び社会倫理に反しないこと、契約の形式が法律で定められている規定に基づいて行われること等、契約の締結方法は具体的に規定されてはいない。
電子契約にあまり馴染みもなく、導入にあたり不安を覚える企業は多い。しかし、実際には、私たちの日常生活の中に電子取引は、既にかなり浸透してきている。Lazada、Shopee、Tiki、eBayなどのeコマースプラットフォームでの買いものや、Grabによる配車サービスなどは、電子取引の典型的な例であり、多くの人にとって極めて身近な存在となっている。
企業の電子契約利用には、機密性という問題もある。それは、取引情報が企業のシステム内だけにとどめておくわけにはいかないからだ。保守や技術的なトラブルシューティングのためにプロバイダのシステムにもバックアップとして保存されたり、企業の電子データベースのクラッシュ、第三者による妨害が発生したりするケースなど、機密性という点において課題も残る。
現行の法律では、電子取引認証サービスプロバイダの機密保持義務が明確に規定されていないため、利用する企業はこの点を留意して、契約時にプロバイダの秘密保持義務を明記する必要がある。
また、多くの企業にとって、銀行などの第三者機関や税務署、裁判所などの公官庁との取引の際、電子契約書を原本として法的に有効であることを証明する方法も見いだせていないままである。
実際には、政令第52号第9条に電子契約を原本とする有効性について次のように規定されている。電子商取引における電子契約は、初めから電子文書の形式で作成された時点で情報の完全性が確保されており、必要な時に、完全な形でアクセスでき使用できること、といった条件をもれなく満たしていれば、原本として法的有効性を持つことになる。
完全性の評価基準には、電子文書が通信、保存、表示の過程で生じる形式変換以外に、情報が完全であり、変更されていないことなどが挙げられる。また、電子文書の信頼性の保証においては、商工省によって認可ライセンスを受けたサービスプロバイダから付与されたデジタル署名の有無などの条件が規定されている。
したがって、電子契約書が署名されたら、契約書に含まれる情報に必要なときに完全な形でアクセスでき、内容が有効であれば、電子契約書は原本として法的効力を持つことになる。実際に、企業が税務当局や裁判所など公官庁に対してこれら3つの要素を証明することは難しくはないものの、それ以外の第三者機関に受け入れられるかどうかは疑問が残るところだ。
政令52号の改正法では、商工省が認可したサービスプロバイダ、所謂、認証局による電子契約の証明に関する規則を制定する予定となっている。
改正法が施行されれば、テクノロジーや技術革新に頼らないで、コンテンツの完全性を検証するプロセスを逐一踏むことになり、認証サービスプロバイダがもう1社増えることになる。
しかし、行政改革が進むベトナムでは、他省からの電子契約にその省のサービスプロバイダからも認証を受ける必要性が疑問視されている。また、企業にとっても、電子契約の信頼性確認のために、双方のサービス料を負担しなければならなくなり、余計なコストが発生してしまうことになる。
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