ベトナムがCOP26において、2050年までの温室効果ガス排出量ネットゼロ達成に向けた宣言を公約したことにより、メイド・イン・ベトナム製品の輸出を促進する追い風となることが期待される。
この目標に向けて、ベトナムは、生産のためにエネルギーをいかに効率的に使用するかという考え方から、製品をいかに効率的に生産するという発想に変えていく必要があるだろう。
ベトナム環境経済学会(VIASEE)の副会長で、環境経済政策研究所(EEPI)の所長であるNguyen The Chinh氏は、COP26におけるPham Minh Chinh首相の宣言が、低炭素排出とグリーン開発モデルへのベトナム経済の再構築という目標の実現に向けた重要な分岐点となると指摘した。
世界風力エネルギー会議(GWEC)東南アジア作業部会長のMark Hutchinson氏は、2050年までにネットゼロを達成するためには、再生可能エネルギーの開発と化石燃料の廃止を組み合わせ、さらに送電網のバランスを取り、大気中の炭素を除去するための予備費を増加させる必要があると述べている。
ベトナムに工場を持つ多くのグローバル企業グループは、よりクリーンなエネルギー源の使用にシフトしている。そこでベトナム商工省(MoIT)は、米国国際開発庁の支援を受け、電力消費者と再生可能エネルギー電力販売事業者の間で展開する直接電力購入契約(DPPA)の仕組み作りを進めており、近日中に完成させる予定である。
ベトナムに進出している多くのグローバル企業は、より先進的な市場に製品を輸出できる仕組みが早く整うことを切望している。
Samsung Vietnamは、MoITに対してDPPAスキームの試行的な実施を支援するよう要請した。
2020年12月、29のグローバルブランドグループがベトナム政府首脳に対して、再生可能エネルギーの買い手と売り手の間でDPPA制度を展開し、排出目標を確定するための道を開くよう要請する書簡を送っている。
スポーツウェア大手であるNikeのチーフ・サステナビリティ・オフィサーであるNoel Kinder氏は、「当社が所有または運営するスペースにおける温室効果ガス排出量を2030年までに65%削減、当社の拡張サプライチェーン全体で30%削減することを約束します。」と述べている。
クリーンエネルギー開発によるネットゼロの実現
専門家の一致した見解は、化石燃料の全廃と環境にやさしい再生可能エネルギーへの転換を目指すエネルギー転換を推進するための強力な対策と適切な政策がこの目標を達成し、地球温暖化を抑制するためには、不可欠であるということである。
COP26から帰国した首相は、MoITに対して、最新の電力開発計画(PDP8)をグリーンエネルギー、特に風力発電の推進に向けて修正するよう要請した。
ベトナムの再生可能エネルギー分野最大手企業であるTrung Nam Groupのリーダーは、「Trung Namは、エネルギー分野の民間投資家として、再生可能エネルギーの役割と重要性を十分に認識し、高く評価しており、世界規模でエネルギー分野の必然的なトレンドと見なされています。」と述べている。
会社側の立場としては、風力発電の開発は、2020年からのベトナムのエネルギー開発の方向性(決議番号55-NQ/TW)や、COP26でのネットゼロエミッション公約に合致するものである。
Hutchinson氏によると、2050年までにネットゼロを達成するためには、再生可能エネルギーを強力に開発する必要があるという。政府はこの需要に応えるため、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やすべく、PDP 8のドラフトを見直し、完成度を高め続けている。
洋上風力発電は、ベトナムが2050年までにネットゼロを達成するための重要な再生可能エネルギーの一つである。負荷時間が長く、コストも低下していることから、石炭火力を効果的に代替できる数少ない技術として注目されている。
ベトナムの風力発電の潜在能力は大きく、風力発電プロジェクトの投資コストが低下している中、今後風力発電プロジェクトの開発を強化するには、その潜在能力が開発の前提条件となる。
調査によると、2010年から2020年の間に、風力発電の投資額が5%減少したのに対して、太陽光発電と蓄電池プロジェクトの投資比率は年平均14%減少し、2020年から2040年の間にさらに下がると予想されている。
風力発電事業の固定価格買取制度(FiT)(*1)が昨年10月に終了したため、明確な基準と高い実現可能性を持った新しい政策と仕組みが早急に必要である。
太陽光発電事業に対するFiT制度は2020年末に了したが、それ以降、新たな仕組みは導入されていない。ベトナムは世界銀行やアジア開発銀行の支援を受けているにもかかわらず、再生可能エネルギー発電プロジェクトの入札制度を制定していない。
明確な政策がなく、国家投資家と電力消費者の利益を適切なリスク分担の仕組みでバランスさせることができないため、投資家がプロジェクトの経済性を判断するのはかなり難しく、当面風力発電への投資が停滞することが予想される。
ベトナムエネルギー協会のNguyen Van Vy副会長は、大規模な風力発電プロジェクトについては、投資家がプロジェクトを準備し、電力管理当局と売電価格を交渉することを認めるべきであると提言した。
(*1)固定価格買取制度(Feed-in Tariff, FiT)