Vietnam Investment Review

電気自動車(EV)の運転者は、家で電気をつけたり、家電製品の電源を入れたりするのと同じように必要な電力が自動的に車に充電されることを望んでる。

ABB社 E-モビリティ会長Frank Muehlon

この10年間で1000万台以上の電気自動車やトラックが走るようになったe-モビリティの急速な変化を目の当たりにして、消費者のそのように考えるのは間違いなのか?

簡単に言えばそうではない。しかし、eモビリティ分野では、充電技術の革新もさることながら、100年以上前に建設された送電網をe-モビリティの進化する需要に対応できるよう整備することがさらに重要であることは間違いない。

2010年当時を振り返ると、自動車を充電できるかどうかのみが問題で、送電網のことは考えられていなかった。しかし、自動車台数やバッテリー容量が急速に増加し、電力や負荷管理を積極的に行わないと、送電網がボトルネックになる可能性があることがすぐに明らかになった。

充電ソリューションに接続し、施設の管理者やオペレーターは、各施設が送電網から引き取る電力量をローカルで負荷管理し、全体の電力需要が常に送電網の総容量内に収めることができるようになった。

次に、送電網からどれだけの電力供給を受けるかを管理するだけでなく、その電力をいつ、どのように最も効果的に利用するかを管理する機能が必要となった。バッテリーによる蓄電ソリューションは、オペレーターがより安価で需要の少ない時間帯に電力を引出して蓄電し、需要がピークに達したときにその電力を充電に利用することを可能にした。このピークカットのアプローチは、送電網の容量をアップグレードや、地域によってはピーク時の電力料金を避ける必要がなく、よりコスト効率が高く、より効率的に充電器を利用することができる。

最近では、クラウドベースのAI技術、再生可能エネルギーの統合が進み、運転者が余剰電力を送電網へ販売できる「Vehicle-to-Grid」(*) 充電ソリューションの登場により、仮想エネルギー最適化と送電網安定化の時代に入った。

複数の場所にある充電器を1つのネットワークに集約した仮想発電所と考え、データサイトはソリューションの中心で、充電器の使用状況から天気予報、再生可能エネルギーの発電量、エネルギーコストに至るまでさまざまなデータが含まれている。そのデータを利用し、充電オペレーターはエネルギー需要と利用予測をし、エネルギー使用量を最適化することができる。そのメリットは、ユーザーが最も安価で持続可能なエネルギーを利用でき、再生可能エネルギーの供給量が変動しても充電要件を効果的に管理できることだ。

今年末に予定されているメガワット充電の世界標準規格「CharIN」の登場により、このようなソフトウェアソリューションの必要性がさらに加速することになるだろう。最大3MWの充電速度を持つ電気トラック10台を同時に充電し、送電網から30MWの電力を供給することができる。これは5WのLED電球600万個に必要な電力と同じだ。さらに規模を拡大し、全国規模の大型車両ネットワークに対応するためには、送電網を管理する長期的なインテリジェント・ソリューションへの投資が重要であることは言うまでもない。

2030年までに約1億3,000万台の電気自動車が新たに導入されるとの報告もある。この予測が確かであるかは不明だが、e-モビリティ・ソリューションへの潮流が変わったのは明らかである。

乗用車、公共交通機関、大型車など、あらゆる移動手段が電動化されつつある。私たちは、エネルギーインフラをリミッターとみなすのではなく、その可能性を受け入れ、より持続可能な未来を追求するためにe-モビリティとより広い社会の両方にとって、インテリジェントエネルギーと負荷管理によるメリットを実現するために協力し合う必要がある。

*「vehicle to grid」自動車と地域送電網の間で電力の相互供給をする技術やシステム。電気自動車・プラグインハイブリットカー(PHV)・燃料電池車(FCV)などを安価な夜間電力で蓄電したり、蓄電した自動車を昼間の電力供給源として利用することを指す。

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