ベトナムにおける自然エネルギー移行支援への取組みがデンマークの投資家から注目を集めている。企業の関連データ文書化を可能にする法的枠組みの確立が、海外からの価値ある投資の誘致につながる理由を巡って、駐ベトナムデンマーク大使Kim Højlund Christensen氏はVietnam Investment Review紙のインタビューで語った。

観光や貿易が回復基調にある中、ビジネス、投資促進目的の視察団がベトナムを訪れるという動きも今後見えてくるのでしょうか。
ベトナム政府が最近入国制限を解除し、ビザ免除渡航プログラムをデンマーク等の国々を対象に再開したことは殊更喜ばしいニュースであり、デンマークのビジネス界もそれを歓迎しています。すでに多くのデンマーク企業が今月から来月初めにかけてベトナム現地パートナーとの面会のために同国を訪れる計画をしています。
現在、ベトナムには130社以上のデンマーク企業が進出しています。したがって近い将来、デンマークその他地域の本社から、生産設備の視察や新たな投資機会を求めて、多くの業務渡航者や代表団が同国を訪れることになるでしょう。また今年後半には貿易代表団が食品、エネルギー、水などの主要産業分野の視察に訪れることも予想されます。
デンマークの企業は、どの投資分野に関心があるのでしょうか。
ベトナムがデンマークの投資家の注目を集めていることは間違いありません。とりわけ、二酸化炭素排出量削減や気候変動への積極的な対応に政府が強くコミットしていることがその理由と言えます。最近の成功例としては、昨年12月に発表されたレゴ・グループによる南部ビンズン省のカーボンニュートラル生産工場への10億ドルの投資が挙げられます。
デンマーク企業は、サステナビリティ支援分野への投資に関心を寄せています。例えば、洋上風力発電の大手であるØrsted社とCopenhagen Infrastructure Partners社は、ともにベトナムに数十億米ドルに相当する投資のパイプラインを有しています。これらのプロジェクトが完成すれば、数百万世帯の電力供給を実現すると同時に、ベトナムが数億トンのCO2排出を回避できるようになると期待されています。
また目下の世界経済発展と、世界市場においてより戦略的なプレーヤーとなり得るベトナムの可能性を鑑みて、この地でバリューチェーン強化のチャンスを見出し、優れたソリューションや技術を備えたデンマークの投資家がさらに増えていくことになるでしょう。繊維、家具、食品、農業などの伝統的な産業分野に加え、技術、医療機器、海運などの企業もベトナムを進出先として検討するものと思われます。
ベトナムは、外国直接投資の誘致に関して、量から質へと軸足を移しています。投資環境改善のためにベトナムに提案したいことはありますか?
環境、社会、ガバナンス(ESG)の基準、グリーンオペレーションや排出削減を可能にする現地のインフラや施設の有無が、最近の投資において極めて重要視されている点です。ベトナムが、より付加価値の高い生産設備や高スキルの雇用をもたらす充実したFDIを誘致したいのであれば、企業がESG関連データを文書化できる法的枠組みの構築など、ESGに着目する必要があります。
このデータは、企業の財務諸表に大きな影響を与えます。例えば、企業が製品を海外市場に輸出する際の税率を左右しかねないのです。国やグローバル企業によるカーボンニュートラルへのコミットメントが高まるにつれ、海外投資家は、再生可能エネルギーの調達に注目するようになるでしょう。それは、ネットゼロの抱負を実現する上で、二酸化炭素排出量を削減するための重要なソリューションとなるからです。しかし、ベトナムでは再生可能エネルギーへのアクセスが不足しているという実態があります。また、製造業者への再生可能エネルギー証書やカーボンクレジット付与に関する規制枠組みも存在しません。そのため、外国人投資家が排出削減義務を認識し難い状況に陥っています。したがって、外国直接投資を誘致するには、グリーンエネルギーの供給が可能かどうかにますますかかってくることになるのです。