Vietnam Investment Review

Standard Chartered Bankの調査によると、ASEAN諸国へ進出している欧州企業の約60%が、ビジネス拡大を最も優遇している国はベトナムである、と回答している。

Standard Charteredの欧州グローバル企業担当マネージングディレクター、Robert Newell氏は、こう述べている。

ASEAN市場における巨大ビジネスチャンスが、欧州企業へ開かれています。投資、貿易の多様化と拡大を目指す企業、テクノロジー専門知識と膨大な消費者基盤に精通する企業には絶好の機会です。

今回の調査で明らかになったことは、調査対象企業の大半にとって、事業、セールス拡大にはベトナム、マレーシア、タイが、最も魅力的な市場ということだ。また、ほぼ半数の回答企業は、「チャイナ・プラス・ワン」戦略の一環として、生産拠点を多様化するためにASEANに進出しており、その多くは、地理的に近い中国と比較して製造コストが同等もしくはそれより低いベトナムや、強力な生産能力を持つマレーシアやタイを視野に入れている。

回答した企業の約88%は、今後1年でビジネスが拡大すると期待している。その理由として、消費者市場の成長、自由貿易協定、確かな供給基盤などが挙げられる。中でも、最も魅力的な進出先はベトナムであり、60%の企業が生産、販売拠点を確保するために、ベトナムでの事業拡大に注力している。次いで、マレーシア(53%)、タイ(48%)と続く。

また、本調査では、ベトナムが近年、重要な貿易拠点となり、欧州からの輸入が2015年から2020年の間に複合平均成長率(CAGR)8.5%増の見通しを立てている。2020年8月から施行されるEU-ベトナム自由貿易協定は、最大99%の関税を撤廃し、規制障壁を軽減することで貿易拡大を目指している。さらに、EUは地域包括的経済連携(RCEP)の加盟国、とりわけシンガポールとベトナムとの貿易関係を強化し、欧州輸出業者のASEAN市場への参入を促進する。

欧州企業がASEANで注力している成長分野は、インフラ、製造業、再生可能エネルギー、eコマースなどである。際立ったところでは、ベトナムの医薬品業界が挙げられ、進む都市化と政府によるヘルスケア事業拡大への取組みが発展を後押ししている。外資系企業が市場参入のために、現地企業を買収する動きも活発化してきている状況だ。2020年には、ドイツの大手製薬会社Stadaが、ベトナムのPymepharco社への出資比率を引き上げ、買収する計画を発表した。

同様に、太陽および風力エネルギー事業もベトナムで最も大きな成長を見込める分野である。洋上風力発電は、ベトナムの国家エネルギー開発戦略のもと、政府が注力している。Copenhagen Infrastructure Partnersは、2020年に、ベトナムのビントゥアンで100億ドル規模の洋上風力発電プロジェクトを開発するための基本合意書を締結した。

一方、政府の「国家eコマース開発計画2021-2025」では、eコマース普及促進に焦点を絞り、2025年には人口の55%がオンラインショッピングすることで、年間平均消費者支出が2018年の202ドルから600ドルまで上昇すると予測している。エストニアを拠点とするMetaPlanetSkype共同創業者Jaan Tallinn出資)は、2021年にベトナムで急成長しているフードデリバリーのスタートアップLoshipに投資を行った。

ソース元:Standard Chartered Bank