2021年、ベンチャーキャピタル(VC)業界の記録という記録が更新され、その運営方にシステム的な変化をもたらすことになった。
つい先ごろまで、スタートアップ企業は投資家を獲得するために戦ってきたものだが、今日、その関係性は逆転し、優れた創業者に対して投資家が出資の競い合いを激化させている。2021年度、世界のベンチャー投資額だけでも110%増加し、テクノロジー系スタートアップにおいても、それは熾烈な様相を呈している。
CB Insightsによると、世界のベンチャー資金調達額は、2020年度の2,940億ドルから、2021年度は過去最高水準の約6,210億ドルを記録した。同時に、テクノロジー系スタートアップのプレイブックが「常識」となることで、ベンチャー業界そのものがビジネスとして成立しつつあり、VCの在り方そのものも変わろうとしている。
新型コロナウイルスによるショックが世界の隅々にまで影響を及ぼし、それはVCも例外ではなかった
2021年度、象徴的な出来事は、世界中100以上のテクノロジー系スタートアップエコシステムが2社以上もユニコーンを生み出したことである。これは、過去1年で最も印象に残る変化である。かつてSand Hill Road周辺(シリコンバレー西部のエリア)の投資家に支えられ、スタートアップのメッカ、シリコンバレーから生まれたユニコーンは、今や世界中の100カ所以上のスタートアップエコシステムへと広がった。ほんの数年前までは、EU圏でスタートアップが10億円規模まで成長することは、非常に稀だと思われていた。事実、ヨーロッパ生まれのユニコーン企業はほんの一握りでしかないことがデータでも示されている。2021年度、EU圏のユニコーン企業は、2020年度の20社強から65社へと急増した。加速する変化やそのシグナルは、次のトレンドを予測する要因となる。インパクト系や環境系スタートアップに着目すると、その変化はさらに大きなものとなっている。
また、同じ地域内の信用でつながるネットワーク内だけで取引する従来の方法では、このVC界のゲームで一歩先んじるには無理があるだろう。今や、異なるスタートアップエコシステムで、セットアップやソーシングといった方法をとることが有利な時代になっている。Katapultは5年かけてこうした働きかけと取引フローを体系的に構築してきた。これまで35カ国以上で108社のスタートアップ企業に投資し、さらに、テック系インパクトユニコーン3社を含む30社に直接投資を行ってきた。各投資に際しては、平均100回、合計で1万回以上のスクリーニングを投資期間内に行う。この世界的な変化のトレンドが加速すればするほど、その仕組みはさらなる価値を生み出すことになるだろう。業績の良い企業の中には、ラテンアメリカ、アフリカ大陸、ヨーロッパの企業もある。それに加えて、新型コロナウイルスによって、シリコンバレー以外で設立されたスタートアップの数もさらに増加している。
概して、すべての地域で過去に類を見ない記録的な資金調達が行われ、VCのグローバル化がここへきて加速していることを物語っている。
さらに、新たな地域も加わり、世界的な優良企業の獲得競争が繰り広げられている。この変化のトレンドは、これまでにはない結果を生むことになるだろう。資金調達や資本政策そのものが変わり、30年以上にわたり破壊的イノベーションを免れてきた業界に衝撃を与えている。
現在、その変化をリードするのは、TigerCapital、Sequoia、Softbank、a16zといった巨大投資企業の存在だ。2020年には、1日1件以上の投資が行われるようになるまでに至った。これほど頻繁に投資を行うには、どのような工夫をしているのだろうか。
投資は数週間、数ヶ月ではなく、数時間単位で行われる。企業の分析は、経営コンサルタントやアーリーステージのシードファンドに委託する。投資の競争が激化するということは、高い評価額に低いリターンを生む、ということになる。また、起業家にとって最も重要なことは、役員・取締役の要件、望ましいタームシート、そして、これまでと変わらないコントロールでは時間とコストがかかりすぎることの裏付けなどである。
Katapultは、この声を真摯に受け止め、このメカニクスが成り立つ前の投資段階で、敢えてこの市場に貢献することを目指し、世界が大きな課題に直面している分野で深い専門知識を蓄積してきた。
この10年間はデジタルディスラプションがテーマだったが、次の10年間は「社会型デジタルディスラプション」がテーマになるとの予測が妥当だろう。
ベンチャーの発展に影響を与える5つの重要な変化
この30年間、ベンチャーファイナンスという仕組みの進歩は限定的なものだった。ベンチャー企業は、イノベーションの波に飲み込まれないできた数少ない産業の一つである。投資メカニズムも、その背後にある制度も、驚くほど変わってはいない。それが、今、変革の時を迎えている。
近代的なVCの起源は、戦後アメリカに遡り、欧州研究会議のアメリカ版である「アメリカ研究開発連合(ARDC)」から生まれた。リスク回避に走り勝ちな戦後の時代に、技術投資を確保するため、政府主導で行われたコンセプトがその始まりにある。
欧州研究会議との違いは、大学や研究部門、研究機関への資金提供に留まらず、民間のテクノロジー企業へ直接投資を行っている点である。
そのため、ARDCは経済的にも成功し、米国が技術開発をリードしてきた大きな要因となっている。
今日のリーダー的存在であるベンチャー企業の基礎モデルを作り出した背景には、ARCDの財政事情がある。1960年~70年代、Apple、Microsoft、Electronic Artsなどを初期に支援したSequoia、Kleiner Perkins, Bessemerといった神話的ベンチャー企業が誕生した。また、この成功を契機に、大手年金基金がベンチャー投資に参入したことで、先進的なディープテック・プロジェクトに資本が流れた。そして、今日の世界的なリーディング・カンパニーが数多く生れることになった。
1990年代には既に、700社以上のベンチャー企業が存在し、Netscape, eBay, Paypal, Yahoo, Google 、Salesforceなど、ベンチャー黎明期にあった当時、世界的なハイテク企業を支援していた。そして、起きたのがドットコムバブルであった。ヨーロッパとは異なり、ベンチャーファイナンスの成長は続いたが、それはより専門に特化したビジネスモデルにおいてであった。VCは、自社のリスク軽減や、また別のバブルが起こらないようにするためにも、会社設立や技術に関する専門知識を提供するようになったのだ。
黎明期のVCは、今でも知られる、「市場機会を捉えて投資する企業」、「最先端技術に投資する企業」、「しっかりした起業家やチームに投資し、優先順位をつける企業」という3つの投資哲学に大別されていた。
周知の通り、今でもVCが集まれば何が最高のリターンをもたらすかについて論議され続けている。
「シリコンバレーモデル」と呼ばれるところのベンチャーファイナンスは、約70年前に確立された。今日の企業価値や社会的インパクトが高い技術を持つ企業を支え、現在も世界トップクラスのハイテク企業の主要資金源であり続けている。全世界のユニコーン企業959社のうち、半数の517社が2021年に誕生したことは、それに起因する。
VCモデルは、ほとんど変わらなかった、というのはこれまでの話。
しかし、なぜ今、ベンチャーのゲームルールが変わろうとしているのか?
システムや制度的な変化を理解しようとするならば、何よりもまず、その変化の速度が最も速い分野を理解することだろう。変化が加速する場所、それは、ベンチャー企業の中でも、次の5つの分野に種別される。
1. 即断即決になった、ベンチャーゲーム
Crunchbaseによると、Tiger Capitalだけで2021年度に350件以上、同年第4四半期には1日に1.3件以上の投資を行ったという。
収益性が高い新産業は徹底的に詳細な分析と解析が何度も繰り返される。これがパターン化された結果、昨今続出する投資アナリスト達にとっても、明解な情報を得られ易なったのだ。テクノロジー系企業のスケールアップと成長の方法論やプレイブックが広く知れ渡るようになり、それに応じてリスクも軽減できることになる。
より多くのVCが、迅速な意思決定、高い投資額、ハンズオフを進め、リターンを得ることをコモディティ化させている。例えば、この記事でとり上げたように、スーパーファウンダーの共通項を調べてみると、入手できるデータからマッピングされた明確な類似点が見てとれた。
このプロセスは、構造化されたより良いデータへのアクセスが増えないとうまくいかない。創業者、ビジネスモデル、ネットワーク効果、成長指標、エンゲージメント、市場展開などを、テスト済みで普及しているモデルで分析することが可能である。
パターン認識力が高まり、リスクが軽減されれば、より多くの資本が流入することになる。歴史的に見ても、新産業やアセットクラスはすべてそうであった。今や、その流れが可視化されるようになったのだ。それにより、VCでよく見かける20代の駆け出しの投資銀行員でも、スタートアップ企業と会って財務状況を見て、投資対象の基準を満たしているかを確認することができるようになった。
もちろん、すべてのリスクを排除できるわけではないが、これまでのように、数ヶ月間にわたる分析を必要とせず、数時間単位で判断し、リスクリターンを調整することが可能になった。データアクセスしやすくなり、他の投資形態との整合性も高まったことで、見合った市場の伸びしろのある典型的なシリーズA、Bラウンド企業には、とりわけ適したプロセスと言える。
これにより、Tiger Capitalのように、たった1つのファンドが2021年度に350件を超える投資を実現した。しかし、10年前までは、同社は普通のVC同様、時間をかけて分析を行い、1年に3社のペースで投資を行っていた。それがある日突然、時代遅れに感じられるようになってしまったのだ。
これまで圏外にいた新たな資産クラスも続々とベンチャー業界へ参入してきているので、単なるゲームプレイングではなく、速攻勝負に賭けなければならない域まできている。
2. 誰もがベンチャーに乗り出し、その規模は年々倍増
2021年はVCへの投資が110%増加し、2022年には、新手のハイテク投資家が、従来のVCの投資数を上回ることが予想されている。
スタートアップ企業の成功とかつては稀有であったユニコーン企業という存在があまり珍しくなくなった今、その成長にあやかりたいと願う投資家が増えてきている。シードやアーリーステージのファミリーオフィスと呼ばれる富裕層一族の資産管理会社、上場前のキャピタルマネジメント、これまでスタートアップに投資したことがないヘッジファンドまでもが、ベンチャー業界に参入し、業界全体を後押ししている。それは、新たな資本源が参入してベンチャーファンドの10年という長いサイクルに挑むことを意味する。
手堅いテクノロジー系スタートアップは、よくあるシリコンバレー流のエンジニア起業家や成功といった特徴には最早収まりきらないようになってきた。Tiger Capitalのように、1,000億円近い資金力を持つVCは、同業他社が、太刀打ちできないスピードで動かなければならない。同社は、投資判断のためのミーティング数を極力抑え、起業家に特別な条件を課さず、前四半期は、一日1.3件というハイペースで、毎日投資を行ってきた。
競争が激しくなるとコストを下げる必要が生じ、低いリターンを受け入れる大手ファンドで、それを補完するようになる。つまり、一般市場の期待するリターンの値により近づくことを意味する。
3. 資金規模の拡大と、許容リターンの低下
競争が激化すると、迅速な意思決定や経営への介入の少なさ、より大規模な資金で、コストの削減が可能となる。
Sequoia、Softbank、Tiger Capitalは、創業者に厳しい条件を課さないことで、しばしば良い例として挙げられる。多くの起業家にとって、経営への介入が少ないことはメリットとされている。一方で、VCから資金を受けるということは、それ以上のメリットを求められることも多く、あまり信用されてはいない。
そのため、起業家は、資本や「ブランド」以上の付加価値には懐疑的である。さらに、成功した起業家というのは、モノカルチャーな投資環境しか知らない新卒の若いエコノミストよりも、自分自身の専門知識を頼りにする傾向がもともと強い。
起業家が、ファンドによる乗っ取り、不当な利益契約、組織の方向性にそぐわない介入などの心配をせずに、必要とする資本にアクセスできる、それがTiger Capitalが躍進する所以である。また、彼らが求めるキャップテーブルのポジションが、コントロールを失うことになるというわけではない。
その一方、Andreessen Horowitzは、過去20年間、スタートアップのためにかなり大規模なサービス環境施設を建設し、Tiger Capitalとは、逆の展開を図ってきた。この3年間で社員数が170%増加した企業は他にないだろう。企業の多くは少しばかり時代遅れな方法で試行錯誤を重ね、維持できない固定費を増やすばかりなのだから。
投資額の期待リターンも低下しており、同業他社よりも金額が大きくなれば、収益は高くなる。Tiger Capitalは、新たなファンド「Fund15」にて、12-18ヶ月の間に100億ドルをスタートアップ企業に投資する予定がある。資本力のあるなし、組織のあり方にかかわらず、同業他社が、それを真似することはまず難しいだろう。投資判断のスピードが上がれば、失敗する率も上がり、競合よりコストをかければ、収益率の悪化を招く。Tiger CapitalやSequoiaの新たな手法は、まさにこの展開を予測して生み出された。大規模な投資でも、他の方法よりも、高い利益を上げることになるのだろう。
現在、歴史のある大手ファンドでも、他のPEファンドやグローバルに展開する金融機関に比べればその規模は極めて小さいと言わざるを得ない。テック系スタートアップに参入する企業も増えているがそれが初期段階であれば尚更、標準とされるグローバルVCのプレイブックにある通り、スピードや規模が成功を左右する。
4. デューデリジェンスの外注、データサイエンスの台頭、進む分散型ネットワーク組織の構築
評価・分析工程のコンサルタント外注、データサイエンスやAIの活用、ノードを世界中に分散させた新たな形態のネットワーク組織の構築は、デューデリジェンスプロセスの加速に伴う出資競争の激化によりもたらされた現象である。
組織形態を、企業のスピード感や規模に合わせることやコストの変動化も必要である。
短期間により多くの資金をより多くの企業に投資する際、ディールフローをしっかりコントロールできることはメリットとされる。投資規模や予定件数よりも、投資機会数を増やすことの方が重要になってくる。
そのため、社外に支援を求める企業が増加している。大量の企業をスクリーニングするためのツールや仕組みを構築するTiger Capitalのようなアクセラレーター企業やアーリーステージのシード投資家などがそれにあたる。例えば、同社とかかわりのある経営コンサルタントは、新たな顧客を獲得し、Tiger Capitalの一翼を担っている。同様にAtomicoも、希望よりも少額投資を受けた起業家を集め、コミュニティを形成している。同社が各方面に確立したネットワークを通じて、信用度の高いパートナーを呼び込むファウンダー・プログラムでネットワークを拡張させている。
Katapultでも同じような取り組みが行われており、スクリーニングの増加や分析ツールの調達に関心が集まっている。投資やプログラム参加の際には、スクリーニングを実施する。
データサイエンスを活用する機会を持つ人が少なく、スピードが加速する中、こうした仕組みを構築すれば、さらに高い価値を生むことになるだろう。
Katapultでは、現在138件の投資が行われ、各投資に対して平均100件の分析が行われている。それにより、同社は、アーリーステージの優れた企業の概要や洞察を提供している。幅広い分野の投資家が参入し、たとえ競争が激化しても、優位性を保ちつつ利益を上げることができるだろう。
テクノロジーが、今後さらに大きなインパクトを及ぼす産業の一つとして、VC業界が挙げられる。同業界は、テクノロジーの導入が著しく遅れていた。しかし、近年、それが大きく変わりつつある。スウェーデンの、EQT ventureはデジタルフットプリントを用いてAI分析を行うMotherbrainと呼ばれるシステムを開発し、他社でも同様のプロジェクトが進行している。KatapultもVC業界にテクノロジーを取り入れるという目的で、グローバルパートナーと大規模な研究プロジェクトに取り組んでいる。機械学習を用いて、膨大な量のデータを構造化させ、大規模なデータセットでアルゴリズムを学習させている。
VCは、投資までのスピードだけでなく、価格という面でも競争をするようになっている。また、シードやアクセラレーターの投資家にとっては、次の投資フェーズに向けた市場の競争が激化することは大きなメリットになる。
5. アーリーステージとインパクト投資はVC業界の新たなルールの例外。スピードで優位に立てないなら、どうするか?
競争で優位に立つには、スピードが差別化の要因になりにくい領域へ参入することだ。具体的には、アーリーステージやシードステージの投資、インパクト投資や、ディープテック領域など、専門性の高い分野が挙げられる。
商業化戦略の分析は、主にソフトウェアやテクノロジー分野でよく活用される。それら事業拡大シナリオが明確な領域は、成長指標、製品市場適合性、ユーザーエンゲージメント、マネタイズ、ネットワーク効果、市場などの分析が容易である。
シードやアーリーステージの企業の分析方法が確立されておらず、既存のデータも非構造的であるため、投資の際は、異なる戦略をとる必要がある。そして、そのためには別のスキルが求められる。
理論通りにはいかないチームやメンバーの動きを理解した上でのクォリティ分析は複雑を極め、通り一遍の分析手法では対応しきれない。さらに、こうした企業に対する投資額も小さく、高いコストは収益の低下を招く。しかし、このアーリーステージで成功すれば、努力が報われることも確かだ。それは、ハイリスク、ローリターンという従来のVCに近いかもしれない。アクセラレータプログラムやデータサイエンスによってリスクを軽減し、有利な情報を活用して勝ち組となるというよく知られたパターンである。
また、同様の分析手法が確立されていない分野への進出も、先ほどのシードやアーリーステージのように、異なる戦略が必要となる。まだ成熟していないテクノロジー分野、特に高度な研究開発型の技術などがそれにあたる。Katapultは、収益性だけでなく、社会的意義の高い海洋技術に特化して積極的に投資することで、有利に動いている。
テクノロジー系企業への投資は、収益性があることを過去の実績が証明したが、ベンチャーへの投資は、アメリカのARDCの歴史を遡るとわかるように、リスクが高い。これは、技術開発という社会的な意義をもつテクノロジー系企業への投資というベンチャーモデルの原型に近いといえるだろう。インパクト投資というメガトレンドが加わり、Katapultはその投資領域でも事業展開し、専門性を築いている。
過去10年のトレンドは、テクノロジー・ディスラプション(技術による破壊創造的破壊)、次はインパクト・テック(より良い社会への技術)になると予想されている
だからこそ、現代社会が抱える問題を解決するインパクトある技術に特化する必要があるのだ。従来のVCモデルは、ソフトウェアを世に送り出し、それを世界に普及させた企業を高く評価してきた。現在、世界でも大きな影響力を持つハイテク企業やユニコーン企業969社も、ベンチャー企業によって支えられている。技術革新は、多くの問題を解決したと同時に多くの新たな問題を生み出すこととなったが、この流れは止められないだろう。そして、私たちはまだ、技術革新の始まりを見たに過ぎず、何千億というVCファンドのエコシステムが、旧来の産業革新とデジタル化を次世代に引き継がれようとしている。
ベンチャー企業の十分な資本なら、投資家が投資先企業にもたらす価値を予想することは容易であるということを、より明確にする必要がある。それは、世界を牽引するインパクトテックアクセラレータプログラムであり、海洋、気候分野の専門技術であり、そしてよりよい社会をもたらす真のサポートとなるということを意味する。
サステナビリティを掲げていない資産運用会社は今や世界でもほとんど見当たらない。EUでは、持続可能な投資に関する新たな規制が強化されるなど、今後は、世界的に急成長しているグリーン市場への投資がトレンドとなるだろう。Black RockのLarry Fink氏の有名な言葉、「次に来たる何千ものユニコーンは気候ソリューションに関わることになる」はあながち間違いではないかもしれない。
決断の速さを競い、ベンチャーモデルを活用して、世界のTiger Capitalと戦うよりも、最高のインパクト・テック・スタートアップをアーリーステージでこの市場に産み出すことの方が、今後最も影響力をもち、利益を生むことになるに違いない。そして、投資成功のボーナスとしてではなく、問題解決型のビジネスとして、自ずと利益が生じることが望ましい形なのだ。
資本が十分にあり、サステナビリティという意識が行き渡った今、Tiger Capitalが新たに投資するたびに、優良企業の争奪戦が繰り広げられている。
つまり、成長とデジタルディスラプションを牽引した、世界有数のハイテク企業の資金供給の裏にも、ベンチャーモデルが存在したのだった。それは、良くも悪くもほぼすべての企業や社会制度を一新してしまったわけだが、ベンチャーモデルそのものも同様の変化を遂げつつある。現実には、世界にはあらゆる問題が起きている。誰もが様々な問題を抱えており、その解決のために、新たな産業を興すチャンスは無限にある。滑り出しは、シードやアーリーステージの資金調達と専門性に特化すること、そして収益化された投資メカニズムがその後を引き継ぐだろう。
結局のところ、真の破壊に適応するための絶対的戦略というものは存在しないということだ。