グローバルサプライチェーンの多くのメーカーによる、ベトナムへの注目が徐々に高まってきている。
特に大きな動きとして、アップルはサプライヤーの台湾企業11工場をベトナムに移転した。
他にも、Foxconn、Luxshare、Pegatron、Wistronなど、多くの企業がベトナムで生産設備を拡充している。
この情報は、ベトナム計画投資省が主催した、今年最後の6ヶ月間の状況に関する会議で共有された。同会議では、課題を乗り越え、生産および経営支援を実施するためのタスクと解決策が提案された。
サムスンは、ハノイに東南アジア最大の研究開発センター(2億2千万米ドル相当)を建設し、北部のバクニン省、タイグエン省でも引き続き工場の拡張を計画している。
今年初めには、ドンナイ省が、サムスンの部品サプライヤーであるハンソル・エレクトロニクス・ベトナム(韓国)の1億ドルのプロジェクト2件について投資許可をした。
この機会を活かすため、政府が外国の大手グループをベトナムに誘致するための大規模政策を取るべきであると、Vietnam Association of Supporting Industries(VASI)の副会長であるDo Thi Thuy Huong氏が提案している。
一方で、この政策は、 「クリーンな」 生産条件、環境保護、排出規制を伴わなければならない、とHuong氏は強調している。
また、Huong氏は他にもいくつかの問題点を指摘した。例えば、労働の質を改善・向上させるための支援政策や、政府の信用補完政策を企業が利用するための条件緩和の必要性などである。
以前、サプライチェーンが中国からベトナムにシフトしている理由について、Huong氏は中国における電子機器と情報技術産業の相対的な発展を挙げている。グローバルサプライチェーンの中で、中国は単なる組立作業国以上の地位に成長を遂げたというのである。
電子機器製造の分野において、ベトナムは労働力、地理的な位置、インフラ、物流等が中国と非常によく似た国であり、技術移転を伴う資本移動を受けいれるのに非常に適していたのである。
外国の大企業の誘致について、ベトナム国内企業がまだ脆弱な初期段階では、(*1)海外直接投資(FDI)を認めるべきだが、同時に規制する必要もあると、Huong氏は述べている。
さらに、Huong氏は次のように付け加えている。つまり、ベトナム企業が海外企業の技術を受け入れ、徐々にその技術を習得し、国内市場で競争力を持ち続けることが重要であるというのである。そのためには、外国企業を支援するだけでなく、そういった技術の習得をサポートする支援者を抱える必要がある。
もし、企業が十分に強くなければ、市場においてノウハウや人材などのソフト資源を守ることができないのである。
(*1)海外直接投資(Foreign Direct Investment、FDI)とは「外国の企業に対して永続的に利益を獲得するため、資本を投下して事業を営むこと」を意味する。 そのFDIの定義としては主に2つあり、グリーンフィールド投資と呼ばれる、現地法人や子会社などを設立して、現地工場や販路を一から作る形態の投資や、投資先の国の企業を買収したりする海外企業のM&AであるクロスボーダーM&Aなどがある。