Vietnam Investment Review

ハノイは長年にわたり、海外直接投資(FDI)の誘致に成功し、時に投資家と歩みを共にしながら、支援に力を入れてきた自治体である。

9月に首都ハノイは530万ドルに相当する海外直接投資の新プロジェクト3件を承認した。ハノイ統計局は、今年に入って、海外直接投資額が累計9億2,700万ドルに達したことを報じた。これには1億6,260万ドル相当の新規プロジェクト246件と4億9,240万ドル相当の進行中のプロジェクト93件が含まれる。

ハノイ市計画投資局によると新型コロナウイルスは当市への海外直接投資件数の減少という悪影響を及ぼしたということだ。

その他にも、海外からベトナムへの商品輸送の停滞や、3 on site(*1) というモットーの実践やone route – two destinations(*2)戦略を強いられるなど、工業団地や産業集積地域の企業は様々な問題に直面している。

さらに、人材面の課題もあり、ベトナムに進出した企業は、外国人専門家に対する入国制限の影響を受けているという。

今年に入ってから、ハノイでは約200社の海外企業が操業を停止しており、ほとんどが中小規模の事業者だという。

その一方、大企業への影響も見られたものの、事業は継続され、市内のプロジェクトへの投資を増やしている。

政府の外資系企業優遇制度に加え、首都ハノイではコロナショック軽減のため、様々な施策を展開している。その一環として、投資家が直面した課題の解消とより良い投資環境を構築する等の取り組みを行っている。

新型コロナウイルスが拡大する中、安全性を確保する対策に加え、ハノイ市は、市人民委員会に対し、助言を行った。それには外資系企業が生産計画に力をいれることができるよう、行政手続きの円滑化などの支援施策についても含まれる。

さらに、外国人エキスパートの入国手続き、新型コロナウイルスワクチン接種、検査、税制度や商品輸送面でのボトルネック解消のため、関連する部門に具体的な対策を講じるよう命じた。

今年も残り僅か2か月余りとなったが、ハノイ市は、地元企業の支援に注力し、経済ショックからの回復と経済発展を目指すという。

ハノイ市人民委員会は、10月以降、各担当部署や地域に独自の復興・発展計画を早急に策定するとともに、具体的な安全基準を策定し、企業支援のための対応策をまとめるよう要請した。

さらに、同市人民委員会は、オンライン行政サービスを利用したオンライン申請や支払いを認め、行政手続きの簡素化によるコスト削減で企業の負担を軽減する必要があると訴えた。

また、同市計画投資局に対して、新型コロナウイルス感染症による経済ショックへの効果的な支援策の模索にあたり、地元企業との対話の仕組みを整備するよう求めた。

一方、市当局は、ハノイ市の経済発展のための投資をさらに呼び込むことを目的に、新型コロナウイルスによるビジネスの問題対策に取り組む4つのワーキングチームを設置するという計画を発表した。

ハノイ市計画投資局局長のDo Anh Tuan氏は、より多くの外資系企業を誘致するための支援について具体例を挙げた。ベトナム、ハノイでの企業活動のための環境整備、行政手続きの簡素化、業界レベルの調整促進、投資プロモーション活動の強化、プロジェクト計画実施の全過程におけるサポート等である。

ハノイ市は、先端技術やその裾野産業を含む優先分野の外資系企業に対するインセンティブを強化する予定である。

新型コロナウイルスはベトナム、特に首都ハノイにマイナスの影響を与えたが、同時に海外投資の機会を生み出したと専門家は分析する。

政府、各省庁、市当局が発表した支援策は、ハノイの経済回復に、既に効果を見せ始めているという。

(*1) 3 on site =「現場で生産・食事・休息」というベトナムのコロナ対策となるモットー

(*2) one route – two destinations=「1つのルートのみを通って労働者を住居(社員寮やホテルなどの宿泊施設)から生産現場に輸送する」「往来は住居と生産現場のみとする」というコロナ対策